最強宇宙人ゼルネラ ~巨大変身ヒロインはボクの獲物です~

草宗

文字の大きさ
25 / 32

25、公開リンチ

しおりを挟む
 グイ、と引っ張られて数歩あとずさる。
 強い。まるで腕力では敵わない。ヘタに踏ん張ったら、首がますます締まり背骨が反り曲がってしまう。
 シアンの懐まで引き寄せられた炎乃華は、ガッシリと羽交い絞めにされる。
「は、離し……てっ!」
 暴れたところで、両腕と首を固めたシアンの腕はビクともしなかった。
「ノワルとやっていたのは所詮お遊戯だってことが、ようやく呑み込めたかい?」
 目の前にまで黄金ロボが迫っていた。太い腕を振る。極太の金属バットみたいなもの。巨大なタンカーで殴りつけるような衝撃が、炎乃華の側頭部に吸い込まれていく。
 月が落ちたかと思う轟音が、耳元で響いた。
「あぐうっ――っ! ……あがあ、アアっ!」
 視界に火花が散る。頭がふたつに割れて、脳ミソが飛び出したのではないかと錯覚した。
 ツーサイドアップの髪をバラバラと振り乱し、炎乃華の肢体は横に90度折れ曲がった。痛い、なんてものじゃなかった。ドロドロに融けたマグマを頭からかけられたみたいだ。
「もう一発だよ、ゴールディ」
 今度はボディブローが、斜め下から鳩尾を突き上げる。ロボットの拳が、少女の腹部に深くめり込む。
 ドボオオンッ! という豪打の音色は、もはやミサイルでも着弾したような爆音に近かった。
「んぶっ! うぶううっ~~っ‼ ……かはぁっ!」
 唾液の塊が、悶絶の呻きとともに口から噴き出した。
 赤いものが混ざっている。またも私は、みっともない顔を全世界に映されてしまっている。羞恥と屈辱が沸き立つものの、それ以上の苦痛が炎乃華の脳裏を占めていく。
「フフ。捕まえてしまえば、こちらのものさ」
 不意にシアンが拘束を解き、ドンと背中を突き飛ばす。
 ヨロヨロとつんのめりながら、チャンスだと炎乃華は思った。自由を取り戻した今なら、まだ闘える。パワーやタフネスでは敵わないけど、もう一度スピードで撹乱したら。
「あ……アアっ!?」
 ガクガクと両膝が震えて、炎乃華は立つのもやっとであった。
 そして気付く。ゴールディに受けた二発の打撃。頭と鳩尾に喰らった豪打が、こんなにも効いていることに。シアンの羽交い絞めで、逆に支えられていたことに。
 頭蓋骨が割れたようにガンガンと響き、鉛の塊を埋められたように腹腔が重く疼く。ぐわあああ、と視界がマーブル模様を描いて歪んでいる。
 もう、このまま倒れたかった。
 なんでこんな、痛い目に遭わなきゃいけないんだろう。惨めな姿をたくさんの人々に見られて、笑われて、叱られて……。『正義のヒロイン』になりたいなんて思ったせいで、こんなにも辛い仕打ちを受けなきゃいけないのか。
 学校で聞いたクラスメイトの声、そしてネットに流れるコメントを聞いた時には、胸が張り裂けそうだった。
 私はただ、お母さんのようになりたかっただけなのに。悪を倒して地球を守る、そんなカッコイイ存在になりたかっただけなのに。
 ねえ、みんなは違うの? ヒーローに、ヒロインに、なりたいと思わなかった? 幼稚だからって理由で、あの時のトキメキを捨ててしまうの?
『正義のヒロインになりたい』のは、そんなに悪いことですか?
「私……はっ! 倒れないっ!」
 崩れかかる脚を強く踏ん張って、炎乃華は叫んでいた。
「諦めないっ! 負けないっ! どんなに痛くても、苦しくてもっ! 正義のヒロインは絶対に挫けないわっ! マイティ・フレアは倒れたりなんかしないっ‼」
 そうだ。そうなのよ。
 私が知っているヒロインはみんな……マイティ・フラッシュも、モモビクトリーも、みんなみんな、こんなことで負けたりしないの。
 あのヒロインたちの輝きを、美しさを。こんなところで私が、マイティ・フレアが……
 汚していい、ワケがないっ!
「来なさいっ、ゼルネラ星人シアン! たとえ私は殺されたって、正義のヒロインであることをやめないわっ! どんなにブザマになろうとも、マイティ・フレアであり続けるっ‼」
「……命よりも誇りを選んだのかい。虫ケラ同然の地球人にしては、シャレた決断をするじゃあないか」
 震えながら立ち続ける炎乃華に、シアンは距離を詰めていく。
 青い鱗に覆われた顔が、微笑を浮かべた……と見えたのも束の間。
 ビッシリと額に隙間なく血管が浮き上がり、憤怒の形相へと変貌する。
「そういうお前だからこそッ! 二度とノワルに会わせられないんだよォッ――ッ‼」
 水腕のムチが、炎乃華の顔と胸とを激しく打ち据えていた。
 そこから後は、一方的なリンチであった。
 シアンとゴールディ、巨大な美少女を前後で挟んだゼルネラ星人と宇宙ロボは、代わるがわるに暴虐を加える。殴る。蹴る。一方が押さえつけると、もう一方が抵抗不能なヒロインを揉み潰すように拳を肉に埋め、骨を軋ませた。
「うあああっ、ああッ……‼」
 胸に、腹部に、脇腹に、さんざんゴールディの豪腕が撃ち込まれる。痛みが灼熱となって肢体に残り、こみあげる赤いものを喘ぎとともに吐き出した。
「フン、やはりマナゲージ持ちは厄介だよ! いくら身体を壊しても簡単には死なないんだからねえ」
 吐血する炎乃華を無理矢理立たせ、シアンは宇宙ロボに向かって放り投げる。
 今度はゴールディが拘束する番だった。黄金の腕がガッチリと炎乃華の首と腰を背後から抱える。鋼鉄の枷を嵌められたように、巨大ヒロインは自由を失った。
 真っ直ぐ伸びたシアンの両腕から、胸中央の赤い結晶体に水流が射出される。
 シュウウウ……シュウウウ~~……
「はあぐっ!? きゃああっ、ああっ――ッ‼」
「今日こそお前の炎のマナゲージを破壊してやるよ。耳障りなお前の叫びも、もう聞かなくてよくなるねえ」
 苦しい。もう、ダメ。ここまでか。
 全身が溶けるような激痛のなかで、炎乃華は死を覚悟した。
 ゴールディに捕獲された肢体は身動き不能。逆転の技も秘策もなかった。このまま水流をマナゲージに浴び続ければ、間もなく絶命するのは明らかだ。
「アっ! アっ! アアアッ~~ッ‼」
 泣くことだけはやめようと、誓った。
 私はもうすぐ死ぬ。それでも、苦しさや悲しさから、涙を見せることだけは絶対に避けたかった。全世界の人々が見ているのだ。力及ばず負けたとしても、マイティ・フレアはヒロインらしく最期を迎えてみせる――。
「死ね。マイティ・フレア」
 処刑の宣告が、シアンの口から漏れ落ちた。
 一段と水流の勢いが増す。鉄砲水が、炎乃華の胸のマナゲージを抉る。
 あまりの激痛に、身体がバラバラに千切れるのを、炎乃華は覚悟した。
 ビリビリビリィッ‼ ビリリリィッ――ッ!
 パックリと、大きく裂けた。
 引き裂かれたのは巨大ヒロインの肢体ではなかった。生きている。炎乃華はまだ生きている。
 大きな口を開けて裂けたのは、採石場の空間それ自体。
「悪いな、シアン。そこまでだ」
 空間に生まれた裂け目から、十本の指が飛び出している。真っ黒な。節くれだったその指だけで、力強さが十分伝わる。
 一気にブチブチと裂け目を広げて、筋骨隆々の男が決闘の場に姿を現した。
 見慣れた姿だった。この採石場で闘うのは、いつでも彼だった――。
 炎乃華の胸に温かいものが広がる。
「……あな……たは……っ!」
「待たせたな」
 漆黒のゼルネラ星人、ノワル。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

処理中です...