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悲しい恋 〜if こぼれ話〜
③ ヴァレンティア【破滅】
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「えっ!お父様、今なんとおっしゃいましたの?」
「お前の、相手が決まったと言ったのだ。」
お父様の執務室に呼び出され、一体 何の話かと思えば、私の婚姻が決まっただなんて、
「それで、お相手はどちらの令息ですの?」
「この国の人間では無い。お前にはバハムート皇国へ行ってもらう。バハムート皇帝、シン・グレンの後宮入りが決まった。」
「お父様!」
バハムート皇国のシン・グレンは後宮に100人以上の女を囲っている皇帝だ。
バハムートでは、権力者ほど多くの女を囲い、それをステータスとしているという。
それだけの女を囲う、財力も権力も、持ち合わせているという力の象徴でもある。
そんな男の後宮に入るだなんて!
「お父様!私は嫌です!そんな何人もの女を囲っているような男の妃になるなんて」
「妃では無い。」
「えっ?!」
「妃では無い。皇帝には既に3人の妃がいる。側室も30人、愛妾も30人ほどいるそうだ。そして、それぞれに皇子、皇女がいる。お前はただ、皇帝の後宮に入れられるだけだ。皇帝の目に止まるかどうかはお前次第だ。」
「そんな、酷いではありませんか!お父様は私を一体何だと思っているのですか?!」
「自業自得であろう。」
お父様の私を見つめる目が酷く冷たい。
「じこう···じと く?」
「私が何も知らないとでも思っているのか?」
「おとうさま·····?」
お父様の視線が怖い····
控えていた 侍従から書類を受け取り、パラパラとページをめくりながら、読み上げていく。
「ロレンス公爵令息、キール伯爵令息、ライド伯爵令息、ーーー子爵令息、ーーー男爵令息、ーーー近衛騎士、ーーー教諭、驚いたな、平民の教師にまで、手を出したのか·····」
どうして?
私の事を尾行していたの?
「はぁーっ、切りが無いな。令息達の家からお前に、慰謝料の請求がきている。家どうしの婚約を破棄させたその責任を問うそうだ。」
「私だけが悪いのではありません!」
「どの口が言うのか。とにかく、もう決まった事だ、バハムートからお前の支度金にと、1億が支払われる。その金は全て、令息達への慰謝料とする。お前には、恥ずかしく無い程度の支度はしてやる。出発は3ヶ月後だ、話は以上だ。下れ。」
「お父様!私の話はまだ終わっておりません!私だけが責任を取らされるなんて、納得出来ません!」
お父様の護衛達に押さえ付けられながら、私は必死でお父様に訴えた。
なのに、お父様は、馬鹿にしたように、私に向けて、更に言い放つ。
「お前の淫らな性癖は影から報告されている。学生だからと、私が甘く見ていた。まさか、学園内で、あれ程の痴態を晒すとは、お前に誘惑された男共も愚かだが、王女ともあろう者が、簡単に何人もの男に又を開き、まるで娼婦のように振る舞うとは、呆れて物も言えん!最初から影を付ければ良かったと、後悔しても もう遅いがな。本来なら、お前は北塔に幽閉の後、毒杯を授けるつもりだったが、丁度、バハムートが王族を1人迎えたいと打診があったのでな、お前をあちらに送る事にした。どうやら 後宮に新しいコレクションを何人か入れたいらしい。お前の事は、全て把握済だそうだ。こちらの事情を知った上でお前を所望された。こちらからは、一切の干渉はしないと契約している。嫌なら、お前はこの国で死ぬだけだ」
「そんな!実の娘に、あんまりではありませんか!」
「私も残念だよ。たった1人の可愛い娘が、このような阿婆擦れに育つなど、誰が思うものか!」
「阿婆擦れなんて、酷い·····」
「とにかく、これはもう決定した事だ。大人しく、3ヶ月後あちらに向かうように、それまでは、北塔で監視を付け、幽閉とする。連れて行け!」
数人の騎士が現れ、両腕をかかえられて、私はそのまま、北塔に幽閉された。
ひどい、ひどい、ひどい、ひどい、ひどい!
私は何も悪くないわ!
みんな みんな意志の弱いあの男達が悪いのよ。
ちょっと 誘っただけで、私の言いなりになる あいつらが悪いのよ!
私は悪くない。悪く無いわ!
嫌よ!行きたくない!
バハムートになんて、行きたくない!
誰か、助けて····助けてよ····
そして、3ヶ月後、まるで私は囚人のように、王宮の裏口からひっそりとバハムートに向けて出発した。
誰も、私を助けてくれる者はいなかった。
バハムート皇国で待っていたのは、後宮に住む女達の冷たい視線と、いじめだった。
もちろん周りに男はいない。
いても、宦官と呼ばれる男の機能を奪われた者達だ。
初めの頃こそ、皇帝は私の元を訪れたが、それもすぐに無くなってしまった。
私は皇帝の心を掴む事は出来なかったのだ。
後宮の中で飼い殺しにされる日々。
女達のストレスのはけ口にされる毎日に私は気が狂いそうだった。
そのうち、宦官を閨に引き入れるようになった。
男では無くなったとは言え宦官ごときに身体を与えた私は処刑される事になった。
『自業自得であろう。』
お父様の言葉が頭の中に響く。
姦通罪は打首。
私の処刑の日、空は、憎らしいくらい晴れ渡っていた。
ああ、私は、どこで道を間違えてしまったのかしら·····
ーーーーーゴトン と 音がした。
ああ·····空が青い·····
「お前の、相手が決まったと言ったのだ。」
お父様の執務室に呼び出され、一体 何の話かと思えば、私の婚姻が決まっただなんて、
「それで、お相手はどちらの令息ですの?」
「この国の人間では無い。お前にはバハムート皇国へ行ってもらう。バハムート皇帝、シン・グレンの後宮入りが決まった。」
「お父様!」
バハムート皇国のシン・グレンは後宮に100人以上の女を囲っている皇帝だ。
バハムートでは、権力者ほど多くの女を囲い、それをステータスとしているという。
それだけの女を囲う、財力も権力も、持ち合わせているという力の象徴でもある。
そんな男の後宮に入るだなんて!
「お父様!私は嫌です!そんな何人もの女を囲っているような男の妃になるなんて」
「妃では無い。」
「えっ?!」
「妃では無い。皇帝には既に3人の妃がいる。側室も30人、愛妾も30人ほどいるそうだ。そして、それぞれに皇子、皇女がいる。お前はただ、皇帝の後宮に入れられるだけだ。皇帝の目に止まるかどうかはお前次第だ。」
「そんな、酷いではありませんか!お父様は私を一体何だと思っているのですか?!」
「自業自得であろう。」
お父様の私を見つめる目が酷く冷たい。
「じこう···じと く?」
「私が何も知らないとでも思っているのか?」
「おとうさま·····?」
お父様の視線が怖い····
控えていた 侍従から書類を受け取り、パラパラとページをめくりながら、読み上げていく。
「ロレンス公爵令息、キール伯爵令息、ライド伯爵令息、ーーー子爵令息、ーーー男爵令息、ーーー近衛騎士、ーーー教諭、驚いたな、平民の教師にまで、手を出したのか·····」
どうして?
私の事を尾行していたの?
「はぁーっ、切りが無いな。令息達の家からお前に、慰謝料の請求がきている。家どうしの婚約を破棄させたその責任を問うそうだ。」
「私だけが悪いのではありません!」
「どの口が言うのか。とにかく、もう決まった事だ、バハムートからお前の支度金にと、1億が支払われる。その金は全て、令息達への慰謝料とする。お前には、恥ずかしく無い程度の支度はしてやる。出発は3ヶ月後だ、話は以上だ。下れ。」
「お父様!私の話はまだ終わっておりません!私だけが責任を取らされるなんて、納得出来ません!」
お父様の護衛達に押さえ付けられながら、私は必死でお父様に訴えた。
なのに、お父様は、馬鹿にしたように、私に向けて、更に言い放つ。
「お前の淫らな性癖は影から報告されている。学生だからと、私が甘く見ていた。まさか、学園内で、あれ程の痴態を晒すとは、お前に誘惑された男共も愚かだが、王女ともあろう者が、簡単に何人もの男に又を開き、まるで娼婦のように振る舞うとは、呆れて物も言えん!最初から影を付ければ良かったと、後悔しても もう遅いがな。本来なら、お前は北塔に幽閉の後、毒杯を授けるつもりだったが、丁度、バハムートが王族を1人迎えたいと打診があったのでな、お前をあちらに送る事にした。どうやら 後宮に新しいコレクションを何人か入れたいらしい。お前の事は、全て把握済だそうだ。こちらの事情を知った上でお前を所望された。こちらからは、一切の干渉はしないと契約している。嫌なら、お前はこの国で死ぬだけだ」
「そんな!実の娘に、あんまりではありませんか!」
「私も残念だよ。たった1人の可愛い娘が、このような阿婆擦れに育つなど、誰が思うものか!」
「阿婆擦れなんて、酷い·····」
「とにかく、これはもう決定した事だ。大人しく、3ヶ月後あちらに向かうように、それまでは、北塔で監視を付け、幽閉とする。連れて行け!」
数人の騎士が現れ、両腕をかかえられて、私はそのまま、北塔に幽閉された。
ひどい、ひどい、ひどい、ひどい、ひどい!
私は何も悪くないわ!
みんな みんな意志の弱いあの男達が悪いのよ。
ちょっと 誘っただけで、私の言いなりになる あいつらが悪いのよ!
私は悪くない。悪く無いわ!
嫌よ!行きたくない!
バハムートになんて、行きたくない!
誰か、助けて····助けてよ····
そして、3ヶ月後、まるで私は囚人のように、王宮の裏口からひっそりとバハムートに向けて出発した。
誰も、私を助けてくれる者はいなかった。
バハムート皇国で待っていたのは、後宮に住む女達の冷たい視線と、いじめだった。
もちろん周りに男はいない。
いても、宦官と呼ばれる男の機能を奪われた者達だ。
初めの頃こそ、皇帝は私の元を訪れたが、それもすぐに無くなってしまった。
私は皇帝の心を掴む事は出来なかったのだ。
後宮の中で飼い殺しにされる日々。
女達のストレスのはけ口にされる毎日に私は気が狂いそうだった。
そのうち、宦官を閨に引き入れるようになった。
男では無くなったとは言え宦官ごときに身体を与えた私は処刑される事になった。
『自業自得であろう。』
お父様の言葉が頭の中に響く。
姦通罪は打首。
私の処刑の日、空は、憎らしいくらい晴れ渡っていた。
ああ、私は、どこで道を間違えてしまったのかしら·····
ーーーーーゴトン と 音がした。
ああ·····空が青い·····
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