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24] 破滅 〜イースデール大公〜
しおりを挟む「フォレスト家が火事だと?!」
報告を聞いて、すぐに私の頭にはナディアが浮かんだ。
公国に帰ってそろそろ1ヶ月、ナディアに何か出来るとは思えない。だが…
公国に帰る前に、ティアーナ=フォレスト嬢とは、お茶会で挨拶を交わしたと聞いた。
その時に手土産を渡したはずだ。
まさか、それに何か仕掛けがあったのか?
たが、王太子の婚約者だ贈り物などには厳重に注意がされているはずだ。
もし、ナディアがやったとしたら…
ナディアは一体どうやったのか?
それともナディアは本当に無関係でただの事故なのか?
頼む…ナディアは無関係ていてくれ…
私はセバスに状況が分かり次第、全て報告するように命じた。
続報は次々と寄せられた。
フォレスト嬢は大火傷を負い、意識不明。
屋敷はほぼ全焼したらしい。
怪我人も多く出ているようだ。
現場は随分混乱しているようで、事件か事故かも定かでは無く、事の収拾にアラン殿下自らが動いているらしい。
そして、火事から1週間、我が家にも調査団がやって来た。
私は、ナディアは1ヶ月も前に公国に帰っていると言って、事故の関与を完全に否定した。
だが、私はナディアを疑っている。
父上の教育を受けていたあの子なら、手土産に何か仕掛けをしていたとしてもおかしくない。
やはり、お茶会へ参加させるのではなかった。
妻では抑止力にならなかったようだ。
私が甘かった。
イースデール公国の為、私は決断しなければならない。
このままナディアを放ってはおけない。
ナディアに会わなければ、手遅れになる前に!
急ぎ、公国に戻った私は、ナディアを執務室に呼び出し話を聞いた。
「ナディア、真実を聞きたい。お前はフォレスト嬢に何をした?」
「お父様はもうお分かりなんでしょう?それなのにわざわざ私の話を聞こうと呼びつけたのですか?」
ゾッとする程暗い目をして話すナディアに、私は知らず眉間に深いシワを刻んでいた。
「お前は家族の事も、公国の民の事も、何も考えなかったのか?お前の行動がどの様な悲劇に繋がるのか想像しなかったのか?お前はこの国の公女として、民の為に生きる事は出来なかったのか?」
「なら、お父様はこれまで私の事を考えてくれた事はありましたか?民が私の事を考えてくれた事はありましたか?ありませんよね?お兄様は跡継ぎとして不足無く、リディアは王家に相応しい魔力持ち、公国は経済的にも豊かで憂い一つ無い。ならば私は?私の存在は?誰も私の事なんて考えてくれませんでしたよね?それなのに何故私が家族や民の事を気にしないといけませんの?」
平然と言ってのけたナディアに失望の色が隠せない。
私の可愛い娘は、どこでいつからこんなにも独善的な人間になってしまったんだ。
「私も、父も、どうやらお前に何が大切なのかを教える事が出来なかったようだ。残念だよ、ナディア。」
私は、外に待たせていた護衛騎士達を呼び、北の塔にナディアを連れて行くよう命令した。
「やっぱりお父様は私を選んではくれないのですね。私を殺すおつもりですか?」
「お前はやり過ぎた。私は公国の為、民の為に決断しなければならない。お前1人の命で済めば良いと思うよ。連れて行ってくれ。」
ナディアの両脇を抱えるようにして、騎士達があの子を連れて行く。
「お父様!私は後悔していません!皆んな、皆んな、不幸になればいいのよ!」
呪の言葉を吐きながら、ナディアは北の塔へ連れて行かれた。
私は、ナディアの部屋に向かった。あの子の罪を証明する物は全て処分しなければならない。
誰にでもさせる訳にはいかない。
日記、書付、調合道具、手紙、メモ、罪の証になりそうな物は全て火魔法で焼き尽くした。少しの燃え残しも無いように、慎重に何度も暖炉の中を確認した。
だが、いくら探しても、変身のネックレスを見つける事が出来なかった。
王都のタウンハウスに戻り、そちらも探したが、何処にも無かった。
ナディアにも問い正したがあの子も知らないようだった。
「どういう事だ?」
あんな物が他で見つかれば、うちはお終いだ。
だが、どれ程探してもネックレスは見つから無かった。
もしも、ネックレスが第三者の手に渡っていたらと思うと、まるで心臓が鷲掴みにされているような気がした。
私は目の前が真っ暗になった…
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