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53、実験
しおりを挟む「ほら。今度は下のおクチで、たっぷり蛆虫を頬張るがいいわ」
右手に蛆虫の山を乗せた縛姫が、左手をスカート奥のショーツにかける。
涙で潤んだ瞳を、郁美は限界まで見開いた。なにをされるのか、どうなってしまうのか、もはや自明の理。
「やめッ・・・やめてッ・・・!! やめてええェェッ~~ッ!!!」
ピンクのショーツがグイと引かれ、右手が潜り込む。
股間の陰裂とショーツとの間に、数えきれぬ量の蛆虫が挟まった。
じゅくじゅくと、郁美の秘壺の奥へ何十匹もの蛆虫が、肉襞を擦りながら行進していく。
「きゃああああ”あ”ア”ッ――ッ!!! うああ”ッ、あああア”ア”ア”ッ~~~ッ!!! 入ってッ、入ってきちゃうう”う”ゥッ――ッ!! いやあ”あ”ッ――ッ、やめてええ”え”ェ”ェ”ッ―――ッ!!!」
「すごい悲鳴じゃのう。縛姫のヤツめ、あれほど言うたのに・・・オメガヴィーナスの妹が壊れねばいいがのう」
スマホでの会話を一旦途切れさせ、地獄妖・骸頭が耳を塞ぐ。
チラリと虜囚乙女を一瞥し、背を向けた。汗と涎を振り撒き、狂ったように悶え叫んでいるが、あれでなかなか四乃宮郁美がしぶといのはわかっている。あの程度ならば、修復不能なトラウマくらい抱えるかもしれないが発狂するまでにはいたるまい。
『四乃宮郁美がどうか、されましたか?』
「なんでもないわ。ヌシが気にする必要はあるまいて、〝輔星”の翠蓮」
郁美への性的拷問が続く場所から距離を取って、骸頭は会話を再開した。
「それとも、やはり元の仲間であった『水辺の者』への情は、容易には拭い去れんのか?」
電話口の向こうで、裏切りの女妖魔が押し黙る気配があった。
翠蓮が喋らなくなると、背後で叫ぶオメガフェニックスの悲鳴がよく聞こえた。あちらの拷問部屋でも、過酷な責めは続いているようだ。
『御冗談ではあっても今の骸頭さまのお言葉・・・この翠蓮、いたく悲しゅうございます』
「翠蓮よ、儂はヌシのことを、まだ芯から認めたわけではないぞぉ。密偵を潜り込ませる程度のことは、あやつらなら仕掛けておかしくないからのう」
『存じ上げております。骸頭さまが、この翠蓮をお疑いであることは・・・私はただ、ひとつづつ信頼を重ねるよう尽力するのみでございます』
「・・・まあ、よかろう。ヌシのおかげで純血・純真・純潔の3つの要素を知り得たのじゃしなぁ。これまでの働きぶりは、評価してやらぬでもない。儂らのために命を張る覚悟くらいは、当然できていようのう?」
『もちろんでございます。骸頭さま、そして虎狼さまのためならば、いつでもこの命差し出す覚悟です』
「ふむ・・・ヌシには今後、その忠誠が本物かどうか、試すための大きな仕事を用意してある。せいぜい励むがよいわ」
慇懃な感謝の言葉が、スマホを通じて届いてくる。
興味なさげに聞き流した骸頭は、話の内容を元に戻した。
「で。オメガスレイヤーの弱点となりそうな鉱物は、見つかりそうか?」
これまでに虎狼と呪露が試した鉱物名と、それぞれの結果を詳細に翠蓮は報告する。
大企業の会長と有能な秘書、とでもいうべき様相であった。我欲が剥き出しとなる妖化屍は、元々組織をつくるのには向いていない。せっかくの骸頭の策も、勝手気儘な六道妖の連中だけならうまく活用できない可能性も高いが、〝輔星”を名乗る翠蓮はその重大な欠点を穴埋めできる存在かもしれなかった。
「痴れ者どもがッ・・・!! なにをモタモタやっておるのじゃッ! 『水辺の者』どもの追跡は急速に迫っておるのじゃぞッ!?」
『はい・・・申し訳ございません』
「あと数時間もすれば、オメガヴィーナスがアジトに乗り込んできても不思議ではないのじゃッ! それまでに〝オーヴ”以外の切り札を手中にせねばッ・・・勝利は覚束ぬぞッ! 白銀の光女神を他のオメガスレイヤーと同様に見るでないッ!」
妖化屍のなかでも、もっとも古株であろう〝百識”の骸頭は、光属性のオメガ戦士の強さをよく知っている。
セイレーンやフェニックスを倒したのとは、訳が違う。元々骸頭が六道妖を結成し、オメガスレイヤーの殲滅を計画したのも、オメガヴィーナスの誕生あればこそだ。
これまでの研究で、究極戦士であるオメガスレイヤーの弱点はいくつかわかった。
ひとつ、変身前を襲うこと。その能力は、約10分の1ほどに抑えられている。
ひとつ、反オメガ粒子ともいえる〝オーヴ”
ひとつ、純血・純真・純潔。オメガスレイヤーが持つこれらの要素を、崩してやれば能力は減退する。
「じゃが足りぬッ! オメガヴィーナスを相手にするには、これだけでは足りぬのじゃッ! なんとかしてヤツらの肉体に通用する鉱物を見つけねばッ・・・」
皺だらけの老人の脳内が、目まぐるしく回転していた。
なにか、ある気がする。重大なヒントを、見落としている気がする。
4400種類もある鉱物を、あと数時間のうちに全て試すのが不可能なのは、骸頭もわかっている。絞り込まねばならなかった。弱点と思しき鉱物を見定め、優先的にフェニックスの肉体で実験せねば・・・
黙考する骸頭の邪魔にならぬよう、タイミングを計って翠蓮は、耳に入れるべき報告をする。
『骸頭さま。天妖を名乗る妖化屍が、そちらのアジトへと向かっている連絡を受けました。あとしばらくすれば、辿り着く頃合いかと思われますが・・・』
「なにッ!? 天妖・・・〝覇王”絶斗が来るじゃとッ!」
絶斗の名を聞き、郁美へ意識を集中していた縛姫が思わず振り向く。
「・・・ゼット・・・ですって!? あの絶斗が来るのかいッ・・・!!」
「翠蓮よ、その情報に誤りはないなッ!?」
間違いありません、冷静に伝える声に皺だらけの怪老の顏が吊り上がる。
「あの〝覇王”が来るならば・・・オメガヴィーナスとて恐れるに足りぬやもしれぬのう・・・」
その瞬間、天啓のように骸頭の脳裏で複数の要素が絡み合った。
絶斗という男のデタラメな強さを、骸頭は知っている。それはまさに、白銀の光女神すら彷彿とさせるほど。
なぜ、天妖・絶斗はあのような力を持ち得たのか。
〝百識”の妖化屍は、今は亡き〝慧眼”とも推論をぶつけ合ったことがあった。いくつかの可能性があげられるなか、やけに印象に残った推理がひとつ――。
・・・絶斗の強さとオメガスレイヤーとは、由来を同じにするのではないか?
「・・・縛姫よ。オメガセイレーン襲撃時に〝オーヴ”に触れていた儂らは・・・なぜか能力が落ちておったのう?」
「は? 何をいまさら・・・今はもう、元通りの力に戻っているでしょ。セイレーンかあの『水辺の者』の小僧が、なにか仕掛けていたんじゃないのかい?」
「もしや儂らは・・・恐ろしく単純で、考えたくもない理屈を見過ごしていたのかもしれぬッ・・・!」
突如、声を張り上げ、骸頭はスマホ越しに指令を下す。
「翠蓮ッ!! ヌシらはまだ・・・紫水晶は試しておらんかったのうッ!?」
『ッ? ・・・はい。紫水晶・・・アメジストでございますね。しかしこれは・・・』
「試せッ!! すぐにじゃ! 今すぐ紫水晶をフェニックスの肉体で試せッ!! 結果を報告せよッ!」
興奮する骸頭の様子に戸惑いながらも、指示を伝える翠蓮の声が聞こえてくる。
「儂の考えが全て当たっているならば・・・この闘い、詰んだやもしれぬのう・・・ッ!」
歓喜を押し殺すような〝百識”の囁きが、暗い室内に流れた。
「ッ・・・ゼ・・・ット・・・・・・ムラサキ・・・水晶・・・ッ・・・」
怒涛のような快感を浴びせられ、ゴボゴボと白い泡を吹く郁美の口から、無意識に言葉が漏れていた。
法悦の波状攻撃に蕩けながらも、オメガヴィーナスのただひとりの肉親は、姉に迫る深刻な窮地を察知したかのようだった。
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