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結婚式
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とうとう この日が来てしまった。
私は朝早くから 湯浴みをし、全身を磨き上げられ、真っ白な婚礼衣装を身に纏う。
首元には、ダイヤのネックレス、揃いのダイヤのイヤリング、頭にはダイヤのティアラか乗せられ、花嫁のヴェールを留めている。
とても 豪華な装いだ。
この国へ来て 2年、毎日が忙しく、あっという間の2年だった。
ノアール殿下は、身代わりのわたしを婚約者として とても大切にして下さった。
そのおかげで、この国に何の後ろ盾も無い私も 何の不足もなく過ごしてこれた。
いつまでも、レオの事を忘れられない私を厭うこと無く、
「心は自由なものだから。」
そう言って、無理に忘れる必要も無いと私の心を守って下さる。
私は そんな 心の広いノアール殿下を尊敬し、敬愛している。
これも 一つの愛の形かもしれない。
ここに来た頃のような 絶望的な気持ちはすっかり薄れて、私はノアール殿下との結婚を受け入れている。
今でもレオを 愛している。
きっと この気持ちは一生無くなる事は無いだろう。
でも、ノアール殿下の事を受け入れている自分も確かに存在しているのだ。
私はいずれ、この国の王妃になる。
この2年で、ノアール殿下は
「私達の国」
そう言って、色んな所へ連れて行って下さった。
私達の守るべきもの、私の国。
オルランド帝国の為に。
私はもう この国の人間なのだ。
教会で誓いを立て、誓約書に2人でサインをした。
これで私は、名実ともにノアール殿下の妻となった。
これからは国の為に子を成し、育て、次代の王を育てる。
ノアール殿下と2人、この国の為に力を尽くそう。
私はこの国の王妃となり、国母となるのだから。
調印を終え、教会を出る。
多頭引きの真っ白な馬車に乗り、大通りをパレードしながら、王宮に戻る。
大通りの両側を大勢の国民が、私達の姿を一目見ようと詰めかけている。
皆が私達を祝福してくれる。
私達は馬車から 詰めかけた国民に手を振る。
王宮の門をくぐった後も 国民の歓声は止まなかった。
一旦 部屋に戻り、又 湯浴みをして、全身をマッサージされ、軽食を軽くつまんで、夜会の為のドレスを身に纏う。
私のピンクゴールドの髪が映える 赤いドレスを身に纏い、ノアール殿下の色である オニキスで出来た黒いネックレスとイヤリングを身に付けていく。
髪は 高く結い上げ、黒とピンクのリボンが バランス良く編み込まれた。
今日の夜会の装いは全て ノアール殿下からプレゼントされた物だ。
ノアール殿下の色を身に付けると、自分がノアール殿下のものになったのだという事を実感した。
しばらくすると、扉がノックされ、ノアール殿下が迎えに来て下さった。
黒のタキシードに身を包んだノアール殿下は 本当に素敵だった。
胸元には 私の髪色であるピンクゴールドのポケットチーフがさり気なく飾られていた。
手を取られて、夜会の会場に向かう。
玉座に座る 両陛下に本日 結婚の調印を無事 終えた事を報告し、お2人から祝いの言葉をいただく。
そして、ホールの真ん中に 2人で立ち、本日最初のファーストダンスを踊る。
これで 何度目のダンスになるだろう。
ノアール殿下は、その美しいお姿のようなとても美しく 優しいリードをして下さる。
そして私のミスも 周りに気付かれないよう さり気なくカバーして下さる技量もお持ちだ。
初めて踊った時は、緊張しすぎて ノアール殿下の足を2度も 踏んでしまったっけ…
思い出して クスッと笑ってしまう。
「楽しそうだな。」
片眉を器用に上げて、ノアール殿下が私を見下ろしている。
「初めてのダンスを思い出したのです。」
思わず笑顔になってしまう。
「あぁ なるほど…」
ノアール殿下の瞳も楽しそうに 細められた。
「もう 足を踏まれる事も無くなってしまったな。」
「はい。あれから 申し訳なくて、ダンスのレッスンを随分頑張りましたから。」
「それは、残念だな。君の情けなさそうな顔をもう 見れないなんて。」
そう言って ノアール殿下は 赤くなった私の顔を見ながらクスクスと笑っていた。
ダンスの後は、王族席に戻り、参加者達の挨拶を受けた。
クロノスからは、外交大臣のみの参加だった。
婚約者を入れ替えるという、前代未聞の事をした手前、後ろめたい気持ちがあったのだろう。
わたしのお父様やお兄様さえも出国を許されなかったらしい。
確かに、挨拶にやって来た外交大臣に陛下とノアール殿下がチクチクと嫌味を言っていた事が少し愉快だった。
たくさんの挨拶を受け、少し落ち着いた頃、侍女のアンが私を呼びに来た。
初夜の為の準備をするためだ。
私はそっと 席を立ち、会場を後にした。
(とうとう この日がきてしまった。)
朝と 同じセリフをまた 頭の中で呟いてしまう。
湯浴みをして、(今日、3回目だ…)
薄い夜着を身に付け、ガウンを羽織って、ノアール殿下が来るのを待つ。
夫婦の寝室に 初めて入った。
ダークブラウンで統一された 落ち着いた雰囲気の部屋だった。
バルコニーの側に ゆったりとしたソファーと、それに合わせた美しい装飾が施されたテーブル。
反対側に 4~5人は手足を伸ばして眠れそうな程大きな天蓋付きの寝台があった。
そっと、寝台から目をそらし、ソファーに腰掛けた。
胸がドキドキしてきた。
これから 始まる事を思うと 緊張で頭がおかしくなりそうだ。
トントンというノックの後、ノアール殿下の部屋に繋がる扉から 殿下が現れた。
殿下も チラリと寝台に目をやり、そして「ふーっ」と1つ息を吐いた。
「酒でも飲むか。」
そう言って テーブルに用意されていた夜酒に手を延ばす。
「レミリアも少し飲んだほうが 落ち着くだろう。」
そう言って、グラスに半分程 果実酒をついで、渡してくれた。
私は、受け取ったグラスを一気に煽るようにして、果実酒を飲み干した。
もう、既に 心臓はおかしくなるくらい ドキドキしている。
アルコールのせいで、だんだん顔に熱が集まってくるのを感じる。
ノアール殿下が、無言で立ち上がり、私をさっと 横抱きにして 寝台へ運び、横たえた。
目の前に、ノアール殿下の大きな手がかぶさって、私の視界をふさぐ。
「ずっと 目をつむっているといい、悪いようにはしない。」
そう言って、あっという間に私の夜着の前をくつろげ、抱きしめた。
ノアール殿下の唇がわたしの身体のあちこちに触れていく。
私は ノアール殿下に言われるまま、ずっときつく目をつむっていた。
それからは、ゾクゾクするような快楽と、恐ろしい程の痛み、最後は頭の中が 真っ白になって 弾け飛んだ。
私は呼吸をする事もままならず、そのまま気絶してしまった。
目をつむっている間に、初夜の閨事は無事に済んだようだ。
次の日私は日が高くなるまで 起きる事が出来ず、目が覚めたのは、夫婦の寝室ではなく、自分の寝室だった。
私は気を失っている間に、身体を清められ、新しい夜着を着せられ、自室の寝台に寝かされていた。
昨夜の事は夢だったのかと 一瞬思ったけれど、昨夜の痛みを思い出して、夢じゃ無かったと思い直した。
(あぁ 本当に夫婦になってしまったんだわ…)
レオの事を思い出し、クローゼットの奥に引きこもって、指輪を握りしめて少し泣いた。
アンは黙って、私を1人にさせてくれた。
その日の夜、殿下は又、夫婦の寝室へ来たけれど
「今日は まだ 身体が辛いだろう。」
そう言って、ただ2人 寝台に横になって眠った。
私を腕に抱え込むように抱きしめ、私の額にそっとキスをして、そのまま殿下は眠ってしまわれた。
少しすると、ノアール殿下の寝息が聞こえてきた。そっと ノアール殿下の顔を見つめる。
殿下は優しい。
いつまでもレオの事を忘れられない私を、レオごと包んでくれる包容力をお持ちだ。
本当に感謝している。
「殿下…ごめんなさい…」
小さな 呟きが漏れる。
私の心はいつまでもレオのものだ。
たぶんそれは 一生変わらない。
だから私は、他のことは何でもしようと思う。
ノアール殿下の為に。
この国の為に。
かすかな寝息を漏らす殿下の顔を見つめ、私はもう一度固く心に誓った。
私は朝早くから 湯浴みをし、全身を磨き上げられ、真っ白な婚礼衣装を身に纏う。
首元には、ダイヤのネックレス、揃いのダイヤのイヤリング、頭にはダイヤのティアラか乗せられ、花嫁のヴェールを留めている。
とても 豪華な装いだ。
この国へ来て 2年、毎日が忙しく、あっという間の2年だった。
ノアール殿下は、身代わりのわたしを婚約者として とても大切にして下さった。
そのおかげで、この国に何の後ろ盾も無い私も 何の不足もなく過ごしてこれた。
いつまでも、レオの事を忘れられない私を厭うこと無く、
「心は自由なものだから。」
そう言って、無理に忘れる必要も無いと私の心を守って下さる。
私は そんな 心の広いノアール殿下を尊敬し、敬愛している。
これも 一つの愛の形かもしれない。
ここに来た頃のような 絶望的な気持ちはすっかり薄れて、私はノアール殿下との結婚を受け入れている。
今でもレオを 愛している。
きっと この気持ちは一生無くなる事は無いだろう。
でも、ノアール殿下の事を受け入れている自分も確かに存在しているのだ。
私はいずれ、この国の王妃になる。
この2年で、ノアール殿下は
「私達の国」
そう言って、色んな所へ連れて行って下さった。
私達の守るべきもの、私の国。
オルランド帝国の為に。
私はもう この国の人間なのだ。
教会で誓いを立て、誓約書に2人でサインをした。
これで私は、名実ともにノアール殿下の妻となった。
これからは国の為に子を成し、育て、次代の王を育てる。
ノアール殿下と2人、この国の為に力を尽くそう。
私はこの国の王妃となり、国母となるのだから。
調印を終え、教会を出る。
多頭引きの真っ白な馬車に乗り、大通りをパレードしながら、王宮に戻る。
大通りの両側を大勢の国民が、私達の姿を一目見ようと詰めかけている。
皆が私達を祝福してくれる。
私達は馬車から 詰めかけた国民に手を振る。
王宮の門をくぐった後も 国民の歓声は止まなかった。
一旦 部屋に戻り、又 湯浴みをして、全身をマッサージされ、軽食を軽くつまんで、夜会の為のドレスを身に纏う。
私のピンクゴールドの髪が映える 赤いドレスを身に纏い、ノアール殿下の色である オニキスで出来た黒いネックレスとイヤリングを身に付けていく。
髪は 高く結い上げ、黒とピンクのリボンが バランス良く編み込まれた。
今日の夜会の装いは全て ノアール殿下からプレゼントされた物だ。
ノアール殿下の色を身に付けると、自分がノアール殿下のものになったのだという事を実感した。
しばらくすると、扉がノックされ、ノアール殿下が迎えに来て下さった。
黒のタキシードに身を包んだノアール殿下は 本当に素敵だった。
胸元には 私の髪色であるピンクゴールドのポケットチーフがさり気なく飾られていた。
手を取られて、夜会の会場に向かう。
玉座に座る 両陛下に本日 結婚の調印を無事 終えた事を報告し、お2人から祝いの言葉をいただく。
そして、ホールの真ん中に 2人で立ち、本日最初のファーストダンスを踊る。
これで 何度目のダンスになるだろう。
ノアール殿下は、その美しいお姿のようなとても美しく 優しいリードをして下さる。
そして私のミスも 周りに気付かれないよう さり気なくカバーして下さる技量もお持ちだ。
初めて踊った時は、緊張しすぎて ノアール殿下の足を2度も 踏んでしまったっけ…
思い出して クスッと笑ってしまう。
「楽しそうだな。」
片眉を器用に上げて、ノアール殿下が私を見下ろしている。
「初めてのダンスを思い出したのです。」
思わず笑顔になってしまう。
「あぁ なるほど…」
ノアール殿下の瞳も楽しそうに 細められた。
「もう 足を踏まれる事も無くなってしまったな。」
「はい。あれから 申し訳なくて、ダンスのレッスンを随分頑張りましたから。」
「それは、残念だな。君の情けなさそうな顔をもう 見れないなんて。」
そう言って ノアール殿下は 赤くなった私の顔を見ながらクスクスと笑っていた。
ダンスの後は、王族席に戻り、参加者達の挨拶を受けた。
クロノスからは、外交大臣のみの参加だった。
婚約者を入れ替えるという、前代未聞の事をした手前、後ろめたい気持ちがあったのだろう。
わたしのお父様やお兄様さえも出国を許されなかったらしい。
確かに、挨拶にやって来た外交大臣に陛下とノアール殿下がチクチクと嫌味を言っていた事が少し愉快だった。
たくさんの挨拶を受け、少し落ち着いた頃、侍女のアンが私を呼びに来た。
初夜の為の準備をするためだ。
私はそっと 席を立ち、会場を後にした。
(とうとう この日がきてしまった。)
朝と 同じセリフをまた 頭の中で呟いてしまう。
湯浴みをして、(今日、3回目だ…)
薄い夜着を身に付け、ガウンを羽織って、ノアール殿下が来るのを待つ。
夫婦の寝室に 初めて入った。
ダークブラウンで統一された 落ち着いた雰囲気の部屋だった。
バルコニーの側に ゆったりとしたソファーと、それに合わせた美しい装飾が施されたテーブル。
反対側に 4~5人は手足を伸ばして眠れそうな程大きな天蓋付きの寝台があった。
そっと、寝台から目をそらし、ソファーに腰掛けた。
胸がドキドキしてきた。
これから 始まる事を思うと 緊張で頭がおかしくなりそうだ。
トントンというノックの後、ノアール殿下の部屋に繋がる扉から 殿下が現れた。
殿下も チラリと寝台に目をやり、そして「ふーっ」と1つ息を吐いた。
「酒でも飲むか。」
そう言って テーブルに用意されていた夜酒に手を延ばす。
「レミリアも少し飲んだほうが 落ち着くだろう。」
そう言って、グラスに半分程 果実酒をついで、渡してくれた。
私は、受け取ったグラスを一気に煽るようにして、果実酒を飲み干した。
もう、既に 心臓はおかしくなるくらい ドキドキしている。
アルコールのせいで、だんだん顔に熱が集まってくるのを感じる。
ノアール殿下が、無言で立ち上がり、私をさっと 横抱きにして 寝台へ運び、横たえた。
目の前に、ノアール殿下の大きな手がかぶさって、私の視界をふさぐ。
「ずっと 目をつむっているといい、悪いようにはしない。」
そう言って、あっという間に私の夜着の前をくつろげ、抱きしめた。
ノアール殿下の唇がわたしの身体のあちこちに触れていく。
私は ノアール殿下に言われるまま、ずっときつく目をつむっていた。
それからは、ゾクゾクするような快楽と、恐ろしい程の痛み、最後は頭の中が 真っ白になって 弾け飛んだ。
私は呼吸をする事もままならず、そのまま気絶してしまった。
目をつむっている間に、初夜の閨事は無事に済んだようだ。
次の日私は日が高くなるまで 起きる事が出来ず、目が覚めたのは、夫婦の寝室ではなく、自分の寝室だった。
私は気を失っている間に、身体を清められ、新しい夜着を着せられ、自室の寝台に寝かされていた。
昨夜の事は夢だったのかと 一瞬思ったけれど、昨夜の痛みを思い出して、夢じゃ無かったと思い直した。
(あぁ 本当に夫婦になってしまったんだわ…)
レオの事を思い出し、クローゼットの奥に引きこもって、指輪を握りしめて少し泣いた。
アンは黙って、私を1人にさせてくれた。
その日の夜、殿下は又、夫婦の寝室へ来たけれど
「今日は まだ 身体が辛いだろう。」
そう言って、ただ2人 寝台に横になって眠った。
私を腕に抱え込むように抱きしめ、私の額にそっとキスをして、そのまま殿下は眠ってしまわれた。
少しすると、ノアール殿下の寝息が聞こえてきた。そっと ノアール殿下の顔を見つめる。
殿下は優しい。
いつまでもレオの事を忘れられない私を、レオごと包んでくれる包容力をお持ちだ。
本当に感謝している。
「殿下…ごめんなさい…」
小さな 呟きが漏れる。
私の心はいつまでもレオのものだ。
たぶんそれは 一生変わらない。
だから私は、他のことは何でもしようと思う。
ノアール殿下の為に。
この国の為に。
かすかな寝息を漏らす殿下の顔を見つめ、私はもう一度固く心に誓った。
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