最強宇宙人ゼルネラ ~巨大変身ヒロインはボクの獲物です~

草宗

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15、シアン

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 おい待て、てめえ。フザけんな。
 マイティ・フレアを殺す? シアン、てめえは何を言ってやがるんだ。その子に、炎乃華に手を出していいのは……このオレだけだ。マイティ・フレアはオレが誕生させたんだからな。
 まして殺すなどと、許せると思うなよ。
「うわあああ~~んッ! 炎乃華ちゃん! 炎乃華ちゃんが殺されちゃうよぉ~~ッ!」
 急いで部屋を飛び出そうとしたオレに、抱きついてきた影があった。
 オ、オッサン! 邪魔すんじゃねええ! 両脚にタックルされたら動けねえだろうがあッ!
「ヤダヤダヤダぁッ! 炎乃華ちゃんが死んじゃうよぉッ~~! イヤだよぉッ、誰か助けてやってよぉッ~~!」
「ちょ、おじさん! 落ち着いて! 落ち着いてください!」
 うおいッ! ズボンに鼻水つくってばぁ! もう涙でベチョベチョになってるじゃねえか!
 ダンディを絵に描いた、とか評したの、撤回させてもらおう。これじゃあダダこねる幼稚園児と変わらないっての!
 おやじさんが炎乃華大好きなのはわかっていたけど、まさかこんなに取り乱すなんて。
「マイティ・フレアは強いんです! 大丈夫、あんなサド女はやっつけてくれますから」
「ま、待って! 待って、待って。黒岩くん、どこいくつもり? 君、さっきから逃げようとしているよねぇ!? どうしてボクを置いていこうとするのッ?」
「え、ええッ!? いやほら、炎乃華ちゃんを応援しないと! 別におじさんを置いてくとかってわけじゃなく……」
「うあああ~~ん! ヤダぁ~ッ! ひとりにしないでよぉ~~ッ! ひとりじゃとても、見てらんないよぉ~~! 黒岩くん、行っちゃイヤだぁ~~ッ!」
 わざと? あの、わざとなんスか。もしかしてオッサン、どこかの異星人にカラダ乗っ取られたりしてるワケ? 
 アンタがしがみついている限り、炎乃華がヤベエんだよおお! 助けが欲しけりゃ、オレを早く現場に行かせろって!
 行動は幼いくせに、肉体は立派な大人だから厄介だ。オッサン、けっこうパワーある。オレを逃がしたくなくて、それだけ必死ってことなんだろう。ていうかあの高速タックルからすると、たぶんアマレス経験者だろコレ!
 もちろんゼルネラ星人のオレが本気だせば、おじさんを引き剥がすのも、失神させるのも簡単なことだ。殺さないよう、力を加減するのが難しいけどな。
 けど。だけどだ。
 どう見ても軟弱そうな体格をしている今のオレが、怪力ぶりを見せてしまうってのはどうなんだ? 危険すぎないか?
 家にはオレとおじさんしかいないんだ。仮に失神させたとしても、誰が自分を気絶させたのか、すぐに見当がついてしまう。少なくともオレが疑われるのは間違いない。
 オレはさっき、炎乃華を応援にいくと言ってしまった。普通それは、声援を送る、くらいの意味に捉えるだろうが……あの闘いの場にゼルネラ星人のノワルが出現したら、オレとイコールで結びつけるんじゃないのか? だって見た目に反した力を見せてしまった直後だぞ。
 異星人の存在など、半信半疑だったころの地球人なら、そんな発想はしなかっただろうな。
 でもいまや、ゼルネラ星人も巨獣も当たり前の時代だ。
 ましておじさんは、マイティ・フレアをもっとも間近で知っているひとだ。人間が巨大化しても異形となっても、全然驚きゃしないだろう。猫背でヒョロい少年が、実はマッチョ体型の最強宇宙人だった、なんて推理も抵抗なく展開するはずだ。
「い、行きませんよ……。どこにも行きませんから……」
 どうする? どうすりゃいいんだ?
 口で否定しながらも、オレは必死で頭をフル回転させる。早く炎乃華を助けにいかなきゃ、本当にシアンに殺されてしまう。力の差は歴然なんだ。かといって、オレの正体を知られるわけにはいかない……知られたくない。
 マーくんと約束している、だけが理由じゃない。
 オレがゼルネラ星人だってバレたら。もう二度と、この家には来られない。炎乃華と友達として会うことが、これから一切できなくなる。
 ずっと友達でいようって、炎乃華と約束したばかりじゃないか。
『てやあああっ――ッ!』
 テレビから流れる炎乃華……マイティ・フレアの声に、オレは意識を引き寄せられた。
 青色のゼルネラ星人シアンと、白銀と深紅のスーツに身を包んだ巨大ヒロインは闘いを続けている。正直、ちょっとオレは驚いていた。ここまでマイティ・フレアがもつとは予想外だったのだ。
 本物のヒロインになってから炎乃華は、相当格闘技の稽古に励んでいる。その成果がちゃんと出ているのだろう。ここだけの話、実戦でオレも少しずつレベルを上げて鍛えてやってるしね。
 しかし油断は禁物だ。シアンが本気を出していないのは、オレにはよくわかっている。
 シアンは試しているんだ。マイティ・フレアの実力がどれほどかっていうのを。
『……フン。なかなかしぶといじゃないか』
 一連の攻防を終えて、対峙するふたり。シアンの声に感嘆するような響きが混ざっているのは、きっと気のせいじゃない。
 だけど勘違いしちゃダメだ。あくまでこれは、ひ弱な地球人にしては、という注釈付きの感心なんだ。上から目線の。
赤ん坊がひとりで立ち上がったら「お~、えらいね~。よくできたね~」って褒めるだろ? そういうスタンスなんだよ。シアンからすれば。
 ふんぞり返った姿勢で、シアンが右手をマイティ・フレアに突き出す。
 掌を広げていた。さぞ、地球の巨大ヒロインを讃えるかのように。
「……まさか……そんな単純な手に引っ掛からないよね?」
 おい、頼むぞ炎乃華。シアンは本気でお前を殺そうとしている相手だぞ? 握手なんてあり得ないことくらい、わかってるよね?
 そんなオレの不安を、アイドルを兼任している巨大ヒロインは、自分から当たりにいく勢いで的中させやがった。
『あ、ハイ! ありがとうございます! これからも頑張りますっ!』
 両手でシアンの右手を握り返したうえに、深々とお辞儀するマイティ・フレア。
 癖か!? それとも条件反射なのかッ? 誰だよ、握手会なんてやらせてるヤツはぁ!
「……バッ!」
『バカか、お前は』
 オレの叫びに、シアンの声が重なった。
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