オメガスレイヤーズ ~カウント5~ 【究極の破妖師、最後の闘い】

草宗

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25、遊園地

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「ねえ、それくらいにしてもらえる?」

 アミューズメントパークの簡易遊園地ゾーンに、不意に沸いたのはまだ少女と呼ぶべき声だった。
 暗がりのなかで男が振り返る。ひと目見れば、男の異様さは瞭然だった。体表は緑色に濡れ光り、顏が肩幅ほどまで広いのだ。
 蛙とひととの半人半妖、〝大蟇おおびき”の我磨ガマを視線で迎えたのは、真っ赤なドレスに身を包んだショートヘアの女子高生だった。
 
「・・・おやおや。まさか、この段階で現れるとは・・・もしや、こちらの騒動に気付いていたかなぁ?」

「当然でしょ。こう見えても、あたしはここの主人だからネ」

「甲斐凛香、だったかな。記者会見は終わったのかね」

「ようやくネ。一応社長ともいうべき立場になるとサ、簡単に動けないのよね、責任ってもんがあるから。ま、殺意は薄いようだから、ギリギリまで我慢できたヨ」

 話題の女子高生社長は、先程までマスメディアに向けていたものとは、まるで異なる雰囲気に変貌していた。
 正確にいえば変わったのではない。戻したのだ。本来の自分に。
 Kアミューズ・エンタープライゼスという会社の代表である、甲斐家の令嬢はあくまで演じた姿。求められるが故、大財閥の一員をやりきっているに過ぎない。
 本当の凛香はもっと砕けていた。お転婆だった。天衣無縫だった。
 その証拠に、彼女の口調には、スピーチなどでは見せなかった軽い調子がある。
 
「オレのこの姿を見ても、動じないところを見るとやはりお前も『水辺の者』か」

「そんな探りを入れるような言い方、しなくていいヨ。妖化屍とあたしたちが出会ったら、結局やりあうしかない、でショ!?」

 ドレスの長い裾を、凛香は引き裂く。
 左腕を伸ばして、構えた。堂に入った姿。付け焼刃ではない、長年沁みついた武の香りが、日本を代表するコンツェルンの令嬢から、一気に噴き出す。
 
「じゃじゃーんっと! 甲斐凛香・・・またの名を、紅蓮の炎天使・オメガフェニックス! あなたの狙いは元々あたしなんでしょ?」

 深紅のドレスが似合う女子高生は、可憐さすら振り撒いてニンマリと笑った。
 話題の令嬢社長が、妖魔を人知れず討伐する、究極の破妖師だとは。むろん、引き揚げたばかりのマスコミは知るはずもない。そもそも、彼らはオメガスレイヤーなる存在すら、聞いたことがないのだ。
 つい先程まで華やかな記者会見があった隣で、闇に生きる妖魔と18歳の少女が命のやりとりをするなど、夢想だにするはずもなかった。

「クヒュ・・・クヒュヒュ・・・まさか、正真正銘のオメガスレイヤーだったとはなぁ。オレは〝大蟇”の我磨だ。最初にお前を狙わなくてよかったよ」

「あのさ、あなたが連れてった女のコ、あたしのちょ~~っとした知り合いなんだよネ。無事に返してくれないかナ?」

「あの小娘の正体ならすでにわかっているぞ。お前が必死に取り戻したい理由もなぁ」

「なんだ、バレてたのか。じゃあ話が早いや。力づくで取り戻すとするヨ」

「クヒュヒュヒュ! 悪いが、オメガフェニックスに変身することは許さんよ。四乃宮郁美を生かしておきたければなぁ!」

 ゴオオオオッ――ッ!!
 
 轟音が響く。それは、蛙男の背後で、8人乗りの小さなジェットコースターが通り過ぎる音だった。
 
「えッ!?」

 ショートヘアの少女が、猫のような吊り気味の瞳を見開く。
 誰も乗っていないはずのジェットコースター。そこには、取材記者然としたジャケット姿の郁美が、頭部を先頭に仰向けで縛りつけられていた。
 まるでジェットコースターの速度を、頭から突っ込むように体感する姿勢。仰向けのボブスレーともいうべき体勢にされ、郁美が受ける恐怖は並のものではないだろう。だが、〝大蟇”がオメガヴィーナスの妹に下した本当の地獄は、そんな生易しいものではなかった。
 
 白のジャケットとスラックスは、胸部分と下腹部を大きく切り取られていた。
 露出する、女子大生のバストと陰部。
 その真珠のような生肌に厚塗りされたのは、催淫効果のある濃緑の粘液だった。
 
「なッ・・・なんてことをッ!!」

 塗っただけで、湧き上がる悦楽を次々と生み出す官能の媚薬。
 それを敏感な乙女の柔肌に塗り重ね、ビュウビュウと強風で吹き荒べば・・・処女の肉体はどうなってしまうのか?
 
「いやああああ”あ”あ”ッ―――ッ!!! へあああ”あ”ア”ッ~~~ァ”んんッ!!」

 牝獣のような郁美の絶叫が響く。体液の全てが、媚薬に変えられてしまったかのようだった。何十時間もねっとりと愛撫されたような快感が、一瞬に凝縮されて、乳房と股間とを責めたてている。
 
 ぷっしゃああああッ――ッ・・・!!
 
 半透明の、飛沫が降る。
 郁美の汗、涙、涎、鼻汁、小水・・・そして愛液とが、全身から噴き出し、ジェットコースターの遠心力によって飛び散ったのだ。
 コースターの操縦室は、蛙男が立ちはだかる奥にあった。〝大蟇”を斃さねば、衰弱死するまで快楽列車のスピードは緩むことはないだろう。
 
「あんたって・・・ヤツはァッ!!」

「四乃宮郁美を縛った鎖は、オレの意志ひとつで千切れるようになっている。転落させたくなけりゃ・・・そのままの姿で闘うことだなぁ、甲斐凛香! もちろんノロノロしてたら、快楽の果てに本当に昇天しちゃうけどね。クヒュヒュヒュッ!!」

 むせび泣くような女子大生の嬌声が、ジェットコースターの轟音とともに響き渡った。
 
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