呪いの王女とやらかし王太子の結婚【完結】

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「結婚式」(S ユリアーナ)

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 鏡の中に金の瞳の美しい女性が写し出されている。(本当に 侍女達の腕は素晴らしいわね。)いつもは背中に流している黄金の髪を 高く結い上げ、頭上にはプラチナの台にダイアモンドが散りばめられた繊細な細工のティアラが乗せられ、シフォンのヴェールがかけられている。白い首元にはアルベルト様から送られた彼の瞳の色と同じエメラルドのネックレスが品良く飾られ、体に沿うオフショルダーの白いウェディングドレスは裾に行く程広がり、美しい白バラの刺繍が施されている。この国に来て3か月、今日は私達の結婚式です。
 昨日 私は16歳の誕生日を迎え、無事、成人となりました。私の成人に合わせて 結婚式を行う事は最初の契約で決められていました。普通 王家の婚姻ともなると婚約期間も含め、最低でも2年の月日を要するものだが、訳アリの二人の政略結婚という事もあって、異例のスピード婚となりました。
準備期間もほぼ無い中、今日は世界中から多くの来賓が訪れている。さすが大国と言えようか…
 3日程前にメルディス国からもお父様とお母様がいらっしゃっている。慌ただしくて、ゆっくりと挨拶も出来なかったのですが、お二人共お元気そうでとても嬉しかった。予定どうりだとそろそろこの部屋に来て下さるはず、早く 花嫁姿を見ていただきたい。今日の私はとても浮かれている。
「さぁ、出来上がりましたよ。妃殿下、本当にお美しいです。」
「ありがとう、エリン。」 
「本日の良き日を無事お迎えになられました事、私達従者一同、心よりお祝い申し上げます。」部屋にいた皆が、一同 揃って、私の結婚を祝ってくれる。
「ありがとう、これからもよろしく頼みます。」皆が、ニコニコと 優しい瞳で私の結婚を喜んでくれる。本当に、嬉しい。その時 従者の案内でお父様とお母様がいらっしゃった。
「あぁ…本当に綺麗だ。」私を見るなり涙ぐんでいるお父様。
「ユーリ、本当に綺麗よ。アルベルト様と幸せにね。」私を抱きしめながら、お母様が祝いの言葉をくださる。
「ありがとうございます。お父様、お母様。」私はしっかりと両親に向かい合って、これまで育てていただいたお礼を紡ぐ。
「これまで 大切に育てて下さりありがとうございました。これからは アルベルト様と共に両国の為に 力を尽くしたいと思っております。」
「昨日、アルベルト様にお会いして ユーリをとても 大切にして下さっていると聞いて、安心したわ。」
「お母様…」
「彼と二人でなら きっと どんな困難も 乗り越えて行けると信じているよ。幸せになりなさい。」
「お父様…ありがとうございます。」
「さぁ、泣いてはダメよ。せっかく美しく整えたのだから。」
「はい。お母様。」
「では、行こうか。アルベルト殿が 大聖堂で待ちわびているよ。」
「はい、お父様。」父の差し出してくれた手に そっと手を重ね エスコートしてもらう。アルベルト様の元へ。
 大聖堂の正面にある大きなステンドグラスから優しい光が差し込んでいる。中央の祭壇には、今日の結婚式を取り仕切る最高神官がこちらに笑顔を向けているのがみえる。そして その傍らに、アルベルト様が私の到着を待つように佇んでいる。美しく光輝くはちみつ色の金髪と、透明感のある美しいエメラルドグリーンの瞳が、一際 キラキラと輝いている。白い花婿の衣装に身を包んだアルベルト様は、今日も とっても 眩しいです。(なんて 麗しいのかしら。この方が 私の旦那様だなんて…)
 神官の指示に従って、結婚の宣誓をし、指輪を交換する。婚姻証明書へのサインはこの国に訪れた時 既に交わしてあるので、省略された。被っていたヴェールをそっとめくり、アルベルト様と見つめ合った。彼の顔がゆっくりと近づいて、私の唇にそっとふれる。キスは2回目、彼とはもう寝室も同じなのに すごく緊張して、少し震えてしまった。心なしか アルベルト様も少し震えていたような気がしました。
 こうして皆の祝福を受けて 私達は世界中が認める夫婦になりました。
 教会から王宮までは4頭引きの馬車に乗って、大通りをゆっくり走って行きます。大通りの両側には私達の姿を一目見ようと、多くの人達が詰め掛けていました。両側の建物の窓からもたくさんの人達が 私達を精一杯の笑顔で祝福してくれます。皆の祝福を受けながら、笑顔で手を振るアルベルト様、でも、アルベルト様の左手はしっかりと私の腰に回されていました。皆が見ている前でとても恥ずかしいですが、とても幸せで、とても嬉しくて、この幸せがずっと続きますようにと、心の中で思うのでした。
 王宮に到着し、少しの休憩を挟んで、夜会の為の準備を始めます。アルベルト様の瞳と同じエメラルドグリーンのドレスを身に纏い、結婚式の時に付けていたアルベルト様に頂いたエメラルドのネックレスで首元を飾った。
 コンコンコン、控室の扉がノックされ、アルベルト様が顔を出した。 アルベルト様は、黒を基調にしたスーツ姿で 私のドレスと対になるように 所々、エメラルドグリーンの差し色が使われていた。
「準備は出来たかい?」そう 言いながら部屋に入って来る殿下はとても嬉しそうだ。
「あぁ、そのドレスもとても良く似合っている。キレイだよ、ユリアーナ。」両手を広げ、柔らかく私を抱き寄せ 軽く頬にキスをくれました。皆の見ている前でものすごく恥ずかしいのですが…
「それじゃぁ行こうか。私の愛しい人。」(甘い!とっても甘いです!アルベルト様。私の心臓が爆発しそうです!!)
 私の気も知らないで、私の目の前にアルベルト様の腕が差し出され、私はその腕に自分の腕を絡めてエスコートされ、夜会の会場に向かいました。
 会場はすでにたくさんの人で賑わっていました。シャンデリアがキラめき、オーケストラがゆったりした曲を奏でている。いくつかあるテーブルには軽食や飲み物が用意され、すでに王と王妃は会場入りしており、本日の主役である私達の入場を今か、今かと待ちかまえています。
 会場入りの名乗りが上げられ、私達は腕を組んでゆっくりと 王と王妃の待つ玉座に向って足を踏み出しました。本日の式が滞り無く無事に終えた事を告げ、王と王妃に感謝を述べると、王が今日の結婚を寿ほぎ会場の皆に二人が夫婦になった事を宣言した。夜会の始まりを告げ、最初のダンスが始まる。
 一曲目はアルベルト様と私の二人だけのダンスだ。ゆっくりとしたワルツに合わせ、二人でクルクルとターンをすると、その度に、二人の衣装が絡み合い、まるで一つになったかのように見えた。二人のお揃いの衣装はより一層、私達を 仲睦まじいものに見せてくれる。会場に感嘆のため息が漏れる。
 一曲踊った後は王族席に戻り、次々とやって来る来客の挨拶を受けた。一通り挨拶が終わると、そっと、エリンから退席を促される。私は先に退席して、初夜の準備をします。いよいよ今夜。心臓がドキドキして、もう 死にそうです…
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