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クロノス王国の最後
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その知らせが届いたのは、3人めの子がお腹にいることがわかって、ノアール様に報告している時だった。
「開戦?!クロノスとですか?」
「あぁ、お前には黙っていたが、今、クロノスはヴィトゲンシュタイン家の謀反で、国が大きく変わろうとしている。王族は捕らえられ、政権は王家に反旗を翻した貴族達が握っている。」
「父は…私の父と兄達はどうしているのですか?」
「オースティン家は、ヴィトゲンシュタインの元に付いた。貴族側に立っている。次の王は、ライノルド-ヴィトゲンシュタイン。元婚約者レオナルドの兄だ。王族は幽閉、又は処刑となるだろう。実は、オルランドは前からこの謀反を後押ししている。」
「そうなのですか?」
私は驚いて、夫であるノアール様の顔を見つめた。
「父と敵対しなくて安心いたしましたが、どうして?」
「身勝手な婚約者の入れ替え、こんな侮辱をされて、私達が黙っているはず無いだろう。あの国を潰すタイミングを見極めていたんだ。あの王族共では、いつかは こうなっていたさ。」
そう言って、悪い顔をして笑っている。
「そうだったんですか…」
おじ様はきっと、王女にレオを殺されたことが、許せなかったんだろう。
謀反を起こすほどに、愛する息子を王家に取られ、殺されたのだ。
その怒りはいか程のものか…
「レミリア、お前はどうしたい?」
「どうしたい?とは?」
意味がわからなくてノアール様の瞳を見つめる。
「レオナルドは王女に殺された。王女の生命は、今、貴族側が握っている。彼等を支持してきた我々にも断罪する権利はある。レミリア、お前はあの王女をどうしたい?」
ノアール様が私の本心を伺うようにじっと見つめる。
王女を私が断罪してもいいの?
レオを殺したあの王女を、私は許す事が出来ない。
八つ裂きにしてやりたい。
殺してやりたい。
ドス黒い思いが胸の内から湧き上がる。
気が付いたら私は
「殺してください。」
そんな言葉が、私の口をついて出た。
「わかった。」
そう言ってノアール様が、手を伸ばし、私の頬を親指で拭った。
私は知らず、涙を流していた。
それからの私は、いつもどうり、公務をこなしながら、王妃様や、降嫁されたアリス様を呼んで、お茶会をしたり、お腹の子の為に散歩したり、2人の子供達と遊んだりして過ごしていた。
そろそろ、産み月も近づき、出産の準備をしていた頃、本格的な冬が来る前に、その知らせは届いた。
主だった王族が、処刑されたと。
その中には、王女の名もあった。
何の感情も湧かなかった。
「そう…」
私の口から出た言葉はその一言だけだった。
それからしばらくして、この国では珍しく、雪の降る寒い日、私は3人めの子を出産した。
外にはうっすらと雪が積もり、白い白い世界が広がっていた。
何もかもが浄化されたような美しい世界。
その日、私はノアール様と同じ黒髪に、私よりも少し濃い目のピンクの瞳をした、男の子を出産した。
2人の色を持った男の子の誕生に、ノアール様はとても嬉しそうだった。
名前を「ブラン」と名付けた。
オルランドで「白」を意味する。
目の前に広がる、白い世界のように、清廉で、ノアール様のように優しい人になって欲しいと、想いを込めた。
クロノス王家は滅亡し、クロノス王国は消えた。
ライ兄様が新しく王となり、ヴィトゲンシュタイン国が誕生した。
新しい国との関係を、良好なものにするため、ノアール様は、とても忙しそうだったが、私や子供達との時間を、とても大切にして下さった。
どんなに忙しくても、私達の為に、時間を作り、一緒に過ごして下さった。
ノアール様が30才の時、王位を継いだ。
私は、王妃となり、国の為、ノアール様の為、力の限りを尽くした。
相変わらず、ノアール様は私を愛して下さり、大切にして下さった。
とても幸せだった。
気づけば、この国に来て、20年がたっていた。
「開戦?!クロノスとですか?」
「あぁ、お前には黙っていたが、今、クロノスはヴィトゲンシュタイン家の謀反で、国が大きく変わろうとしている。王族は捕らえられ、政権は王家に反旗を翻した貴族達が握っている。」
「父は…私の父と兄達はどうしているのですか?」
「オースティン家は、ヴィトゲンシュタインの元に付いた。貴族側に立っている。次の王は、ライノルド-ヴィトゲンシュタイン。元婚約者レオナルドの兄だ。王族は幽閉、又は処刑となるだろう。実は、オルランドは前からこの謀反を後押ししている。」
「そうなのですか?」
私は驚いて、夫であるノアール様の顔を見つめた。
「父と敵対しなくて安心いたしましたが、どうして?」
「身勝手な婚約者の入れ替え、こんな侮辱をされて、私達が黙っているはず無いだろう。あの国を潰すタイミングを見極めていたんだ。あの王族共では、いつかは こうなっていたさ。」
そう言って、悪い顔をして笑っている。
「そうだったんですか…」
おじ様はきっと、王女にレオを殺されたことが、許せなかったんだろう。
謀反を起こすほどに、愛する息子を王家に取られ、殺されたのだ。
その怒りはいか程のものか…
「レミリア、お前はどうしたい?」
「どうしたい?とは?」
意味がわからなくてノアール様の瞳を見つめる。
「レオナルドは王女に殺された。王女の生命は、今、貴族側が握っている。彼等を支持してきた我々にも断罪する権利はある。レミリア、お前はあの王女をどうしたい?」
ノアール様が私の本心を伺うようにじっと見つめる。
王女を私が断罪してもいいの?
レオを殺したあの王女を、私は許す事が出来ない。
八つ裂きにしてやりたい。
殺してやりたい。
ドス黒い思いが胸の内から湧き上がる。
気が付いたら私は
「殺してください。」
そんな言葉が、私の口をついて出た。
「わかった。」
そう言ってノアール様が、手を伸ばし、私の頬を親指で拭った。
私は知らず、涙を流していた。
それからの私は、いつもどうり、公務をこなしながら、王妃様や、降嫁されたアリス様を呼んで、お茶会をしたり、お腹の子の為に散歩したり、2人の子供達と遊んだりして過ごしていた。
そろそろ、産み月も近づき、出産の準備をしていた頃、本格的な冬が来る前に、その知らせは届いた。
主だった王族が、処刑されたと。
その中には、王女の名もあった。
何の感情も湧かなかった。
「そう…」
私の口から出た言葉はその一言だけだった。
それからしばらくして、この国では珍しく、雪の降る寒い日、私は3人めの子を出産した。
外にはうっすらと雪が積もり、白い白い世界が広がっていた。
何もかもが浄化されたような美しい世界。
その日、私はノアール様と同じ黒髪に、私よりも少し濃い目のピンクの瞳をした、男の子を出産した。
2人の色を持った男の子の誕生に、ノアール様はとても嬉しそうだった。
名前を「ブラン」と名付けた。
オルランドで「白」を意味する。
目の前に広がる、白い世界のように、清廉で、ノアール様のように優しい人になって欲しいと、想いを込めた。
クロノス王家は滅亡し、クロノス王国は消えた。
ライ兄様が新しく王となり、ヴィトゲンシュタイン国が誕生した。
新しい国との関係を、良好なものにするため、ノアール様は、とても忙しそうだったが、私や子供達との時間を、とても大切にして下さった。
どんなに忙しくても、私達の為に、時間を作り、一緒に過ごして下さった。
ノアール様が30才の時、王位を継いだ。
私は、王妃となり、国の為、ノアール様の為、力の限りを尽くした。
相変わらず、ノアール様は私を愛して下さり、大切にして下さった。
とても幸せだった。
気づけば、この国に来て、20年がたっていた。
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