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4 悪役令嬢
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私達が婚約を発表した次の日から、カトリーヌは、あからさまに悪意に晒されるようになった。
その筆頭は、ペトラ スカーリン侯爵令嬢だ。
なまじ 身分が上な為、厄介である。
カトリーヌは大商会の令嬢だけあって 身に付けている物は、もちろん自分の家の商会の商品ばかり。
しかも、最新の物ばかりだ。
彼女自身が商会の広告塔となっている。
それを、あの女、ペトラ スカーリンにことごとくけなされるのだ。
下品だの、家格に合わないだの、学生には不釣り合いだの、お前には似合わない等など、いちいち いちゃもんをつけてくる。
カトリーヌを悪く言うのは、あの女の取り巻きばかりで、他の学生は、カトリーヌに憧れて、おそろいの物を購入している者も多いと聞く。
流行していると聞くと、増々あの女の口撃がキツイものになる。(最悪だ…)
あの女、そんな事をしたって、私とカトリーヌの婚約が無くなるわけでは無いのに、まったく厄介な女に目を付けられてしまった。
✢✢✢
「待たせてしまったかな?」
ここは、モルガン商会本店の会長執務室。
今日は、カトリーヌの学園での様子を父である会長に報告する日だ。
カトリーヌと婚約してから、カトリーヌの学園での様子を知りたいと言われて、こうして週に一度、会長執務室にお邪魔している。
メイドがお茶を入れて、部屋から出ると、部屋には 会長と会長秘書のヘンリー様、そして私の3人だけとなった。
「カトリーヌの様子はどうかな?」
「残念ですが、絶好調とは言えません。私のせいでスカーリン侯爵令嬢に目を付けられてしまい、他の生徒は 侯爵家をおもんばかってクラスからは浮いてしまっています。今年から、高位クラスに編入した事で、今迄交流のあった令嬢達からも離れてしまい、一人でいる事が多くなってしまいました。私がなるべく、彼女と一緒にいるようにしていますが、やはり、女性の友人とは違いますから、どうしても一人になってしまう時間が出来てしまい、スカーリン侯爵令嬢の取り巻き達に絡まれているシーンも多くなりました。学園では、カトリーヌ嬢から目を離せない日が続いています。」
モルガン会長は、顎に手を当て、少し考え込むと、
「スカーリン侯爵家か、わかった。カトリーヌに侍女と護衛を付けよう。侍女が常に側にいれば、一人になる事も無いだろう。ヘンリー、すぐに手配してくれ。」
後ろに控えている秘書のヘンリー様に命令する。
「かしこまりました。」
ヘンリー様は、そう言って、軽く頭を下げた。
良かった。これで少しはカトリーヌの周りが安全になるだろう。
どうしても、授業の関係で一緒にいられない事もあるから。
侍女と護衛なら片時も離れる事無く、カトリーヌを守ってもらえるだろう。
さすがに、スカーリン侯爵令嬢も他者のいる前でカトリーヌをいじめるなんて、外聞の悪い事は出来ないだろう。
私は、ほっと、胸をなでおろした。
「モルガン会長、ご配慮ありがとうございます。これで少しは安心出来ます。」
「大切な娘の為だ、このくらい何でも無いよ。エリオス殿、これからもカトリーヌをよろしく頼んだよ。
これでもまだ、スカーリン侯爵令嬢が引かないようなら、こちらにも考えがある。何かあれば、すぐに報告してもらえるとありがたい。」
「もちろんです。私ではどうしても力不足です。これからもどうぞ、よろしくお願いします。」
「あぁ、まかせてくれ。それよりも君の方は大丈夫なのか?男の嫉妬もなかなか大変では無いのかな?」
そう言って、モルガン会長は私の力量を測るように見つめてくる。
「まぁ、適当にやり過ごしています。幸い腕には少しばかり自身もありますし、魔法も使えますから。」
そう言って、私は、胸のポケットからA級冒険者の証であるプレートを差し出す。
「ほう…これは意外だったな、ただの頭でっかちの優男では無かったと言う事か。」
そう言って、会長はニヤニヤと笑っている。
婚約を結ぶ時に、私の事など隅から隅まで調べ尽くしていただろうに…(タヌキ親父め…)
「まぁ、学園で荒事が起こるとは思いませんが、自分一人を守る術は持っていますから、ご心配いただきありがとうございます。」
「いや、私も試すような事を言って申し訳なかった。たしか、お父上もA級だったか…」
「はい。家の領では、私も父も弱い者のカテゴリーに入れられてしまいますから、『魔物の森』やアステカ山脈がある為、魔物がいるのが当たり前の領地ですから、S級冒険者がゴロゴロ歩いているような土地柄ですし、弟は才能があるのか、13歳にしてすでにA級ですから、S級に上がるのも、すぐでしょうね。」
「それは素晴らしい。家の商会としても、ぜひ、いつまでも、懇意にしてほしいものだ。」
「勿論です。モルガン商会と取り引き出来るようになって、我が家も大変有難く思っています。これからも、どうぞよろしくお願いします。」
「勿論だ。こちらこそよろしく頼んだよ。」
そうして、報告を終えた私は商会本店を後にした。
✢✢✢
だが、次の日早速、スカーリン侯爵令嬢の取り巻きがやらかしてくれた。カトリーヌに二階の窓から汚水をぶっかけたのだ。
下を歩いていた、カトリーヌや侍女、護衛まで水をかぶってしまった。
すぐに犯人は取り押さえられ、今、私の目の前で跪いて、真っ青になってブルブルと震えている。
犯人は、スカーリン侯爵令嬢の取り巻きの一人、ララ グレン伯爵令嬢のメイドで、口止めされているのだろう、「下に人がいるとは思わなかった」と、謝るばかりで話にならない。
事件の後すぐに私は、ずぶ濡れになってしまったカトリーヌを抱き上げ、すぐに保健室に運び、着替えさせて、ベッドに入れて、私が戻るまで休んでいて欲しいと言い聞かせた。
侍女に後を任せて、犯人のもとに向かった。
メイドを反省室に入れて、主である ララ グレン伯爵令嬢を呼び出した。
だが、ララ グレン伯爵令嬢を問い詰めた所で、メイドが勝手にやった事だと、形式だけの謝罪だけだ。
なんて狡猾なやり方なんだ。
このメイドを責めた所で、スカーリン侯爵令嬢には無関係。
痛くも痒くも無いだろう。
「申し訳ありません…つい うっかり 手が滑ってしまって…本当に申し訳ありません…どうか お許し下さい…どうか…」
涙を流し、頭を床に擦り付けて、謝罪を繰り返すメイド。
そんなものに構わず、私はメイドを睨みつけた。
怒りで魔力が漏れているのがわかる。
辺りの温度が下がってゆく。
「ふーん、私はわざとやったと思っているんだけど…」
「い…いえ…わたし…私は…決してわざとでは…すみません…すみません……」
小さく身体を丸めて土下座し、すみませんと繰り返すメイドにこれ以上の追及はムリだと思い、二度とこんな失敗をしないよう言い含めて 誓約書にサインさせ、校医と担任教師に証人となってもらい、ララ グレン伯爵令嬢にも、自分のメイドの不始末に対する謝罪を要求して、この件は終わりとした。
あー、スマホが欲しい。
録画が出来たらこんな面倒な手続きなんて必要無いのに。
カメラくらいなら何となく 構造が解るんだけどなぁ。
魔法で何とかしたいけれど、構造が解らない物は出来ないんだよなぁ。
顔バレしているメイドは、いじめにはもう使えない。
自業自得とはいえ、伯爵家をクビになっても仕方ない。
そして、問題を起こしてクビになったメイドを雇う者はもうどこにもいないだろう。
「まったく、くだらない事をする。」
一人のメイドの将来を台無しにしておいて、自分は無関係を貫く。
スカーリン侯爵令嬢や、グレン伯爵令嬢には嫌悪感しかない。
保健室にもどり、ベッドで眠るカトリーヌの額にそっと触れる。
濡れたせいか、少し熱があるかも、顔も少し赤い。
もう少し休んだら、彼女を送って行こうと思いながら、彼女の額を魔法で、少しだけヒンヤリさせた。(風邪をひきませんように…)
「守れなくてゴメンね…」
眠る彼女にそう つぶやいた。
次の日、昨日のメイドと違う女を連れたグレン伯爵令嬢を見かけた。
[トカゲのシッポ切り]
そんな言葉が頭に浮かぶ。
次はお前の番かもしれないのにね。
せいぜいスカーリン侯爵令嬢に切られないよう 頑張るんだね。
うっそりと暗い笑みが浮かんだ。
その筆頭は、ペトラ スカーリン侯爵令嬢だ。
なまじ 身分が上な為、厄介である。
カトリーヌは大商会の令嬢だけあって 身に付けている物は、もちろん自分の家の商会の商品ばかり。
しかも、最新の物ばかりだ。
彼女自身が商会の広告塔となっている。
それを、あの女、ペトラ スカーリンにことごとくけなされるのだ。
下品だの、家格に合わないだの、学生には不釣り合いだの、お前には似合わない等など、いちいち いちゃもんをつけてくる。
カトリーヌを悪く言うのは、あの女の取り巻きばかりで、他の学生は、カトリーヌに憧れて、おそろいの物を購入している者も多いと聞く。
流行していると聞くと、増々あの女の口撃がキツイものになる。(最悪だ…)
あの女、そんな事をしたって、私とカトリーヌの婚約が無くなるわけでは無いのに、まったく厄介な女に目を付けられてしまった。
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「待たせてしまったかな?」
ここは、モルガン商会本店の会長執務室。
今日は、カトリーヌの学園での様子を父である会長に報告する日だ。
カトリーヌと婚約してから、カトリーヌの学園での様子を知りたいと言われて、こうして週に一度、会長執務室にお邪魔している。
メイドがお茶を入れて、部屋から出ると、部屋には 会長と会長秘書のヘンリー様、そして私の3人だけとなった。
「カトリーヌの様子はどうかな?」
「残念ですが、絶好調とは言えません。私のせいでスカーリン侯爵令嬢に目を付けられてしまい、他の生徒は 侯爵家をおもんばかってクラスからは浮いてしまっています。今年から、高位クラスに編入した事で、今迄交流のあった令嬢達からも離れてしまい、一人でいる事が多くなってしまいました。私がなるべく、彼女と一緒にいるようにしていますが、やはり、女性の友人とは違いますから、どうしても一人になってしまう時間が出来てしまい、スカーリン侯爵令嬢の取り巻き達に絡まれているシーンも多くなりました。学園では、カトリーヌ嬢から目を離せない日が続いています。」
モルガン会長は、顎に手を当て、少し考え込むと、
「スカーリン侯爵家か、わかった。カトリーヌに侍女と護衛を付けよう。侍女が常に側にいれば、一人になる事も無いだろう。ヘンリー、すぐに手配してくれ。」
後ろに控えている秘書のヘンリー様に命令する。
「かしこまりました。」
ヘンリー様は、そう言って、軽く頭を下げた。
良かった。これで少しはカトリーヌの周りが安全になるだろう。
どうしても、授業の関係で一緒にいられない事もあるから。
侍女と護衛なら片時も離れる事無く、カトリーヌを守ってもらえるだろう。
さすがに、スカーリン侯爵令嬢も他者のいる前でカトリーヌをいじめるなんて、外聞の悪い事は出来ないだろう。
私は、ほっと、胸をなでおろした。
「モルガン会長、ご配慮ありがとうございます。これで少しは安心出来ます。」
「大切な娘の為だ、このくらい何でも無いよ。エリオス殿、これからもカトリーヌをよろしく頼んだよ。
これでもまだ、スカーリン侯爵令嬢が引かないようなら、こちらにも考えがある。何かあれば、すぐに報告してもらえるとありがたい。」
「もちろんです。私ではどうしても力不足です。これからもどうぞ、よろしくお願いします。」
「あぁ、まかせてくれ。それよりも君の方は大丈夫なのか?男の嫉妬もなかなか大変では無いのかな?」
そう言って、モルガン会長は私の力量を測るように見つめてくる。
「まぁ、適当にやり過ごしています。幸い腕には少しばかり自身もありますし、魔法も使えますから。」
そう言って、私は、胸のポケットからA級冒険者の証であるプレートを差し出す。
「ほう…これは意外だったな、ただの頭でっかちの優男では無かったと言う事か。」
そう言って、会長はニヤニヤと笑っている。
婚約を結ぶ時に、私の事など隅から隅まで調べ尽くしていただろうに…(タヌキ親父め…)
「まぁ、学園で荒事が起こるとは思いませんが、自分一人を守る術は持っていますから、ご心配いただきありがとうございます。」
「いや、私も試すような事を言って申し訳なかった。たしか、お父上もA級だったか…」
「はい。家の領では、私も父も弱い者のカテゴリーに入れられてしまいますから、『魔物の森』やアステカ山脈がある為、魔物がいるのが当たり前の領地ですから、S級冒険者がゴロゴロ歩いているような土地柄ですし、弟は才能があるのか、13歳にしてすでにA級ですから、S級に上がるのも、すぐでしょうね。」
「それは素晴らしい。家の商会としても、ぜひ、いつまでも、懇意にしてほしいものだ。」
「勿論です。モルガン商会と取り引き出来るようになって、我が家も大変有難く思っています。これからも、どうぞよろしくお願いします。」
「勿論だ。こちらこそよろしく頼んだよ。」
そうして、報告を終えた私は商会本店を後にした。
✢✢✢
だが、次の日早速、スカーリン侯爵令嬢の取り巻きがやらかしてくれた。カトリーヌに二階の窓から汚水をぶっかけたのだ。
下を歩いていた、カトリーヌや侍女、護衛まで水をかぶってしまった。
すぐに犯人は取り押さえられ、今、私の目の前で跪いて、真っ青になってブルブルと震えている。
犯人は、スカーリン侯爵令嬢の取り巻きの一人、ララ グレン伯爵令嬢のメイドで、口止めされているのだろう、「下に人がいるとは思わなかった」と、謝るばかりで話にならない。
事件の後すぐに私は、ずぶ濡れになってしまったカトリーヌを抱き上げ、すぐに保健室に運び、着替えさせて、ベッドに入れて、私が戻るまで休んでいて欲しいと言い聞かせた。
侍女に後を任せて、犯人のもとに向かった。
メイドを反省室に入れて、主である ララ グレン伯爵令嬢を呼び出した。
だが、ララ グレン伯爵令嬢を問い詰めた所で、メイドが勝手にやった事だと、形式だけの謝罪だけだ。
なんて狡猾なやり方なんだ。
このメイドを責めた所で、スカーリン侯爵令嬢には無関係。
痛くも痒くも無いだろう。
「申し訳ありません…つい うっかり 手が滑ってしまって…本当に申し訳ありません…どうか お許し下さい…どうか…」
涙を流し、頭を床に擦り付けて、謝罪を繰り返すメイド。
そんなものに構わず、私はメイドを睨みつけた。
怒りで魔力が漏れているのがわかる。
辺りの温度が下がってゆく。
「ふーん、私はわざとやったと思っているんだけど…」
「い…いえ…わたし…私は…決してわざとでは…すみません…すみません……」
小さく身体を丸めて土下座し、すみませんと繰り返すメイドにこれ以上の追及はムリだと思い、二度とこんな失敗をしないよう言い含めて 誓約書にサインさせ、校医と担任教師に証人となってもらい、ララ グレン伯爵令嬢にも、自分のメイドの不始末に対する謝罪を要求して、この件は終わりとした。
あー、スマホが欲しい。
録画が出来たらこんな面倒な手続きなんて必要無いのに。
カメラくらいなら何となく 構造が解るんだけどなぁ。
魔法で何とかしたいけれど、構造が解らない物は出来ないんだよなぁ。
顔バレしているメイドは、いじめにはもう使えない。
自業自得とはいえ、伯爵家をクビになっても仕方ない。
そして、問題を起こしてクビになったメイドを雇う者はもうどこにもいないだろう。
「まったく、くだらない事をする。」
一人のメイドの将来を台無しにしておいて、自分は無関係を貫く。
スカーリン侯爵令嬢や、グレン伯爵令嬢には嫌悪感しかない。
保健室にもどり、ベッドで眠るカトリーヌの額にそっと触れる。
濡れたせいか、少し熱があるかも、顔も少し赤い。
もう少し休んだら、彼女を送って行こうと思いながら、彼女の額を魔法で、少しだけヒンヤリさせた。(風邪をひきませんように…)
「守れなくてゴメンね…」
眠る彼女にそう つぶやいた。
次の日、昨日のメイドと違う女を連れたグレン伯爵令嬢を見かけた。
[トカゲのシッポ切り]
そんな言葉が頭に浮かぶ。
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うっそりと暗い笑みが浮かんだ。
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