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「私の姫様」(S侍女 エリン)

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 夜空に光の花が咲く。なんと美しい光景でしょう。そして、王太子殿下と二人寄り添って、夜空を見上げている姫様。国では、「暗黒王女」「呪いの王女」などと、ろくな呼び方をされず、本当にお可哀想でした。大きすぎる魔力に当てられて、弱い者は 姫様と席を共にする事も難しく、ロイド様との事があった後は、更に酷い噂が流れて、祖父である先王様が、姫様を引き取り、辺境へやられたのは、王宮の噂があまりに酷く、姫様がまともに生活を送る事さえ出来なくなってきたからでした。元々 我が国には、魔力を持つ者がおらず、魔導具を使って生活する国でした。姫様の大きすぎる魔力に当てられて、具合を悪くする者が多かった為、あのような、不名誉なあだ名で呼ばれてしまわれた姫様がお可哀想で、挙げ句の果てに、ロイド様のせいで、姫様は王都にも居られなくなって、先王様がいらっしゃらなければ 姫様はどうなっていた事か、そもそも、命の恩人である姫様を「バケモノ」呼ばわりするなんて許せません!!!私はもう…悔しくて悔しくて、それなのに姫様は健気にも、辺境で、
「私にも出来る事があるのよ!」と、先王様について、魔力で土地を豊かにしたり、魔獣を討伐されたりしていらしたのです。本当に姫様は素晴らしいお方です。ですからこの婚姻の話しがあった時、私は魔力があって当たり前のこの国でなら、姫様も普通に生きていけるかもしれないと考えたのです。
この国では 貴族のほとんどが魔力を持っていて、姫様に奇異な目を向ける者もあまりいないようで 本当に安心いたしました。先日、気を失い 王太子殿下に抱えられて、帰っていらした時は心臓が止まるかと思うほど驚きましたが、どうやら 大きなダンジョンを姫様が消滅させたらしく、魔力枯渇でたおれたと聞いて、本当に心配いたしました。でも、王太子殿下が付きっきりで 姫様の魔力回復に手を尽くして下さり、事なきを得たのです。
あれから 姫様と殿下は同じ寝室を使うようになり、御夫婦の絆も深まったようで、姫様は毎日殿下と仲睦まじく、幸せそうに笑いあっておられます。この国に来て本当に良かったと、心の底から嬉しく思います。この国では、姫様を不名誉な名で呼ぶ者もおりません。先程ロイド様がいらした時は 又 姫様がおつらい思いをするかもと、警戒いたしましたが、殿下がしっかりと、庇って下さって、何事もなく、姫様も傷ついた様子が無い事にほっといたしました。
今 お二人は、寄り添い合って、夜空の美しい光景を見つめていらっしゃいます。そのお顔は幸福に満ち足りていて、私の心も幸せな気持ちで溢れています。
どうか、これからも お二人でお幸せに、微力ながらも、私もお手伝いいたします。   私の姫様。
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