オメガスレイヤーズ「第0話 破妖の天使」

草宗

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1、噂

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スレッド名「【都市伝説】マントのヒロインは実在するか?Part2【目撃談】」


255:名無しさん 20XX/09/03 18:52:49 ID:N5GYKw

オレが聞いた話だとバケモノみたいなのと戦ってたらしい
マントもしてたし、なんかアメコミのヒーローモノみたいな感じ?
最初は撮影かと思ったら、気が付いたら消えてたんだって!


256:名無しさん 20XX/09/03 19:03:02 ID:iTV4Vj

消えたってw


257:名無しさん 20XX/09/03 19:11:23 ID:BaDO/Lw7

アメコミっていうとスーパーガールみたいな?
映画とかテレビドラマでやってたよね コスプレじゃないの?


258:名無しさん 20XX/09/03 19:16:42 ID:mknPI0B

お前らまだこんなの信じてんのかよwww


259:名無しさん 20XX/09/03 19:33:02 ID:fZHy5HO

信じるか信じないかは勝手だしウソだと思うのが普通だろう。
だが誰がなんと思おうがこれだけは言わせてくれ。これは真実だ。
なぜならオレがこの目で、彼女をみたからだ。


260:名無しさん 20XX/09/03 19:42:15 ID:fZHy5HO

上で言っているようにアメコミのようなマントをしていた。
マントだけじゃなくコスチューム?みたいなのを着ていた。
オレはモーターショーのコンパニオンとかレースクイーンをイメージしたけど。

ちなみに思ったより若そうで、かなりかわいかった。


261:名無しさん 20XX/09/03 19:47:38 ID:7LHxDFp

マジで? もっとkwsk


262:名無しさん 20XX/09/03 20:01:17 ID:fZHy5HO

亡霊がでるって言われてる廃墟のホテルがあるんだ。有名な心霊スポットなんだけど。
仲間とそこに入ろうとしたら、入り口の前に立ってたんだよ。あの時はめちゃめちゃビビった。
噂のマントヒロインじゃん、っていうよりまず、いつの間に現れたかわからなくて。
んで、入るなって言うわけよ。入ったら命の保証はしないって。


263:名無しさん 20XX/09/03 20:06:02 ID:fZHy5HO

頭混乱したけど、すごい迫力でさ。圧倒されて動けない、って感じ。
女子高生くらいの小さい女の子なんだけど、あれは本物のヒロインかもって思った。
その後その子はホテルに入っていったんだけど…オレらは怖くなってすぐ逃げ帰ったよ。

ちなみにその子は全身黄色だったよ。マントもコスチュームもね。


264:名無しさん 20XX/09/03 20:08:54 ID:TX08wQQ

おいおいすげえじゃん!
やっぱり怪物と戦ってるマントヒロイン、実在するんじゃねーのか!


265:名無しさん 20XX/09/03 20:11:44 ID:fZHy5HO

ちなみにその子、オメガなんとかって言ってた。
多分、名前だと思う。うっかり喋ったあと、めっちゃ焦ってたから。




 妖魔など、存在しない――。
 
 誰もがそう思う。胸の内でどこか期待にも似た感情を抱きつつ、信じるわけがないと。
 
 むろん、それを狩る者など、フィクションのなかだけの存在・・・ファンタジーの住人だと。
 
 だが、いつしか人々は気付く。
 
 いない、のではなかった。
 
 知らなかった、だけなのだ。
 


 ほんの気まぐれから、起こったことだった。
 
 高校からの帰り道。相沢健人相沢健人あいざわけんとは少しでも早く駅へと向かうため、普段は通らないショートカットの経路を選んだ。友人から借りた新作アニメのDVDを見たい、そんな些細な動機だった。
 そこは高層マンションの建設現場で、資金繰りが難しくなったのか、ここ数か月、工事は途中で完全にストップしていた。白の建築シートが垂れさがっているだけで、出入りする者は誰もいない。
 ここを通れば距離も時間も短縮できる、そう思った健人は、人目がないことを確認してシートをくぐり抜けたのだ。
 
 それが人生で忘れられない悪夢の引き金となる、など予測できるわけもなかった。
 
「うわああああッ・・・!! し、死体ッ!?」

 茶色の地肌が剥き出しになっている敷地、そのほぼ中央。
 そこまで健人が進んだ時、土の地面が盛り上がる。無数に。ボコボコと、健人の周囲を取り囲むように。
 
 目の前の地中から飛び出したのは、白骨化した頭蓋骨だった。
 皮も肉も眼球もない。わずかに顎に土気色の皮膚が張り付いただけの、いわゆるシャレコウベ。空洞になった左右の眼窩を、二匹のミミズが這っている。だが健人が、真にゾッとしたのはその後だった。
 
 その髑髏頭に続いて、地中から腕や胴体が飛び出す。
 這い出てくるのだ。土に埋まっていた、死体が。頭部が白骨化しているのだ、死んでいないわけがない。
 
 だが、明らかな死体であるにも関わらず、半分腐乱している肉体はよく動いた。ところどころ、ずるりと黄土色の肉片が落ち、白い骨が見えている。
 しかも亡骸たちは次々に――盛り上がった地面から湧き出てくる。健人を中心にして、瞬く間に十重二十重の死者の人垣が出来上がった。
 
「ゾッ・・・ゾンビッ・・・!!? うぁッ”・・・うああ”ッ・・・!!」

 巨大テーマパークのテレビCMが、健人の脳裏を瞬間よぎった。
 ゾンビナイト、とかいう夏限定のイベントを紹介するもの。要するにテーマパーク全体がお化け屋敷になるもので、入場者は無数のゾンビの群れに襲われる、という設定らしい。
 健人はそのイベントは未体験だが、カワイイ若手女優がゾンビに囲まれる映像はインパクトがあってよく覚えている。あの光景が、今実際に我が身に起こっているのだ。
 
 だが、健人は知る。
 本当の恐怖に襲われたとき、ひとは悲鳴などあげられないことを。
 ただ、引き攣った呻きが、咽喉奥から漏れただけだった。わずか2mほどの距離を置いて、四方を死者に囲まれることが、どれほど恐ろしいことか――。
 
 ざっと見て、4、50体。動く死体の視線が、一斉に中央の健人に注がれている。向けられた眼のなかには、真っ暗な空洞のままのものや、眼窩から目玉がこぼれかけているものもあった。
 感情のない眼は、怒りや憎しみの眼光より、はるかに臓腑を震撼させた。健人の遺伝子が、怯えていた。理屈など抜きに、根源的恐怖をもたらす存在が周囲を囲んでいる。
 
 ボロ布を纏ったゾンビの群れが、ずい、と一歩を縮めた時、健人は悟った。
 
 この死者たちは、自分を殺そうとしている、と。
 いや、もっと正確にいえば。
 
 柔らかで、温かいボクの肉を・・・食べようとしている。
 
「ッ・・・ぅああ”ッ・・・うわあああああッ~~~ッ!!!」

「まったく。なんでこんなところに迷い込んじゃうわけよ?」

 心臓が潰れそうな恐怖に、悲鳴がようやく口を割る。と、呆れたような声が頭上から降るのとは、ほとんど同時であった。
 
 ・・・女のコ? 確かにどこかのアニメヒロインに似た声が、聞こえた気がしたが。
 
 しかし健人が、上を向いている余裕はなかった。
 四方から、恐怖が津波となって押し寄せる。ゾンビの群れが、灰色の指を伸ばして健人に一斉に襲いかかってきた。
 健人の肉を掴もうとする、死体の指が。
 
「ひッ、ひィ”ッ!! たッ、助けッ!!」

「大丈夫よ。すでに風が、あんたを守ってるから」

 ザンッ!! ザザザザンンンンッッ!!!
 
 健人に向かって飛び込んできた死体が、空中で破裂して粉塵となる。
 まるで見えないバリアが、張ってあるかのようであった。半径約1m。それ以上健人に近付く者は、侵入を拒否されたかのように弾け飛ぶのだ。
 
「アリサの竜巻は、日本刀よりもよく斬れるからね。危ないから、あんたもヘタに動かないでよね。見えないだろうけど、あんたを中心にして風の壁があるんだから」

 確かに落ち着いて耳を澄ませば、ヒュルルル、と木枯らしに似た風切り音が、健人の周りで聞こえている。
 ゾンビの群れが突撃をやめ、じりと一歩下がった。ゼエゼエと、荒い息を吐きながら、健人は声のする上空へ視線を向ける。
 
 建設途中の高層マンション、その最上部。
 まだ剥き出しになっている鉄骨に、ポニーテールの少女が立っていた。

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