ファントムガール ~白銀の守護女神~

草宗

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「第七話 七菜江死闘 ~重爆の肉弾~」

17章

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 “・・・も・・・う・・・・・・おなか・・・が・・・・・・・ぐちゃ・・・ぐちゃ・・・・・・・あ・・・たし・・・・・・・・もう・・・・・・ダメ・・・・・・・・・”
 
 グルリと白目を剥いて、アイドル顔負けの美少女が失神する。
 削られた肌を叩く鋭い痛み、刻まれた筋繊維を抉る熱い痛み、砕かれた肋骨に響く痺れる痛み、潰された内臓を穿つ重い痛み・・・様々な種類の激痛が一体となって、虜囚の少女に襲いかかる。永遠に続くかと思われた壮絶な苦痛の連続に、ついに七菜江は気絶してしまったのだ。
 香が掴んだ髪を放す。
 小さな顔が、ガクンと前のめりに倒れる。
 ポト。ポトポトポト・・・
 開きっぱなしになった唇を伝い、緋色の水滴が七菜江の足元に血溜まりを作っていく。
 
 「バカな女。素直に謝ったら、早く楽にしてあげるのに」
 
 大の字に磔られた敗北者に、香は嘲りと憎悪を含んだ口調で吐き捨てる。
 元柔道部の倉田と元野球部のコージが、消防車が使うような太いホースをふたつ、持ってくる。それは火災時に使うためのものだった。プールの水を発射する消火用のホース。あとは先についたレバーを軽くひねるだけで、凄まじい勢いで放水するそれを、ニヤニヤと不敵に笑い続ける肉弾姉妹に手渡す。
 
 「ぶしゅしゅしゅしゅ・・・フジキナナエ、もうお前の身体はボロボロだ」
 
 「ふしゅしゅしゅしゅ・・・今度はその生意気な心を壊してやるよ」
 
 カズマイヤー姉妹の丸っこい拳が、一斉にホースのレバーを全開にする。
 鉄砲水のように激しく噴き出された冷水が、一直線に磔少女の肢体に叩きつけられる。二本の液体の砲撃は、セーラー服を盛り上げた胸のふたつの膨らみを抉り撃つ。
 
 轟音。
 水流が出しているとは思えぬ、凄まじい轟音が夜のプールに響いていく。まるでレーザービームの大砲。野球の硬球をぶつけられているかのような衝撃が、七菜江の胸骨を軋ませ、肺を圧迫する。
 
 「へぐえッッ!! ぐぶッッ!! はぐああッッ!!」
 
 人の手には余りそうな、豊かな胸の球体が水流に押し潰されグニャグニャと変形する。跳ね返った飛沫が霧となってたちこめる。セーラー服の白いシャツが透け、柔肉を包んだ純白のブラジャーとその下の突起とを浮かび上がらせる。うねくる水撃は、張り出した果実を弄ぶようにかき乱す。
 巨肉姉妹の重爆により、散々圧殺処断され続けた七菜江にとって、水流の圧力によるボディーブローは確かに効いた。だが、処刑者たちの真意が圧迫の苦痛にはないことを、美肉の持ち主はすぐに悟ることになる。
 
 こねまわされる。
 柔らかく、張りのある胸の双房が、怒涛となって撃ち込まれる水流におもちゃのようにこねまわされる。
 制服に浮かぶ小さな頂点。七菜江の肉体の中で、もっとも敏感な箇所のひとつが、弾き飛ばされんばかりにぐるぐると回転し、踊り狂う。
 ランダムな水の威力が、叩きつける放射のパワーバランスを一瞬ごとに変え、絶妙な緩急がついた刺激の波を、少女の下腹部へ送りつづけていた。しかもびっしょりと濡れて、桃色の乳首を包み込むように纏わりついたセーラーが、くすぐったく痺れるようなその刺激を倍化させている。
 
 それは水の愛撫だった。
 二本のホースが放射する激しい冷水の波動、少女の柔肉をこね潰す水流のキャノンが生み出すのは、死に体の少女の奥底に眠る、官能の漣だったのだ。
 
 「あくぅッ!・・・・・・ふへあッッ!・・・・・・うくああぁぁッッ・・・!」
 
 苦悶に歪んでいた美少女のマスクに、恍惚の影がよぎる。食い縛った白い歯の狭間から漏れるのは、苦痛の呻きとは別種のモノになりつつあった。
 
 「アーッハッハッハッ! いいねぇ、七菜江! あんたの弱点その5。女としての経験に乏しく、性攻撃に脆い。痛みへの耐性は相当あるみたいだけど、こういうのはてんでダメみたいだね」
 
 「くううぅッ・・・・・・ひゃはあッッ!・・・・・・あふッ! ふああぁぁッ!・・・」
 
 「サリー、ビッキー、もっと身体のすみずみまで嬲ってやるんだ。女の身体っていうのは、ずっと一部分を責められるより感じちまうものなのさ」
 
 青い肢体の全身を、淫靡な使命にうねくる水蛇が抉り撃つ。
 大の字に磔された、はちきれそうな若い美肉を、つま先から掌まで存分に貪り穿つ。首から下の、ありとあらゆる部分を七菜江はこねまわされる。アットランダムに襲いくる水の愛撫。いつ、どの部分に衝撃が加えられるかわからない、ある種の焦らしは過剰に少女の感度を高めた。緊張していれば拍子抜けするような刺激しか来ず、気を緩めれば股間や乳房など、敏感な場所を責められる。変化に富んだ水責めは、あどけなさの残る少女の精神的なガードを呆気なく崩壊させた。間を置いて浴びせられる胸の突起への蹂躙は、香の言葉通り、一点集中攻撃以上の快感を七菜江に引き起こさせた。ぴったり吸いつく制服が乙女のピチピチの柔肌を官能のセンサーに変え、濡れそぼる全身が、舐め尽くされたかのような錯覚を呼び起こす。
 
 「あふッッ・・・・・・へああッッ・・・・・・んあああッッ~~!」
 
 積み重なった拷問の呵責に、半分意識を吹き飛ばされた被虐の天使は、本能が命じるままに喘ぎ出していた。悪辣な敵の思うがままにされてしまう悔しさを、過酷な陵辱が遥かに凌駕していく。
 食い縛っていた口元が緩み、半開きになった唇から透明な涎がとろとろと溢れる。蕩けそうな表情を浮かべた瞬間、可憐さに満ちた七菜江の顔面に、水流の大砲が叩きつけられる。
 
 「がふッッ!! ごぼッ! ごぼぼぼッッ!!」
 
 肺にまで到達する水の勢いに、咽かえる磔少女。溺れる苦しみに、咳込む身体が激しく捻れ、手首足首に絡みついた鎖をガチャガチャと鳴らす。拘束された肢体は、窒息の苦しみにも、虚しく悶えることしかできない。
 
 「げほおッッ!! ゴボオッッ!! グハッッ! グボボボボッッ!!」
 
 凄まじい水の威力に、呼吸を封じられる七菜江。二条の水流は愛らしい顔から一時たりとて外されず、放水のヴェールがショートカットの下を完全に覆い尽くす。咽かえり、肺に入った水を吐き出そうとする少女に、さらに強引に水を送り込む拷問。壮絶な水責めに、ビクビクと痙攣する七菜江の心に、くっきりと死の苦痛が刻み込まれていく。
 
 ようやく放射が顔から離される。
 吐きそうな勢いで、激しく咳込む囚われの超少女。痙攣するほどの苦しさに、美少女の心の鎧は剥ぎ取られてしまっていた。我慢し、抵抗しようとする意地を吹き飛ばされ、無防備に明かされた青い果実に、再び水流の愛撫が噴射される。
 
 「ふべええッッ~~・・・んはああッッ~~~・・・・・・ふはああッッ~~・・・!!」
 
 壊れたオモチャのように。
 呆けた表情を浮かべたまま、ぐったりと首を傾げて金網に張りついた美少女が、堕落の喘ぎを漏らし続ける。様々な体液がいろいろな場所から沁みだし、びしょ濡れの超少女の足元にポトポトと水溜りをつくっていく。この永遠に続く拷問は、もはや“遊び”の領域に突入しようとしていた。巨大風船の姿をした姉妹が、軽い気持ちで放つ水流の前に、正義の少女はいとも容易く喘がされてしまっている。
 
 レバーを締める音が、半失神に追い込まれた磔少女の耳に届いてくる。
 胸の乳房を散々こね回した放射は、ようやく止まっていた。しかし、次なる悦楽の波動が、すかさず身動きできぬ天使の延髄に送り込まれる。
 白いシャツに浮びあがったふたつの突起。小豆ほどの大きさのそれを、カズマイヤー姉妹がひとつづつ口に含む。
 冷たい水に浸された乳首を、生温かい粘液が包み込む。敏感な突起を痺れさす甘い官能の疼き。下腹部を直撃する桃色の電撃に、七菜江の唇からたまらず悲鳴が迸る。
 
 「うはあッッ?! ふわああああッッ~~~!!」
 
 熱い舌先で、豊満な膨らみの頂点がコロコロと転がされる。纏いつく粘液の微妙な震動。醜悪な姉妹の、見た目に反した舌の柔らかさと優しい愛撫に、固くなった蕾がビリビリと震える。ゾクゾクと背筋を駆ける官能の電流に、身も蓋もなく少女は絶叫する。
 
 「いやあああああッッ~~~ッッ!! んはあああッッッ――ッッ!!! んあッ! んあああああッッッ―――ッッ!!!」
 
 陵辱の恐怖と悪寒が、華凛な少女を叫ばせる。誰もがうらやむ豊満な美肉の持ち主は、一方で穢れを知らない純粋な少女なのだ。卑劣な罠に嵌め、凄惨な蹂躙を加える悪敵に、いいように遊ばれる屈辱と、快感の悦び。堕ちていく己の不甲斐なさに、七菜江は泣き叫ぶしかできない。
 チュプッッ・・・
 乳首を舐めまわしていた口が、ふたつ同時に離れる。制服の突起と分厚い唇の間に涎の橋が、キラキラと濡れ光る。ほっとしたのも束の間、メロンのような豊かなバストを、双子の丸い指が、鷲掴みにして握り潰す。
 
 「いぎゃあああああああッッッ――――ッッッ!!!」
 
 壮絶な激痛に、またもや七菜江は絶叫した。
 たっぷりと重みのある乳房が、破裂せんばかりの勢いで揉みしだかれる。肉を潰され、千切り取られそうな痛みに、ブンブンとかぶりを振って悶える聖少女。気絶しそうな激痛にまざる、かすかな桃色の疼きが、真っ直ぐな少女に混乱を引き起こす。七菜江の張り出したバストを揉み潰しながら、先端の膨らみをカズマイヤー姉妹は再び口に含む。激痛と官能の二重奏を津波のように浴びせられ、七菜江の心は狂わんばかりの刺激に飲み込まれていく。
 
 「うあああああッッ~~~ッッ!!! はふうううッッッ~~~ッッ!!! あうッッ、うああああッッ~~~ッッ!!!」
 
 ズブリ
 
 開いた股間の中央に突き刺さる指。
 憎き復讐の相手の無惨な姿に、気違いじみた笑顔を刻んだ柴崎香が、七菜江の秘裂に二本の指を深く刺し入れていた。そのままぐりぐりと、熱く潤んだ洞穴を、掻き回す。
 
 「アハッ、アーッハッハッハッ! 感じてる! 感じちゃってるのね、七菜江! どうよ、気分は? 憎い敵にイカされる気分はどうなのよォッ?!」
 
 「ふへううッッ!! ひゃうッッ! ふひゃああッッ~~~ッッ!!」
 
 紺青のプリーツスカートをめくりあげ、真っ白な下着を露わにして、香は聖少女の股間に吸いつく。秘裂の上、最も敏感な突起を探り当てた復讐者は、少女の固い蕾を丹念に舐め回し始める。
 胸と股間、3つの敏感な蕾を一度に舐め上げられ、尚且つ柔肉と蜜壷を同時に責められる複合愛撫に、もはや七菜江は嬌声をあげるのみ。背中を反らせながら、天空を仰いだ童顔は桜色に上気し、潤んだ唇からは、とめどなく透明な涎が垂れ流れる。ピクピクと痙攣する身体は、愉悦の波状攻撃によって、少女戦士が官能の渦に溺れていくことを教えている。
 
 “・・・あ・・たし・・・・・・・・狂う・・・・・・・狂い・・・・死ぬ・・・・・・・・・”
 
 劣情の波にさらわれ、虚無の世界に落ちようとする七菜江を、香は許しはしなかった。
 ビッキーから受け取った消火用のホースを、真下から股間にめがけるや、弩流となった噴水のキャノンを、少女の秘裂に撃ちつける。
 
 ドドドドドドドドドドドドド!!!
 
 「きゃああああああああッッッ――――ッッッ!!!!」
 
 甲高い絶叫が、プールの水面を駆け走る。
 溢れ出した蜜を吹き飛ばす、水流の陵辱。
 脳天まで響く重い衝撃に、健気な天使の意識が刈り取られる。
 ガクガクガク・・・
 愛らしいマスクを数度、縦に痙攣させながら、七菜江は再び深い闇の中に堕ちていった。
 
 「アーッハッハッハッハッ!! 苦しめ! もっと苦しませてやるよ、七菜江! 苦しんで苦しんで、苦しみ抜いた挙句に死んでいくがいいよッ!」
 
 高らかな哄笑が轟くプールサイド。金網に磔にされた少女に、スキンヘッドの大男と金髪の男とが近寄る。
 太陽のように明るい少女が、ポトポトと水滴を垂らしながら、執拗な陵辱に沈んだ姿からは、普段の彼女らしからぬ、淫猥なエロスが漂ってくる。四肢を縛りつけた鎖に全体重を預けた少女は、ピクリとも動かず、白い顔を晒している。
 元柔道部の倉田と元野球部のコージが、超少女を捕らえた枷を外す。
 
 ドシャリ
 
 丸い両膝がすとんと落下する。
 優雅な曲線を描いた美肉は、ゆっくりと前のめりに倒れていき、凄惨な蹂躙と残酷な陵辱の果てに気絶した少女戦士は、うつ伏せにプールサイドに沈んで、固いコンクリートにキスをした。
 全身を濡らした水と体液が、じっとりと床に広がっていく。
 
 「アーッハッハッハッハッ!! なにが正義の味方だ、情けない! まだまだ許さないからねぇ、七菜江。たっぷりと地獄の苦しみを味わってから死んでもらうよ!」
 
 美貌の女子高生とふたりの醜悪な肉弾姉妹、そして3人の凶悪な不良学生。六人の嗜虐者に囲まれ、嘲笑を浴びせられるなか、聖少女は敗北した肢体を横臥させている。勝者と敗者のあまりに残酷なコントラストが、夜のプールに描かれる。
 
 “・・・・・・せ・・・・・・ん・・・・・・・・・ぱ・・・・・・い・・・・・・・”
 
 「ぶしゅしゅしゅしゅ・・・こいつはもう終わりだね。これからどうする?」
 
 「ふしゅしゅしゅしゅ・・・全身の骨でも砕いちゃう?」
 
 「フフフ・・・もっと面白い趣向があるわ。この女を、もっとも苦しませる方法が」
 
 “・・・・・・せ・・・ん・・・・・・・・・ぱ・・・い・・・・・・”
 
 それは夢か、死にゆく者が見るという走馬灯か。
 怨念に燃える女たちが、ドス黒い処刑の手段を話し合うなか、途絶えたはずの意識で、七菜江はある記憶を蘇らせていた。
 新必殺技を生み出すため、里美の命令で工藤吼介のもと、格闘の特訓を受けていたあのころ。
 
 『もし自分より強い相手とか、多数に襲われたりした場合、七菜江ならどうする?』
 
 稽古が終わり、ふたりで道場の板間に座り込んでいた時、唐突といった感じで格闘技では師匠にあたる筋肉獣が聞いた。
 しばらくはう~んと唸って悩んでいたアスリート少女は、やがてちょこんと舌をだすと、照れくさそうに笑った。
 
 『わかんない。とりあえず、負けてもいいから全力で闘う、かなぁ』
 
 『ったく、お前らしいな』
 
 呆れた口調の格闘士だが、その視線はどことなく嬉しそうだった。
 
 『そういうときは、逃げろ。敵わないと思った相手とは闘わずに、とにかく逃げるんだ』
 
 『そうなんですか? え~、なんかヤだなぁ~』
 
 『格闘技ってのは、身を守るのが基本なんだ。お前みたいな考えしてたら、命がいくつあっても足りねえぞ。嫌でもいいから、とにかく逃げるんだ。わかったか?』
 
 『は~い』
 
 “・・・せ・・・ん・・・ぱ・・・い・・・・・・”
 
 無邪気に笑っていた弾ける笑顔が消え、陰惨な夜のプールへと意識は連れ戻される。
 冷たいコンクリートの床に、うつ伏せに倒れたままの七菜江の脳に、ドクドクと血流が注ぎ込まれる。
 破壊された身体、踏み躙られたプライド、汚された純潔・・・幾重にも幾重にも繰り返された七菜江殺しの暴虐の数々。誰がどう見ても瀕死に追い込まれ、反撃など望めるはずもない被虐天使の奥底から、最後のエネルギーが湧いてきているのを、勝利の余韻に浸る傲慢な処刑者たちが、気付くわけはなかった。
 
 「こいつをもっとも苦しめる方法?」
 
 「そう。工藤吼介とキスしたことすらないっていうこの女の、貫通式をしてあげようじゃないの。盛大にね」
 
 「ぶしゅしゅしゅ! それはおもしろそうだ!」
 
 風が舞う。
 その、あまりに予想外の出来事に、柴崎香は一体なにが起こっているのか、目の前で目視しながらも理解できなかった。
 
 ―――ッッッ?!!!
 
 立っている。
 藤木七菜江が立っている。
 身も心も食らいつくし、二度と立ちあがれるはずのない少女が、ガクガクと足を震わせながらも立ち上がっている。
 しかも、ボロボロにされ、破壊の限りを尽くされた少女戦士は、立ちあがりざまに見事な回し蹴りを放っていた。それも3発。
 親衛隊ともいうべき、3人の不良が顔を押さえて後方に吹き飛ぶ。
 
 「なッッッ?!! なんだとォォ――ッッッ?!!」
 
 驚愕の叫びをあげる香に、最後の一撃に賭ける少女は搾り出すように声をだした。
 
 “せん・・・ぱい・・・・・・やっぱあたしには・・・・・・逃げるなんて・・・できない・・・・・・よ・・・・・・”
 
 「・・・か・・おり・・・・・・お前・・・は・・・・・・あたしの・・・・・・命と・・・・・・引き換えに・・・・・・たお・・・す・・・・・・・・・」
 
 七菜江にはわかっていた。己に残された力を。あまりに少ない、その量を。
 残りの力全てを使って、無垢な少女戦士は、逃亡ではなく、己への復讐に燃える悪鬼と、刺し違える覚悟を決めたのだった。
 
 
 
 東亜大附属高校の正門前―――
 夜の帳がすっかり落ち、周囲には不気味な雰囲気が醸し出されている。
 この地方随一のスポーツ優秀校は、一方でドロップアウトした連中を中心とした、凶悪な不良校の一面ももつ。数年前に改築すいたばかりという白い瀟洒な壁を見る限り、そんな野蛮な素顔は露ほどにもわからないが、渦巻く瘴気が、この敷地内に入ることがいかに危険な行為であるかを教えてくる。
 
 開け放された門の前で、ひとり仁王立つツインテールの美少女。
 
 「七菜江、かなり待たせちゃったわね」
 
 ファントムガール・ナナと闘った巨岩怪獣の正体が、カズマイヤー姉妹と見破った天才少女・霧澤夕子は、暴力と腐敗渦巻く校庭に、躊躇することなく足を踏み入れていった―――
 
 
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