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「第十話 桃子覚醒 ~怨念の呪縛~ 」
21章
しおりを挟む全身の細胞が沸騰するような感覚に、覚醒した桃子の意識は捉えられた。
熱い。身体のあちこちがムズムズと疼く。
気のせいなどではない、内側から湧きあがる火照りを確かに少女は感じ取っていた。皮膚に食い込む鎖の痛み。失神するまではギシギシと締め付けるその痛みが苦しみとしか感じられなかったのに、今ではなぜかむず痒い奇妙な感覚も併せ持って脳髄に迫ってくる。
「ようやくお目覚めか、雌ブタが」
吐き捨てるような憎悪の言葉が、囚われの天使の耳朶を打つ。
電流拷問の末に意識を失った桃子の肢体は、気絶前となんら変わることない姿で鎖に縛られ、天井から吊るされたままであった。憎しみの視線と下卑た笑みを向ける3人の敵も、幼きふたりの捕虜もそのまま。相変わらずの絶望的状況が続いている。
いや、今まで以上の過酷な現実が迫っていることに、だんだんと明瞭になっていく美少女の意識は理解し始めていた。
「まさか、桃子くんがあそこまで痛みに耐えるとは思いも寄りませんでした。おかげで楽しいことになりそうですがね」
ねっとりと絡みつく中年男の声がすぐ傍らから聞こえてくる。露骨に表れた喜悦の響きに、カリスマ美少女の奥底から不快と不安がこみ上げる。
他者を虐げることが当たり前と考え、実際にそのように生きてきた久慈仁紀と、若い乙女を貪ることに悦びを見出す田所。己の身がどうなってしまうのか・・・電流拷問などでは終わらない、尚続く嗜虐への予感が、桃子の心に暗い影を落とす。
美貌に挿した一瞬の翳りを変態教師は見抜いたのか。
少女に食い込んだ鎖を無理矢理、指をこじ入れて握った田所教諭は、荒々しく引っ張る。
柔肌を抉る鎖と圧迫される内臓。ギシギシと軋む骨の音を聞きながら、桃子はたまらず呻いていた。
「う・・・あァ・・・」
ピンクに輝く厚めの唇から洩れた己の声に、思わず桃子は動揺した。
なんて、声。
いや、声というより自然に洩れたそれは吐息に近い。しかも、ある種の感情のこもった。耳の中で転がるようなくぐもった声は、香りでいえば甘く、色でいえばピンクであった。吐息のかかった弾力ある上唇が、ヒリヒリと熱い。まるで火を吐いたような熱さ。
"な、なに・・・どうしちゃったの、あたしのカラダ・・・・・・ま、まるでェ・・・"
「フン、だいぶクスリが効いてきたようだな。低脳なメスめ」
真正面に立った漆黒に身を包んだ男が、汚いモノを見る視線で見詰める。久慈の足元には空になった注射器が5本、まるで桃子の肉体に起きた悲劇を見せつけるように転がっている。
「あ、あたひに・・・にゃにを・・・ひたのォ・・・・・・」
呂律が、回らない。
愕然とするショックが背筋を這い上がる。だが官能の霞で桃色に塗りつぶされた脳髄に寒気は届かず、湧きあがる欲情の前に熱く蕩けていってしまう。
「マムシ、海蛇、シベリア人参、マカ、ムイラプアマ・・・世界中のありとあらゆる場所から掻き集めた、強壮強精剤のスペシャルエキス。現実的な効果のほどは眉唾なものもあるが、計30種類以上の精力エキスだ。瀕死のカラダも随分と元気になってくるだろう?」
薄い唇を歪ませる久慈に、白桃のごとき少女の頬は一気に紅に染まる。
だが、細胞のひとつひとつが沸騰しそうな火照りはいまや全身に広がり、美少女は己が強制的に発情させられていることを自覚しないわけにはいかなかった。雪のような白い肌は、名前のごとく桜色に染まっている。ドクドクという己の鼓動が、やけに大きく桃子の鼓膜に響いてくる。
「なかには寝たきりのジジイがおっ勃てたまま、三日三晩納まらなくなったなんてツワモノの成分も入っている。貴様の若く、そして小さな肉体には効果絶大だろうな。ちなみにそのジジイは、クスリの反動で翌日には衰弱死しちまったそうだが」
「ヒ、ヒトキ・・・あなひゃって・・・ひとはァァ・・・」
「ククク、それだけではないぞ。自分の足元をよく見てみろ」
促されるまま、桃子は整った美貌を真下に向ける。鎖によって宙に浮いた足の先、己の影が映る床に、なにか線香の束のようなものが立てられているのを見る。
先に火のついた茶色の線香らしきものからは、白い煙がもうもうと立ち昇っていた。拘束の少女戦士の肢体を、無臭性の煙はもう30分以上包んでいる。
「どうやらなにも気付かないうちに、たっぷりと吸ってしまったようですねえ。この『ヘブンズ・ブレス』の煙を」
芯から燃え上がってくる痺れるような熱さが桃子の全身に広がっていく。可憐と美麗を兼ね備えたその美貌にクサい吐息をかけながら、えびす顔の中年男は言った。
「苦労したんですよ、こいつを手に入れるのは。噂を耳にして以来、世界中を駆け巡ってようやく香港で見つけることができました。このお香から出る煙は男性フェロモンとまるで同じ成分と言われてましてねえ。1分も吸えば、異性が視界に入った瞬間、もうメロメロだそうですよ。自然、昂ぶらずにはおられませんよねえ?」
笑いを張り付かせた脂ぎった顔を、漆黒の瞳がキッと睨む。だが、端整なゆえゾクリとするほどの光を放つ桃子の視線には、紛れもない官能の霞みがかかっていることを、田所は見極めていた。
「女性は男に愛されるのが一番です。疼くでしょう、桃子くん?」
「だ、誰がァァ・・・お、おまえたひなんかにィィ・・・」
「『エデン』がなければショック死しかねない強壮剤を打たれ、雌としての本能を刺激されては、欲情はもはや煮えたぎっているだろう? ヤリたくて仕方あるまい。貴様のカラダはいまや肉欲の虜だ」
表情を凍らせたまま、痩身の男は鎖の間で浮き上がった、美少女のバストを鷲掴む。
「はぐうッッ?!! きゃうううううううッッッ~~~ッッッ!!!」
「弱き蛆虫のくせに、どこまでも歯向かうクズ女めッ! 電流が物足りないなら、盛りのついたメスブタとして始末するまでだ。闇豹、この女の痴態、しっかりとガキどもに見せつけてやれ」
少し離れた場所で幼児ふたりを抑えたちゆりが、金のルージュを歪ませる。性の知識などあるわけもない子供たちは、再開された桃子先生への仕打ちを、恐怖のなかに不可思議の光を浮かべた瞳で見詰めている。
「ククク、正義が悪に敗れるのと、悪に腰を振るのと・・・どちらがガキどもにはショックだろうなあ?」
「ヒ、ヒトキ・・・ゆ、ゆるしぇない・・・こ、このォ・・・ひゃッ・・・ひゃくまァァ・・・」
「バカめ。この程度で感じてしまっている痴女になにができるッ?!」
乱暴に握っていただけの久慈の右手が、桃子の左乳房を優しく撫で上げる。羽毛でくすぐるような繊細なタッチで。
ジュンとくる官能の津波が胸全体を包み込み、桃子の下腹部に電撃を突き刺す。ビクンッと反り上がった美少女の肢体は、痺れる感覚に捕らわれて突っ張った姿勢のままピクピクと硬直する。
「どうしたッ桃子ォ?! 随分純情な反応するじゃないか。先程までの生意気ぶりはどこへいった? それとも男に嬲られるのは気持ちよくて仕方ないかァッ?!」
「久慈くんもひとが悪いですねえ。スペシャルエキスと『ヘブンズ・ブレス』、この複合責めに感じないなど、どんな不感症でも有り得ません。まして桃子くんはほとんど男性との経験がない様子。どうやら以前我々に処女を散らされた以外、男を知らないようですから、怒涛のような快感に溺れるのも無理ありません」
「ひゃッ・・・ひゃぶッッ・・・ふぇああッッ・・・うぐぐ・・・」
触れるか触れないかの優しいタッチで、悪鬼の細い指先がなだらかに盛り上がったアイドル少女の胸を這い回る。それだけでもう、桃子はたまらなかった。火照りがもはや業火に変わり、下腹部の内側で沸騰している。絶え間なく乳房を這う官能の刺激は、凶悪なまでに鋭く子宮に突き刺さる。
"あああッッ・・・あ、熱いィィ・・・カラダが熱いよォォ・・・トロトロに・・・溶けちゃいそう・・・・・・こんな、こんなのってェェ・・・"
見た目が華やかな藤村女学園の生徒にあって、その頂点に君臨する桃子はその実、異性をほとんど知らない少女であった。思春期での数々の嫌な思い出のせいか、エスパー少女はいつしか男性に対して一歩引くようになっていた。性交渉などとんでもない、桃子は異性に触られることすら嫌悪を感じるほどなのだ。
だがそれゆえ、ウブな少女の肉体は、性的な刺激にまるで免疫がなかった。好事に長けた淫獣たちの技は、真っ白な肢体に面白いように嵌っていく。さらに精力をクスリで極限にまで高められ、フェロモンにより動物の本能から昂ぶりを喚起されては、いくら超能力少女が鋼鉄の精神の持ち主であってもひとたまりもない。
"だ、ダメ・・・ダメ、耐えなきゃ・・・子供たちの前で・・・恥ずかしい姿、見せらんないよォォ・・・"
「うぐうッ・・・ひゃぶッッ・・・こ、こんなァァ・・・こんなものォォ・・・」
「カラダは正直だというのに、まだ抵抗する意志はあるようだな。だがそれでいい。ガキどもに無惨な姿は見せられぬと気力を振り絞る貴様を堕としてこそ、オレの怒りと屈辱も晴れる。せいぜい無様に足掻くことだ」
久慈の右手が下着を露わにした右胸の頂上へと移動する。
破れたTシャツから剥き出しになったベージュのブラを、別の生物のようにうね動く手が這い回る。周囲から頂点に向かい、刺激を集中させるかのような愛撫。ツンと尖った小さな蕾を陵辱鬼はギュッと摘む。
「ひぐうッッ?!!」
子宮を直撃する桃色の稲妻に、桃子の肢体は壊れそうなほど硬直する。
「喘げ、呻け! 貴様は守るべき者の前で、色情ブタと化して死んでいくのだ」
クリクリと固くなった乳首を久慈の指がこね回す。折り曲げる。押し潰す。
胸の蕾を弄られるたびに、少女の小さな肢体がビクビクと跳ねる。官能のさざ波などでは済まぬ、強大な怒涛。ピンク色に染まった細胞がぐつぐつと沸騰し、女の蜜が全身から滲み出てくるのを桃子は自覚した。
さらに色に狂う変態教師が若い柔肌にしゃぶりつく。容赦なく雪肌を這う指。感度のいい場所を探り当てては執拗に責める、粘着質な愛撫。ふたつの乳房を、股間の秘部を、丸みを帯びた臀部を、強く、弱く、休むことなく責め続ける無数の指。灼熱に燃える愛蜜が内なる壷から溢れ出し、少女の脳を白く白く塗り潰していく。
"ひゃぶッ・・・ぶひぇあッ・・・ダメ・・・ダメェェ・・・あたしもうダメェェ・・・もう・・・・・・イッちゃう・・・・・・"
快楽の波動に全身を包まれ、桃子の意識が飲み込まれかけたその瞬間だった。
嵐のように美少女を貪っていた愛撫は、突然消え去っていた。
「も・・・桃子センセ・・・・・・?」
「せ、先生・・・だ、だいじょうぶ?・・・苦しいの・・・?」
真っ直ぐに見詰める子供たちの視線が、たぎった桃子の肢体に冷水を浴びせる。
見ている、無垢な天使たちが。
いや、見ているのではない。見させられているのだ。冷酷な悪魔たちの手によって。
「心配しなくてもだいじょうぶよォ~。ウサギちゃんはねェ~、苦しくなんかないの♪ むしろ気持ちよくって悦んでるんだからァ~!」
金髪のコギャルがケラケラと笑いながら、両脇に抱えたふたりの幼児に語りかける。
恐らく今の桃子を処刑するも、昇天させるのも、容易い作業であるだろう。しかし、久慈が求めるものは、そんな生易しいものではなかった。もっと醜く、惨めな聖少女の姿。己の受けた苦汁を忘れるために、久慈は憎き虜囚を心身ともに地獄に堕とさねば気が済まないのだ。
「気持ち、いいの?」
「そうよ~。気持ちよくって、嬉しい嬉しいって叫んじゃってるのォ♪ ほら、桃子センセイに聞いてみたらァ~?」
快楽の余韻が残るカラダをヒクヒクと震わせながら、桃子は視点をふたりの幼子たちに合わせる。心配と、不安の混ざった顔。子供たちを安心させるために、笑わなきゃ。笑ってみせなきゃ。
「だ、大丈夫・・・だよォ・・・先生は、平気だから・・・ね・・・必ず、リョウタくんもアイちゃんも助けてあげ・・・ぎゅはあああッッ――ッッッ?!!」
止んでいた陵辱が突然再開される。
千切り取られそうな勢いでバストを潰され、桃子は雌獣のような叫びをあげていた。いったん鎮まりかけた内圧が、またグングンと高まっていく。雪肌を摩擦されるたび、擦り込まれたピンクの熱が徐々に降り積もっていく。
「せ、先生?! が、がんばってェェ~!」
たまらない刺激に美貌を歪ませるエスパー少女。快楽に溺れまいと必死で抵抗する形相は、苦悶に耐える表情にも通じた。事情を知らぬ幼児の声援が、桃子の耳にも届く。
「へばあッッ!! ひゅあああッッ~~ッッ!! み、見ないでェェ~! お願い、見ないでェェェ~~ッッ!!!」
倒錯しそうな快感の渦のなかで、無垢な視線を避けようと必死で懇願する桃子。
しかし、男たちにいいように肉体を弄ばれる美少女のショッキングな映像は、子供たちの目を釘付けにして離さない。
"ダメェェ・・・耐え切れないィィ・・・あたし・・・子供たちの前でイッて・・・"
桃子の脳裏に、愛液に沈む己の惨めな姿が思い浮かぶ。
だがついに膨れ上がった欲情が爆発する寸前、またもや淫獣どもの愛撫は中断された。
「あはアァッ!! ふぇああッッ!! ふぐうッ・・・なッ、なんでェェッッ・・・?!」
朱鷺色の厚めの唇から滝のような涎がトロトロと溢れる。魅惑的に輝く大きな瞳は光を失い、呆けたように虚空をさ迷う。
鎖によって縛られた両脚の内側を、生温い粘液が垂れていくのを桃子は感じていた。爆発寸前まで高揚し、欲情が高まっては中断されを繰り返すうち・・・美しき少女の肢体は、達する直前もっとも興奮するクライマックスの状態に置かれたのだ。
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