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「第十話 桃子覚醒 ~怨念の呪縛~ 」
19章
しおりを挟むギシ・・・ギシッ・・・ギギ・・・
天井から吊り下ろされた、錆びた鎖が軋む。
振り子のようにわずかに前後に揺れる鎖。その先に繋がっているのは、白く、そして若い肉体であった。
透き通るような肌に浮かぶ青い痣、赤く腫れた火傷の跡、毟り破られたような服・・・陰惨さ極まる状態が、あまりに哀れに映る普通の女子高生。いや、飛び抜けた容姿を持つイマドキ系の美少女が、鎖で螺旋に締め付けられて天井からぶら下がっている。
ファントムガール・サクラの正体、桜宮桃子。
咲き誇る華のように美しさと明るさを振り撒く優しき美戦士は、苦闘の果てに散り、仇敵の手に落ちていた。今はただ、屠殺場の死肉のように、ボロボロの身体を吊り下げるしかない。
ガクリと力尽きた頭を、傍らの中年男が茶髪を掴んでグイと引き上げる。
愛らしく、そして美しい少女だった。可憐と美麗、両方を兼ね備えた端整なルックスは、度重なる拷問の末、汗でグッショリと濡れ光っている。二重瞼の下の魅惑的な瞳は虚空をさまよい、扇情的な赤い唇は半開きになったまま・・・本来は清純である少女なのに、変わり果てた姿からは淫靡な妖しさが漂ってくる。元々桃子が持つアイドルらしい華やかさに、今は女の艶らしきものまでが加わっていた。好色な変態教師でなくとも、男ならば湧き出る涎を抑えることは不可能であっただろう。
闘い敗れた桜宮桃子を待っていたのは、凄惨な拷問の数々であった。
ファントムガール・サクラに変身した折に負わされた四肢の脱臼は、意識を取り戻した時には強制的にはめ直されていた。久慈の優しさなどではない。脱臼の痛みで、拷問の苦痛が紛れることがないようにだ。
世界制覇を唱える久慈にとって、ファントムガールの存在は邪魔者以外にない。負のエネルギーを増幅させたミュータントを倒せるのは、相反する光のエネルギーを持つ守護天使のみ。魔人メフェレスにとっては核兵器ですら脅威ではない。唯一の天敵を、人類の前で盛大に処刑する・・・効率よく人類を降服させるためには、まずファントムガールを葬ることが肝要と考えるからこそ、久慈はこれまでこだわってきた。
多くの人類が見守るなか、半ば公開処刑のようにサクラを倒した今、本来ならば憎き少女戦士を生かしておく必要はなかった。おおよそのファントムガール陣営の実態は把握できており、わざわざ瀕死の美少女を拷問する意味などない。だが今の久慈には、桃子を苦しめ抜く必要が、それも完全に叩き潰し、哀願の叫びを搾り取る必要があったのだ。
「苦しいか、桃子?! 瀕死の身体に電流を流されるのは堪えるだろう?」
両手に持った電極で、久慈はいきなり虜囚の両胸を挟む。
鎖の間で浮き上がったキレイな形のバストは、強制的に流される電撃に内部からバチバチと弾けた。
「きゃうううッッ――ッッッ?!! へべハァッッ!!・・・ふぶうううッッ~~ッッッ!!!」
宙吊りの肢体がビクンビクンと撥ね上がる。だが、美少女がいくら激しく暴れても、鎖がカチャカチャと鳴るだけで、責めから逃れることは1mmたりとてできない。
「貴様を殺すことなどいつでもできる。生身の姿でも、サクラの姿でも、な。だが蛆虫一匹始末したところで、このオレの屈辱は晴れなどしない。ただ殺すだけでは」
円形の電極をグリグリと押し付ける悪鬼の眉が引き攣る。
すでに1時間以上、敗北の天使を嬲り続けているというのに、久慈の内に溜まったヘドロは一向に減りはしなかった。桃子を責め続けながら、名家に生まれて以来、望むもののほとんどを手に入れてきた御曹司は、まるで別の存在を思い返していたのだ。
魂がすくむほどの恐怖と、プライドが砕け散るほどの敗北をもたらした男、工藤吼介。
脳裏を大きく占拠するのは、格闘専用に鍛え上げられた鋼の肉体と、轟音を伴って迫る巨大な拳。あの日、肉体を破壊されるとともに、柳生新陰流暗殺剣を継承する男のなかで、なにかが砕かれていた。膨れ上がった憎悪と、その裏に隠れる恐怖。野心に燃える悪鬼が再び進むためには、あの悪夢を振り払わねばならない・・・消えることない感情を紛らすように、久慈は目の前にぶら下がる聖天使をメチャメチャに虐げる。
「泣き叫べッ、クズ虫がッッ!! 許しを請い、忠誠を誓い、身も心もひれ伏せ! 貴様を豚のように殺して初めて、オレは復活することができるのだ!!」
敗北で受けた屈辱、恐怖・・・
傷を癒すために必要なのは、徹底的な蹂躙の末の勝利。
己が闇に選ばれた覇王であることを証明するために、完膚なきまで敗れ去った事実がなにかの間違いであったと証明するために、久慈は光の戦士を徹底的な勝利のうえでグチャグチャに葬るしかないと信じているのだ。
桃子はいわば、魔人メフェレス真の復活のための、生贄として選ばれたのであった。
「なかなかに頑張るな。しかしボロボロのその身体で、いつまで我慢できるものか。素直に屈すれば、少しはラクに殺してやるぞ?」
電極が柔らかな胸から離れる。汗でヌラヌラと濡れ光った美少女は、口を閉ざしたまま鋭い視線でかつての恋人を睨む。
容赦ない電流刑の追撃が、今度は動けない少女の脇腹を挟み込んだ。
「はくううううううッッッ―――ッッッ?!!!」
ボロボロの美少女が、さらなる苦しみに悶え叫ぶ。
白とピンクのTシャツは、右胸と腹部がバーナーででも焼かれたように溶け破れている。ベージュのブラで隠されたBカップのお椀も、お臍周りの白い肌も、当然のように火傷で赤く爛れていた。サクラにトドメを刺したメフェレスの暗黒弾の影響は、生身の肉体にも強く残ってしまっていたのだ。半袖から覗く腕にも、デニムのミニから生えた足にも、真珠の輝きを自然発光する美貌にも、あちこちに細かい傷を刻んだ敗北の美天使が鎖で吊り下げられた姿は、無惨という言葉以外に言い表しようがなかった。
「さすがは地域でもナンバー1の呼び声高い美少女・桜宮桃子くんです。鎖で吊るされた姿はなんとも美しい。食い込む鎖の間で浮き上がったこぶりな乳房がまたなんとも倒錯的で・・・」
電撃を流される激痛に絶叫する桃子の右胸を、傍らに立つ田所教諭が優しく揉む。美少女が反抗できないのをいいことに、変態中年は時間をかけてマシュマロのような感触を楽しんでいる。
「くううッッ?!! ・・・・・・さッ、触らないでェェッッ・・・!!」
「無駄無駄、ムダです。反抗しようと懇願しようと全てはムダ。今のあなたをどうするのも我々次第。君はもはや美しき肉奴隷に過ぎないのですよ。手垢のついていないそのカラダ、じっくりと味わってさしあげます」
痛みを主とする久慈の攻めと、快楽を主とする田所の責め・・・繰り返される2種類の拷問に、エスパー少女は限界を迎えつつあった。
『エデン』を宿した超戦士とはいえ、もともとの桃子の身体能力はごく平均的な少女のものだ。飛躍的に耐久力も体力も高まってはいるが、他の守護少女たちと比べれば明らかに劣る。女性らしい柔らかなラインを保ったままの桃子の肢体に、久慈は覚醒してからずっと容赦ない仕打ちを浴びせていた。殴り、蹴り、木刀で突き・・・そして今は、持ち込んだ機械による電流刑を続けている。
その機械はカイロプラクティックなどにある低周波マッサージ器を改良したものだった。デスクトップ型パソコン並の大きさの機器から2本のコードが伸び、その先は掌大の円形の電極に繋がっている。二つの電極で挟まれたものには、火花が飛び散るほどの高圧電流が流れるというシロモノであった。
久慈が特製で作らせたこの拷問電極器の注目すべきは、狙った部位のみに電流を流せるところにあった。心臓に負荷を与えずとも拷問可能になったことで、今までならショック死させてしまうレベルの強力な電撃を使うことができるようになったのだ。また部分的に痛みを与えることで、より神経を過敏にさせ、痛覚をハッキリと認識させる効果も持っていた。
二の腕や太腿、ふくらはぎなど・・・四肢を順番に焼かれ、ついに責めは身体の中央にまで移ってきていた。終わることない苦痛に桃子の全身にはビッショリと汗が噴き出している。可憐な鈴のような悲鳴が、特設されたこの拷問場に響き続けていた。
一方で、美少女をこよなく愛する変態教師は、極上の獲物を前にして沸騰する喜びを抑え切れなかった。ハイエナのように隙を見ては、電流地獄に悶える桃子の若い肢体を貪る。すりすりと摩擦し、優しく揉みあげ・・・拷問というより完全な趣味による愛撫であったが、衰弱しきった桃子には、痛み一辺倒の責め以上に効いた。
"いた・・・い・・・苦しい・・・よォ・・・・・・も・・・もォ・・・ダ、ダメ・・・・・・あくうッッ?! ひゃッ、ひゃめェ・・・離し・・・胸から・・・手を離してェェ・・・"
「どうだ、桃子? 苦しいか? 泣き叫んで、オレに助けを請うがいい!」
三日月に笑う久慈に、綺麗を体現した美少女はフルフルと首を横に振る。
その途端、ふたつの電極は両肩に押し当てられ、桃子の肩から首にかけて高圧電流がスパークする。
「アアアッッ?!! アアアァァッッ―――ッッッ!!!」
「愚かな女め! 貴様が助かる可能性は万に一つもない。もはや醜態を晒し、惨めな死を迎える以外ないのだ! とっととオレに服従しろ。そうすればラクに殺してやろう」
電極が肩から離れる。ガクリと前のめりに倒れかけた桃子の身体をまきついた鎖が支える。荒い息を吐き出す赤い唇から透明な涎が落ちていく。
「自慢の超能力も、ボロボロのその身体では発動できまい。助けを待っても無駄だ。奴らがここを見つけられるはずはないし、たとえ見つけたとしても我ら相手に何ができる? 貴様の処刑を止めることなどできん」
「ハァッ・・・ハァッ・・・うッ・・・ううッ・・・」
「もうお前はオシマイだ、桃子! 貴様は今日、この場で、苦しみ抜いた末に死ぬのだ!」
「うああああああッッッ~~~ッッッ!!!」
背中と腹部に当てられた電極が、腹腔に収まった内臓に強烈な電流を流し込む。内部で弾ける激痛に失神しようにも許されない桃子。爛れた腹部がバチバチと音をあげ、腹の底から爆破されるような痛撃に、愛らしい声を枯らして叫ぶ。
"アアアッッ?!! で、電気がッ!! 電気がァァッ~~ッッ!! お腹のなかでバチバチとォォッ!! あ、あたし破裂しちゃううぅぅッッ―――ッッッ!!!"
「はぎゅうううッッ―――ッッッ!!! お、お腹がァァァッッ~~ッッ!! お腹が破れちゃうぅぅぅッッッ――――ッッッ!!!! わああああああッッッ~~~ッッ!!!」
「ワハハハハ、いい声だ! 苦しいか?! 苦しいかッ、桃子ッ!!」
「くッ、苦しいィィィ~~~~~ッッッ!!!! も、もうッ・・・もおォォッ――ッッ!!」
緊縛の美少女アイドルがガチャガチャと鎖を鳴らす。浮き出る汗と滲む涙が、チャーミングこのうえない容姿をビチャビチャに濡らす。食い縛る白い歯の間からは、ゴボゴボと泡が音を立て始めている。執拗に焼かれる腹部からうっすらと煙が昇る。
「オレに許しを請え! 屈服しろ! そうすれば今すぐに首を刎ねてやる」
グリグリと電極を、少女の白いお腹でこね回す。流れる高圧電流が微妙に角度を変え、細いウエストに詰まった内臓を万遍なく内側から破壊していく。
「きゃうううううッッッ――――ッッッ!!!! や、やめェェェッッ・・・もうッ、やめへェェェッッ・・・!!」
戦闘でのダメージと拷問によって、桃子の体力も精神力も、いや生命力自体が枯渇寸前まで奪われていた。鎖などなくとも、超能力どころか指一本満足に動かせないであろう。自力でこの窮地を脱出するなど、どう都合よく考えても可能性はゼロだった。
となれば桃子が生き伸びるためには、仲間たちの救出を待つしかない。しかし、いくら五十嵐家が政府のバックアップを受け、久慈が保有する私有地を把握できていても、この地域一帯、無数にある敷地のなかから、拷問の行われている場所を特定するのは困難極まりなかった。
しかも先走った人間が変身前の侵略者を襲う愚がないよう、ミュータントの正体は防衛庁の幹部でも知らされていない。また特殊訓練を受けたレンジャー部隊であっても、「エデン」の持ち主と接触するのは自殺行為というもの。敵の手に落ちた守護天使を救出に向かえるのは、同じ聖なる少女たちだけというのが現状なのだ。
仮に拷問場所を見つけられたとしても、そこには久慈を初めとした悪の中枢たちが待っている。百戦錬磨の悪魔どもを出し抜いて桃子を救出するのは、現実問題として不可能に近い。久慈が桃子を生かしているのは、苦しめいたぶるためであるが、守護天使の抹殺が最優先事項であることを忘れたわけではない。いざ何かがあったら、躊躇なく虜囚を葬る心構えはしっかりとできているのだ。もし守護少女たちがこの場に向かってくるのがわかったら、その瞬間に桃子をバラバラに切り刻むつもりであった。
つまり、桃子を救うためには、久慈たちに気付かれることなくこの拷問場所を見つけ、接近し、複数の敵全員を出し抜かなければならないのだ。それがいかに困難であるかは・・・いや、事実上不可能であるかは桃子自身にもよくわかっている。
救出を待とうにも、あまりに厳しい現実。
しかも、桃子が連れられてきたこの場所は、実は久慈の所有地のひとつなどではなかった。
"ダメェ・・・ダメェェェ~~・・・あ、あたし・・・もォ・・・耐え・・・らんな・・・"
雪肌を焼く電磁の嵐と、執拗な中年男の愛撫。"普通の少女"が耐える限界はとうの昔に越えていた。桃子の内部でなにかが決壊しようとしたその時、アイドル天使を本当の地獄に堕とす事態はやってきた。
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