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「第五話 正義不屈 ~異端の天使~ 」
5章
しおりを挟む「いつまで寝てんだよォ! 起きなッ!」
肛門と秘所とを鋭利な刃物で貫かれ、暗闇に堕ちていた虜囚の意識が、地獄の現実に引き戻される。
蘇生と同時に四肢を緊縛する苦しみがすかさず里美に覆い被さる。一生この惨めな姿が続くのではと、暗い翳りが脳裏を掠める。
戻ってきた現実には、変化があった。
周囲を取り巻いていた、暴虐者たちがいない。
いるのは毒々しいまでにマスカラを濃くつけた豹柄の女、神崎ちゆりのみ。
他の者に代わって、里美を囲んでいるのは、ふたつの巨大なスピーカーだった。
「闇豹」の身長を越える高さの巨大音響機は、配線によりオーディオセットと繋がり、さらにちゆりが手にするマイクにと繋がっている。
「ちりのリサイタルにようこそ~♪ みんなは危険だから、逃げちゃったけどねぇ~」
ちゆりの能力、用意された設備・・・導き出されるひとつの答えに愕然とした里美が、無駄と知りつつ身を捩らせる。麻縄のきしむ音が、無情に虜囚に応えるのみ。
「うくッッ・・・くうッッ・・・・・・ううぅぅ・・・・・」
「里美ィィ~~、この跡、なんだかわかるぅ? あんたのなんとかシャワーで、火傷しちゃったんだよねぇ~~・・・ホント、あんたほどムカつく女、殺しても殺し足りないよォ・・・」
ゾッと凍りつく視線を向けたまま、長い青の爪に握られたマイクが、「谷宿の歌姫」の異名を持つ豹の口元に寄せられていく。
「これから歌う唄はぁ~、その辺の奴なら1分で発狂しちゃいま~~す♪ 正義の味方さんがぁ、どれだけ我慢できるか、とっても楽しみィィ~~!」
反りあがった完璧なプロポーションに、珠の汗が無数に浮びあがる。トランスフォーム時に耳元で囁かれたあの苦痛が、それとは比べ物にならない倍率で、今瀕死の少女に叩き込まれようとしているのだ。
「ぅあ・・・・ああァァ・・・・・・・・・・」
「あはははは! 里美ィィ、苦しむ顔をた~~っぷり見せてねぇ!」
次の瞬間、魂を毒液で洗うような破壊音が、機械に増幅されて宙吊りの少女の両サイドから浴びせられる。
「いやああああああッッッ――――ッッッ!!!! きゃああああああッッッ――――ッッッ!!!!」
神崎ちゆりの歌、それは人間を細胞レベルから崩れさせる超音波となる。
それは「痛い」という感覚ではなく、とにかく「辛い」というしかない苦痛を与える波長であった。そして、黒板を爪で引っ掻くような不快感を、究極にまで高めたその歌は、聞く者全ての精神を崩壊させ、発狂に至らしめるのだ。
「やめてええぇぇぇええエエエッッッ――――ッッッ!!!! 狂うぅぅッッッ!!! 狂ってしまううううぅぅぅッッッ―――ッッッ!!!!」
耳を塞ぐことすら叶わぬ状況下で、里美は我を忘れて泣き叫ぶ。切れ長の瞳からは涙が溢れ、滝となった涎がダラダラと床に流れていく。大音響にビリビリと震える身体が、あまりの苦しみに痙攣する。
敵に懇願するならば、自死を選ぶよう教育されたくノ一が、想像をはるかに越えた苦痛の海に飲まれていく。
「割れるうううぅぅぅッッッ――――ッッッ!!! 頭がああアアアッッッ―――ッッッ!!! いやアアッッ――ッッ、いやあアアッッ――ッッ、いやああああアアアぁああぁアアアッッッ―――ッッッ!!!!」
黄色の液体が、絶叫する口から溢れ出る。ビチャビチャと音をたてて、それは床を打った。すでに空となった胃から、胃液が逆流したのだ。傷だらけの素肌に浮いた夥しい汗は、里美が悶えるたびに地面に落ち、ボロキレとなったセーラーはじっとりと濡れて変色し始めた。体液という体液が、悶絶の天使から搾り取られていく。
「やめてええぇぇぇええッッッ~~~ッッ!!! 歌をォォッッ・・・歌をとめてえええぇぇぇッッッ―――ッッッ!!!! ぎいやあああああッッッ――――ッッッ!!!!」
ブシュウウウウウ・・・・・
切り取られたショーツの穴から、泡混じりの透明な液体が噴射される。
微かに湯気をたてるその液体の、正体を知る神崎ちゆりの顔が、寒気がするほどの笑顔に変わる。
五十嵐里美は、破壊の音波の前に、失禁した。
ベチャベチャベチャッッ・・・凄まじい勢いで、聖水が床に吹き零れていく。
大の字に宙吊りにされた被虐の女神は、あらゆる体液を撒き散らしながら、豹の仕打ちに絶叫し続けた。
「あーっはっはっは! 最高ォォ~~~ッッ!! 里美ィィ、最高だよ、あんたの姿ァァッ!!」
宙吊りの戦士は、そのまま許されることなく、音響設備により何倍にも高められた破壊の旋律を、捕獲された身で受け続けた。
ようやく歌が止んだのは、「闇豹」が慈悲を見せたためではなく、一番が歌い終わったためだった。
歌が止んだ後に残されたものは・・・
それは、まさしく濡れ場。
五十嵐里美という極上の女神から、雑巾を絞ったように肉汁が零れ落ちていく、凄惨な地獄絵図。
汗、涙、涎、泡、小便・・・あらゆる体液が雨となってボタボタと里美の身体から降り続ける。床に出来た巨大な水溜りからは、饐えた臭いが漂い、美しき少女の残骸としてはあまりに酷い現実を見せていた。
「・・・あぐ・・・・・ぁぁぁ・・・・・ひぐぅ・・・・・・ぅぅぅ・・・・・」
「まぁだ、狂ってなかったんだぁ~~、へぇ~~。学園のアイドルさまが、おしっこちびってまだ平気なんだねぇ~~、きったない女ァァ~~!」
「ククク・・・いや、今のは相当応えたみたいだな、五十嵐里美め」
モニターで中の様子を窺っていた久慈仁紀は、涙と涎で凄惨に濡れ光った虜囚の顔を見ながら呟く。
「いくらお庭番といっても、お嬢様として育ったこのコには、失禁は耐えられないショックでしょう。ふふふ・・・強がっていても、脆さは隠しきれないわよ、ファントムガール」
後方で腕組みながら、片倉響子が同調する。モニター内の囚われの少女には、もはや屈服以外の道はないように思われた。強烈に縛られて動けないはずの身体は、ヒクンヒクンと腰が無意識に折り曲がり、壮絶な苦悶に崩壊寸前であることを知らしめている。
「も・・・・もう・・・・・・・・・やめ・・・・・・・てぇ・・・・・・・・」
「いいわよォ♪ ただしィ、仲間があとどれだけいるか、喋ったらねぇ」
「・・・・・・・・・ううぅ・・・・・」
(わ、私が・・・喋ったら・・・正体を知られているナナちゃんは・・・・・)
「い、言えない・・・・・・・それは・・・・・言えない・・・・・・・」
「ふぅ~~ん、じゃあ、もっと喚いてもらおっかなぁ~~?」
「・・・・・・あ・・・・・あああッッ!!・・・・・・・・・」
止まない絶叫の中、「谷宿の歌姫」の狂歌は3番まで歌い続けられた。
宙吊りの少女戦士の真下に湧いた水溜りは、1cmもの厚さになろうかとしていた。
一体いつまでこの地獄は続くのだろうか。
三度蘇生した里美を待っていたのは、最初と同じ、4人の拷問官だった。正面のソファに足を組んでいる悪鬼は、愉快げに美しい玩具を眺めている。
地球を征服せんとする悪虐者5人を前にして、純然たる正義の使者は、ただ哄笑を浴びせられるのみだった。
そして、里美は気付き始めていた。自分は笑われて当然であることに。
なぜなら、ファントムガールはこの5人に、完膚無きまでに敗北しているのだから。
「ふふふ、記憶力のいい生徒会長さんなら、この針を覚えているわよね?」
赤いスーツに身を包んだ彫刻のごとき妖艶な美女が、宙に浮いた里美の眼前に金色の針を突きつける。澄んだ黒真珠の瞳が丸まり、明らかな怯えの影が走る。
「そう、あなたの後輩のナナが、命乞いしちゃった“金剛糸”よ。猛毒による激痛は・・・」
美しいはずの金色が、恐ろしげに光る。
研ぎ澄まされた精神力で、屈服を迫る激痛の魔獣に耐えてきたくノ一戦士であったが、度重なる限度を越えた暴虐は、少女の忍耐力を相当に奪いとってしまっていた。里美の眉根が寄り、凛々しい輝きを放つ瞳が、切なげに細まる。花弁を思わせる艶やかな唇は、いまにも許しを乞いそうに歪んでしまっていた。明らかな、泣き顔。高貴な令嬢が見せる、弱々しい態度は、悪魔たちの嗜虐心を高めるだけだ。
「いッ・・・いやああァァアッッ!!・・・・・・や、やめてぇぇえええッッ・・・・・・お、お願い、そんなことされたら私・・私ィィ・・・」
「あははは♪ 里美ィィ、なにいまごろ泣きついてんだよォ~! ムダムダ、お前は人類史上、もっとも惨たらしく殺してやるからな!」
空中に大の字になった里美の肢体を、四肢を捕えた縄が無造作に揺らす。ちゆりと田所が、恐怖に駆られる少女を嘲笑うべく、面白がって縄を引っ張っているのだ。幾多の侵略者を退けてきた守護天使が、文字通りオモチャとして遊ばれている。ブラブラと揺すられながら、あまりに惨めな己の姿に、里美の頬を涙がつたう。
しかし、囚われの少女戦士が本当に地獄を見るのは、これからだった。
白い二の腕についた擦り傷に、響子は無造作に金色の針をつけた。
「!! うぎゃああああああッッッ―――――ッッッ!!!!」
琴に似たたおやかさを持つ里美の声が、張り裂けんばかりに絶叫した。突然の痛撃は、初体験の里美にはあまりに過酷なものだった。
「うふふ、どうかしら? 痛みだけを極限にまで与える“金剛糸”の味は? ナナがあれだけ頑張ったんだもの、リーダーのあなたがこれぐらいで悲鳴をあげてちゃダメよね」
「あ・・・あく・・・・ああぁ・・・・・・」
「これを神経が集中している箇所に打ち込んであげるわ。例えば、こんなところにね」
縄に縛られた右手首の先、白魚のごとき細長い指を、女教師は愛しげに摘まむ。
形の良い、楕円形の爪の先。そこに針の先端をつける。
「ッッ!!! や、やめ・・・・やめてぇぇ・・・・・・・」
ズブズブズブ・・・・・
「ふぎゃああああああああッッッ――――ッッッ!!!!」
あまりに壮絶な激痛に、失神すら許されない。
想像したこともなかった極限の痛みに、里美の意識は木っ端微塵に爆発した。だが、全身を頭の先からつま先まで、100回程雑巾のように捻られた感覚がするや、すぐに意識は復活する。そして瞬時に破裂・・・永劫に繰り返される、蘇生と失神。久慈の嘲笑も、ちゆりの高笑いも、全て聞こえなかった。痛覚のみが里美を包む。先程の電極が全ての痛覚に押し当てられ、一斉にMAXで電撃を浴びているようなものだ。いっそ指が無くなって欲しい。剥き出しの神経をヤスリで削られても、これほどの痛みはなかろうと思えるほどの苦しみが、宙吊りの女神に容赦なく叩き込まれる。
「ここも痛いのよね」
叫び続ける里美に気をかけず、左の二の腕を掴む。上腕二等筋、いわゆる力瘤の窪みに、新たな金色の針が当てられる。
ズブブッ・・・ズブズブズブ・・・・・・
「ひぎやあああああああああッッッ―――――ッッッ!!!!」
針は腕を貫き、上から下へと突き抜ける。
己が叫んでいることもわからずに、ただ激しく、里美の小さな顔が振られる。深い知性の薫りする瞳に、光は宿っていない。破れた喉から噴き出た鮮血が、涎の雫とともに噴霧される。
「腋も人間の弱点なのよね。ここを刺されたら、さすがのくノ一さんもたまらないんじゃないかしら?」
すかさず、左の腋の下、縄に拘束されているがため、曝け出しているその箇所に、遠慮無く針が埋められていく。
ズブリ。ズブブ・・・ズブズブズブ・・・・・・・
「いぎゃあああああああッッッ―――――ッッッ!!!! やめてえええッッッ――――ッッッ!!! もう許してえええええッッッ―――ッッッ!!!!」
ついに隷奴の口から、命乞いの台詞が洩れ出る。
正義を貫いてきた守護少女の精神が、爪の間・筋肉の裂け目・腋の下という、3箇所同時の究極激痛により、木っ端微塵に砕かれた瞬間だった。
白目を剥き出し、針だらけの身体で泣き叫ぶ里美を、誰が責められようか。あまりに苛烈な拷問に晒され、現代くノ一の限界は誰の目にも明らかだった。
「さあ、最後の一本は、お臍がいいかしら? この奥は内臓と皮一枚隔てているだけだからね。奥にまで刺しこんだら、悶死しちゃうかもしれないわね」
「!!! やめてえええええッッッ―――ッッッ!!! 許してええええッッッ―――ッッッ!!!! お願いいィィィ~~ッッッ、もうこれ以上苛めないでええええぇぇぇッッッ――――ッッッ!!!!」
「なら、仲間の数を言いなさい。あと何人いるの?」
「ああああぁぁぁッッ~~~ッッッ!!!! そ、それはああぁアアアッッッ~~~ッッッ!!!」
白目のまま絶叫する口から、涎が溢れる。汗の結晶がスポンジを絞ったように大の字の身体、全身から降り落ちていく。金色の針から送り込まれる絶苦に、里美の戦士としての心は完全に塗りつぶされていた。壮絶な激痛に屈服せんとする女戦士が、今、誕生しようとしていた。
口を割れば、楽になる。
この、身を裂かれる以上の地獄の痛苦から、救われる。助けてもらえる。
すでに大勢の決したこの闘いで、どんな屈強な男であろうと泣き叫ばずにはいられない拷問に耐えることが、なんの価値を持っているのだろう。たとえ里美が痛みに屈しようとも、称賛する者はいても、侮辱する者などいるわけがなかった。
「い、言えないィィ~~ッッッ!!! そ、それだけは言えないィィィ~~~ッッッ!!!!」
だが、里美は秘密を吐かなかった。
戦士としてのファントムガール五十嵐里美は、度重なる極限の苦痛の前に、敗北していたが、藤木七菜江を守りたいという、ひとりの少女としての彼女が、最後の一線を越えさせなかった。
もはや、それは奇跡と呼ぶに相応しい精神力であった。
しかし、その美しいまでの忍耐力も、人間を破壊するのになんの感傷も抱かない、妖艶な女教師の前では、全くの無力であった。
「では、死になさい。五十嵐里美」
ズブ・・・・・・
金色の針が、うっすらと腹筋が浮んだ中央、縦長のお臍に埋まっていく。
「うぎゃあああああああああああああああッッッッッ!!!!!」
永遠に途絶えることがないと思われる、長い、長い、天使の絶叫。
普通の人間なら、臍に指を突っ込まれるだけで、激しく悶絶するであろう。尖った針などで刺されでもしたら、発狂は免れない。
それを里美は、肌に触れるだけで麻痺するような、猛毒に濡れた金属針を打ち込まれているのだ。
「ひひィィィぎぎぎゅゅゅゅえええええええッッッッッ!!!!! ぎいあああああああああッッッッッ!!!!!」
バシュウッ!! ブシュウッ!! 破れた喉から吐かれた血塊が、空中からコンクリの床に噴霧される。
痛撃の負荷は、明らかに里美の許容量をとっくに越えている。縛縄に拘束された肉体が、あまりの仕打ちに限界以上に反りあがり、自ら崩壊の道を辿らんとする。ベキベキ・・・ミシミシ・・・華奢な少女の背骨が、己の悶絶する力により粉砕されようとしている。
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