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「第九話 夕子抹殺 ~復讐の機龍~ 」
21章
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汗と己の愛液に濡れ光り、青臭い汚臭を放つ白濁液をこびりつかせたツインテールの少女が、クズ鉄の山に囲まれた平地で転がっている。
大の字で仰向けに横たわる少女からは、酸っぱさと生臭さの混じった異臭が漂う。端整な顔にもスタイルのいい肢体にも、たっぷりとかけられた白い汚液。陵辱の宴に捧げられた美しき天使は、ピクピクと震えながら無惨な姿を晒していた。
「結局、最後まで詫び入れなかったねェェェ~・・・」
変わり果てた因縁の敵を見下ろしながら、豹柄のTシャツに身を包んだ金髪少女は腕組みをして傍らに立つ。神崎ちゆりの宿願であった天才少女の降服宣言は、ついに搾り取ることは叶わなかったのだ。だが、そのアイラインの濃い丸い瞳に浮かぶのは、紛れもない愉悦の光。
「まあ、いいわァ~。スクラップになったクズ鉄にはァ、もう興味なぁ~~し!」
野生並みの鋭い嗅覚で、闇世界の歌姫は真実を嗅ぎ取っていた。
夕子は屈服しなかったのではない。屈服の台詞すら吐けなかったのだ。
実際にはどうであったか、夕子が最後までちゆりに許しを請わなかったのは意地が故か満足に喋れぬほど疲弊していただけか、それはわからない。だがもはや、それを考えることすら無意味であった。
心ごと粉砕された負け犬の機械女は、今こうして足元に平伏しているのだから。
「決ッッッ・・・ちゃァァ~~くッ!!」
振り上げた「闇豹」の足が、夕子の腹部を潰す勢いで踏みつける。
ブッシュウウウウウウウウッッッ~~・・・・ッッッ!!!
口から、鼻から、股間から、体内に溜め込んだ悪の精液を派手に逆流噴射させて、大量の腐臭液を敗北少女がぶちまける。
白濁の粘汁を身体中の穴という穴から、噴水のごとく飛び散らす可憐で無惨な赤髪の美少女。白い汚沼のなかに、ツインテールの少女戦士はピクリとも動くことなく、穢され破壊された小さな肢体を沈ませていった・・・。
「有栖川さん、あれは・・・?!」
アニメにでてきそうな愛らしい声が、不意に逼迫した調子を含む。
廃工場の一角。鉄屑が山を連ねるゴミ捨て場らしき場所の入り口に、スラリとした白い影がふたつ舞い降りる。
西条エリとユリ、双子の柔術姉妹は、満月の光に浮かぶ無人の埋立地に、そのモデルのようなスレンダーな肢体を現した。破綻した未来都市には似合わぬ清楚な女子高生ふたり。身体のいたるところに包帯を巻いた双子の姉妹は、負傷を感じさせぬ身のこなしで空き地の中央に横たわる物影に駆け寄っていく。
「うッッ?!!」
甘酸っぱさと生臭さと・・・充満する腐臭のなかで、白百合のごとき可憐な双子は、汚液で蠢く凄惨な物体を眼にした。
「ひッ・・・ひど・・・い・・・・・・」
思わず口元に寄せたおさげの少女の両手が、怒りとも畏れとも判別できぬ感情にブルブルと震える。反射的に妹をかばうようにして前に立ったセミロングの姉の胸にも、ヘドロのようなどす黒い悪念が業火のように沸き立っていた。丸い瞳をさらに大きく見開いた双子の額を、冷たい汗が滑り落ちていく。
宇宙生物との融合を果たし、人類の未来を背負う闘いに身を投じて以来、悪夢のような辛い目にも、吐き気を催すような悪党にもあってきた。しかし、これほどまでの・・・かつてここまで酷い地獄絵図を見たことがあっただろうか?
「どうした?」
やや遅れてゴミ捨て場に現れた中年男が、固まった姉妹の背後から声を掛ける。白のワイシャツと濃紺のスラックスを汗で濡らし、自慢のオールバックをほつれさせた鷹のごとき男。有栖川邦彦のこんな姿を見たら、彼を知るものなら驚愕の言葉を放つだろう。「焦り」とはもっとも縁遠い天才科学者は、息を切らせながら人形のような姉妹の横を通り過ぎようとする。
「み・・・見ちゃ・・・ダメです!」
愛らしい双子の尋常ならざる様子が、邦彦に全てを教えていた。
慌てて止めようとする西条エリの華奢な肢体を、邦彦は激しく突き飛ばしていた。少女の配慮が父親の必死さに勝てるわけもなく。泣きそうな表情を浮かべた姉妹をすり抜け、眼光鋭い男は白い沼で蠢く物体に駆け寄る。
青き月光のもとで、霧澤夕子は全身を精液と汗にまみれて転がっていた。
虚無の光をたたえた垂れがちな瞳が、宙空をさまよっている。白い肌にも赤い髪にもこびりついたたんぱく質の塊。ビリビリに破れたブラウスには血が滲み、ローションの海にでも浸かっていたかのように全身がヌラヌラと月の光を照り返す。半開きの唇からこぼれる白濁の残滓が、いまだにゴボリゴボリと吐き出され、パカリと開いた背中の機械部分から引きずり出された無数のコードや導線が網の目のように広がっている。
これが、敗れ去った少女戦士の悲惨な末路―――
クールで聡明な天才少女が、破壊され陵辱され尽くして、壊れたオモチャのように廃工場に捨てられている。涙を誘わずにいられない光景だが、悪魔どもの仕打ちはそれだけに留まらなかった。
夕子の股間部分、ヴーン、ヴーンと不気味に唸る鋼鉄製の極太の棒が、桃色の花弁を割って少女の秘所に埋まっている。ゴツゴツと瘤のついた黒色の棒は、ゆっくりと回転しながら、夕子の内部への出入りをブチュブチュという汁気のある音とともに繰り返している。
漆黒のマシンによる恥辱責め。
さんざん嬌声を喚き散らし、愛液を滝のように噴出した少女の肢体を、悪魔の置き土産はいまだに虐め続けていたのだ。あらゆる液体を搾り取られた夕子の身体は、永劫に続く悦虐にビクビクと痙攣するのみ。残り少ない夕子の体力を、強制的な昂ぶりが理性を破壊しながらもぎとっていく・・・
死ぬ。このままでは、夕子は死ぬ。
快楽に貫かれながら、人間の尊厳を踏み潰されるような殺され方で。戦士としてトドメを刺さず、色欲に狂った雌獣としての死を、豹柄の悪女は下すつもりなのか。快感に身を震わせるたびに、惨死への階段を一歩一歩スクラップ少女は昇っていく。
「ゆ・・・夕子さん・・・ッッ!!」
強いショックで吹き飛んでいた思考が、ようやく現実へと舞い戻り・・・思い出したように慌てて駆け寄ったユリが、股間に埋まったマシンのディルドゥを両手で掴む。ヌルリとした感触。か細い腕に力をこめて、強引に鋼鉄の棒を引き抜こうとする。
ピピピピピ・・・
甲高いアラームが機械の棒から放たれる。不意を突かれたユリの手が、潜んだ危険を察して引く力を弱めた。
「・・・やめなさい」
どこか遠くで響くような、感情を押し殺した声で有栖川邦彦は呟いた。
ダンディーを絵に描いたような中年男は、静かな視線で陵辱に散った我が娘を見下ろしていた。精悍な顔からはなんの感情も窺えない。ただ静かに、優しくすらある眼でゴミのように捨てられている少女を見詰め続けている。
こんな哀しい父娘の対面が、世界のどこにあるのだろう?
ユリの長く白い指が、唸り続ける鉄棒から離れる。気圧されたように、佇む父と転がる娘との間から、おさげ髪の少女は引き下がった。
「大層な・・・姿になったな、夕子」
淡々とした口調で天才科学者はひとり話す。
腰を下ろし、娘の傍らに膝をついた男は、股間で蠢く鉄棒を一通り見る。ヴーン、ヴーンと震えるたびに、夕子の小さな身体もピクピクと引き攣った。悦虐の棒に、もはや抗うことすらできないのだろう。汚濁に濡れた娘の上半身を、父は力強く抱き起こす。
「どうやら、無理に引き抜こうとすると爆発する仕掛けのようだ。これはヤツらからの、私への挑戦ということらしい」
復讐機械・桐生の恐るべき策略―――
放っておけば、間もなく夕子は死ぬ。絶頂の果てに。体力を枯らし尽くして。助けたければ、桐生が造ったこの最高傑作<バイブローター仕様の爆弾>を解体しなければならない。
しかし、解体の手順を間違えれば当然として、タイムオーバーでも陵辱の鉄棒は爆発するように設計されていた。時間、それはつまり、夕子が死ぬまでの時間。断続する快感についに夕子の体力が切れたとき、事切れた肉体に反応して鋼鉄のディルドゥは周囲15mを炎に包む大爆発を起こすようになっているのだ。
惨敗の少女戦士を救うには、絶頂を迎えるまでの短時間で機械人間が造った最高難易の爆弾を処理するしかない。だが爆弾の解体に失敗した場合・・・それは即ち夕子ともども解体に挑戦した者の死も意味することになる。
夕子を見捨てれば、無論邦彦は命を落とすことはない。しかし桐生は、冷酷と噂されるこの男が、必ずや娘を救おうとすると確信していた。陵辱の海に沈んだ娘を見せつけられ、しかもその娘を助けようとしてともに爆死する・・・憎き男の死に相応しいシナリオを、暗殺マシンは用意したのだ。
天才の自負を持つ邦彦が、躊躇なくこの挑戦を受け入れるのは決定事項とも言えた。これはいわば、桐生と邦彦の科学者としての頭脳の闘い。己の肉体を実験材料に差し出した狂科学者に遅れを取ることなど、この国最高レベルの研究者である邦彦がみじんも思うわけはない。
どのみち娘を助けたければ選択肢は他にはないのだ。
だがこの爆弾は・・・どんな優秀な科学者が取り組もうと、解体にかかる時間は2時間以上。
そして、官能の虜囚と化して嬲られ続けた夕子が昇天するには・・・10分もあれば十分。
一見科学者のプライドを賭けた闘いは、内実は爆発確実な暗黒の罠であった。受けてはならない。この挑戦は受けてはならないのだ。瀕死の夕子を見捨てて、ひとりでも生き残ることが、この場での最良の方法なのだ・・・
パクパクと、汚濁に沈んだ少女の桃色の唇が動く。
去り際、悪鬼どもが笑いながら話した計略を、混濁した意識のなかで夕子は聞き分けていた。性器を抉る鋼鉄の爆弾、魔悦の刺激を送り続ける悪魔の器具は、有栖川邦彦といえど手に負えぬ代物。無謀に挑戦してくる自惚れ男を、娘ともども爆破するのが敵の狙い。
"に・・・げ・・・て・・・私・・・・・・を・・・おい・・・て・・・・・・"
「・・・・・・お・・・・・・」
消え入るような声が、夕子の唇を割ってでる。
少女はわかっていた。爆弾の解体は無理。もう私は、助からない。せめて。せめて、あなただけは。あなただけは、生きて欲しい。生き残って欲しい。
「・・・・・・と・・・う・・・・・・さ・・・ん・・・・・・」
お父さん、あなただけは、生きてください―――
ガバリと夕子の小さな身体を、父の広い胸が力強く抱きしめる。
「夕子、お前を死なせはしない」
逞しい腕のなかで。温かい胸のなかで。力いっぱい抱きしめられて。
すうっと透明な雫が、端整な少女の瞳からこぼれる。
「お前は私の、生きる全てなのだから」
枯れたと思っていた体液が涙となって、少女の瞳からとめどなく溢れ続けた。
双子姉妹の涙の向こう、冷酷と呼ばれる父と娘を、幻想的な青き月の光が優しく包み込む。
遠巻く夜風が、父娘を嘲笑うがごとく、装甲天使惨敗の埋立地を駆け抜けていった。
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