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18、天音vs虎狼
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土煙をあげ、一直線に虎狼の操る巨馬は駆けた。
対するオメガヴィーナスの全身が、眩い白光に包まれていく。聖なる光は、グングンと女神の内部で湧き上がる。命の炎を、全て燃やし尽くす勢いだった。
〝クロス・ファイヤー”は膨大な光と、それに伴う高熱を照射する必殺技である。
放てば、確実にダメージは与えられる。しかし、問題はその「深さ」だ。
浅いダメージしか与えられぬなら意味はない。オメガヴィーナスと遜色ないパワーを持つ虎狼は、恐らく耐久力についても怪物級であろう。深いダメージを与え一撃で殲滅、少なくとも戦闘不能に追い込まねば、白銀の光女神に勝利はない。
だが、無論のこと、〝無双”の虎狼は簡単に直撃を受けてくれるような、安い相手ではなかった。
「まずは・・・動きを止めないとッ!」
「ダメェッ~~ッ!! 逃げてッ、逃げようッ、おねえちゃんッ!!」
しがみついてくる妹を、天音は振り切った。
郁美の心配はもっともなことだ。破妖師998名の命を奪った虎狼が、並の妖化屍でないこともあるが・・・元々この闘いはフェアではない。
〝慧眼”の男と闘い、〝百識”骸頭の魔術に苦しめられ、〝妄執”縛姫の緊縛に囚われた。オメガヴィーナスにとって、〝無双”の虎狼は本日4人目となる敵なのだ。いくらオメガスレイヤーと妖化屍に性能の差があるとはいえ、このハンデは大きすぎる。
しかも四乃宮天音は、戦闘のプロでもなんでもない。昨日までは、ただの一女子大生だったのだ。
「大丈夫よ、郁美・・・あなただけは、守るからね」
突撃してくる鹿毛の巨馬に、真正面からオメガヴィーナスが突っ込む。
まさに、白銀の弾丸。
MAXの半分も力を出せなくなったとはいえ、やはりオメガヴィーナスは超人だった。郁美の瞳には、ただ銀と青の突風が吹いたが如し。
「フンッ・・・面白い!」
大地が割れたような、轟音が響いた。
「きゃああッ!!」
たまらず郁美が叫びをあげる。それは、悲鳴ではなく、驚愕。
踏み潰さんと巨馬が振り下ろした前脚を、白銀の光女神が片手で受け止めていた。
驚くべきは、明確な意志をもって人を殺そうとした駿馬か。
700kgはありそうな巨体を、涼しげに支える美乙女か。
「ブフォオオッ!! ブフッ・・・フブッ――ッ!!」
「主人に似て、気が荒いのね。でも、私の相手はあなたではないわ」
グイ、とオメガヴィーナスが右手をあげる。
馬の怪物を、スーパーヒロインがパワー勝負で上回る。前脚を浮き上がらせ、巨馬が思わず立ち上がった。
「赤龍を正面から受け止めるか。伊達ではないな、オメガヴィーナス!」
弾んだ声が宙を舞う。馬の鞍上を飛び降りた虎狼は、美女神の背後に着地した。
弁髪の大男が、プラチナブロンドの後頭部へと戟を振り下ろす。
「はあッ!!」
ドガガガガアッッ!!
閃光となったオメガヴィーナスのバックブロー。
戟の柄で、紙一重で受け止める修羅妖・虎狼。
「フハッ! いいッ!! いいぞッ!! ボロボロの肉体で、オレを戦慄させる拳を放つかッ! いや、ボロボロだからこそ、この程度で済んでいるのだなッ!?」
両手に伝わる痺れが、虎狼に確信させていた。先程のオメガヴィーナスは、逆上していたが故に動きが硬すぎたのだと。本来の実力は、あんなものではないと。
破妖師との闘いで、これほどの緊張感と喜悦に包まれるのは、いつ以来のことだろう。
「だが、それでも勝つのはこのオレだッ!!」
いかに潜在能力が凄くても、四乃宮天音の根底は、闘いにはほど遠いお嬢様であった。
追撃がでない。片手の攻撃を虎狼が両腕で防いでいるというのに、空いている腕をどうするのか、咄嗟に思いつかずに固まっている。
ピシャアッ!!
「あッ!?」
筋肉を纏った武人が首を振る。後頭部で束ねた弁髪が、鞭となって美女の顔面を叩いた。
両目を閉ざしてしまう、オメガヴィーナス。
スーツの破れ目から覗く白い腹筋に、虎狼の右拳が突き刺さる。
ドオオオンンンッッ!!
「はア”ッ!? あ”ッ・・・アア”ッ・・・!!」
海老のように丸まる白銀の女神。
突き出した顎を、戟の刃が跳ね上げる。下から上へ。
金属と金属が、衝突するような音がした。
本来顔を両断する一撃は、鋼鉄の美戦士にも効いた。アッパーをモロにくらったようなもの。輝く金髪が衝撃に舞う。
「ぐぶッ!! う、うぅ”ッ・・・!! うあァ”ッ・・・!!」
「フハハハッ!! 普通なら貴様ッ、とっくに死んでいるぞッ! すでに10度はな。フハハハハアッ!!」
天を仰ぎ、フラフラと脚をもつれさせる超乙女。コスチュームに包まれた肢体が、やけに艶めかしく映る。
愛刀の戟を握った修羅妖は、一気に襲い掛かった。怒涛のような突き。槍よりも広範囲に刃が取り付けられた戟は、近くを過ぎるだけで肉を切り、薙ぎ、裂く。
「くッ、うううゥッ――ッ!!」
脳に火花を散らしながらも、オメガヴィーナスは懸命に防御した。
だが、焦りと恐怖が単純化させる。素人丸出しの動きにさせる。美しき女子大生は、必死に顏を守った。突きの連撃に、両腕のガードをあげて硬直する。
嘲笑うように、戟の先端がフレアミニから生えた太ももに埋まった。
「うあア”ッ!?」
「斬れぬでも、筋繊維を潰されるのはキツいだろう!? 撃ち込む隙が無数に見えるぞ、オメガヴィーナスッ!!」
ベキイイィッ!!
渾身で振るった戟が、白銀の光女神の左脇腹に打ち込まれる。
アバラの間に、鋼鉄の刃が食い込む感覚。
バズーカの砲弾ですら通用しない肉体も、妖化屍たちの総攻撃は着実に消耗させていった。骨の軋む悲鳴に、オメガヴィーナスは身を捩じらせる。最強のオメガスレイヤーを狙い撃つ妖化屍の策略は、今、着々と実を結ぼうとしていた。
左の肩口。すでに穴の開いていたスーツの裂け目に、戟の刃が突き入れられた。
痛みに蹂躙され、立ったまま悶えるスーパーヒロイン。迫る危機に対し、反撃も回避もできなかった。
ビビビイィィッ――ッ!! ビリビリビリィッ・・・!!
左肩から、左の乳房、右脇腹へとかけて。
虎狼の戟が、白銀のスーツごと一息に切り裂く。
四乃宮天音の左乳房が、破れたスーツからポロリとまろびでた。
「きゃあああ”あ”ッ――ッ!!!! アアア”ッ・・・!! アアッ――ッ!!!」
「ッッ!! お、おねえッ・・・!!」
「袈裟に灼熱が疾っただろうッ! 精神と肉体、双方からのダメージは小娘には堪えるかッ!? そしてこれがッ・・・!!」
全身を突っ張らせ、ビクビクと震えるオメガヴィーナス。
一方的な攻撃の前に、立ち尽くすだけとなった光女神の右乳房を、虎狼は巨大な掌で鷲掴んだ。
黄金の「Ω」マークの上から。
「あ”ッ!!?」
「トドメだッ、オメガヴィーナスッ!!」
胸の「Ω」の紋章は、オメガスレイヤーの弱点であるらしい。
理由はわからずとも、事実がわかっていれば虎狼は狙う。〝無双”と呼ばれる武辺の者なら、敵を屠るのに最適の手段を選ぶのは当然だった。
だからこそ、闘いの素人である天音にも、予測はできた。最後には、きっと虎狼は紋章を狙うと。
ボギイイィッ!!
「ッ・・・なん、だと?」
胸を握り掴んだままの、虎狼の右腕。その肘に、オメガヴィーナスの小さな拳が、フックとなって叩き込まれていた。
丸太のような豪腕が、肘部分で有り得ない方向に折れ曲がっている。
「この距離なら・・・きっと、効くでしょう?」
モデルもアイドルも顔負けの美乙女が、うっすらとピンクの唇を綻ばせる。
苦痛に冷や汗を浮かべていても、オメガヴィーナスの微笑みは満足げであった。
「貴様ッ・・・最初から、狙っていたのかッ・・・」
「〝クロス・ファイヤー”ァァッ!!!」
美戦士が、両腕を真っ直ぐ左右に伸ばす。踵を揃えて直立する。
クロス。その名の通り、オメガヴィーナスの全身は十字を描いた。
紋章を掴んだ巨漢の妖化屍に、至近距離から必殺の白光が浴びせられる。
カアッッ!!!
夜を昼へと変える、十字の閃光再び。
光と炎の弩流は、虎狼の巨体を一瞬で飲み込んだ。筋肉の鎧が、眩い光に覆われる。
「グオオッ・・・!! オオオッ、オオオッ――ッ!!!」
極限の武を誇る妖魔が、吹っ飛んでいく。暴風に吹かれる、紙クズのように。
元いた場所、天音の両親を殺害した山道ほどまで、宙を飛んで落下する。
「や・・・った・・・? ・・・・・・おねえちゃんが・・・勝ったァッ――ッ!!!」
嗚咽混じりの絶叫が、妹・郁美の口から迸った。
糸が切れた人形のように、膝からオメガヴィーナスは崩れ落ちる。全ての力を、出し切っていた。神々しくすら映っていた白銀と紺青のコスチュームが、今や薄汚れたただの衣装に見える。
雨上がりの泥土に尻餅をつきながら、美しき超戦士は歓喜と安堵のシャワーを浴びた。
天音の口から吐き出される、荒々しい呼吸が、激しい戦闘のダメージを物語っていた――。
対するオメガヴィーナスの全身が、眩い白光に包まれていく。聖なる光は、グングンと女神の内部で湧き上がる。命の炎を、全て燃やし尽くす勢いだった。
〝クロス・ファイヤー”は膨大な光と、それに伴う高熱を照射する必殺技である。
放てば、確実にダメージは与えられる。しかし、問題はその「深さ」だ。
浅いダメージしか与えられぬなら意味はない。オメガヴィーナスと遜色ないパワーを持つ虎狼は、恐らく耐久力についても怪物級であろう。深いダメージを与え一撃で殲滅、少なくとも戦闘不能に追い込まねば、白銀の光女神に勝利はない。
だが、無論のこと、〝無双”の虎狼は簡単に直撃を受けてくれるような、安い相手ではなかった。
「まずは・・・動きを止めないとッ!」
「ダメェッ~~ッ!! 逃げてッ、逃げようッ、おねえちゃんッ!!」
しがみついてくる妹を、天音は振り切った。
郁美の心配はもっともなことだ。破妖師998名の命を奪った虎狼が、並の妖化屍でないこともあるが・・・元々この闘いはフェアではない。
〝慧眼”の男と闘い、〝百識”骸頭の魔術に苦しめられ、〝妄執”縛姫の緊縛に囚われた。オメガヴィーナスにとって、〝無双”の虎狼は本日4人目となる敵なのだ。いくらオメガスレイヤーと妖化屍に性能の差があるとはいえ、このハンデは大きすぎる。
しかも四乃宮天音は、戦闘のプロでもなんでもない。昨日までは、ただの一女子大生だったのだ。
「大丈夫よ、郁美・・・あなただけは、守るからね」
突撃してくる鹿毛の巨馬に、真正面からオメガヴィーナスが突っ込む。
まさに、白銀の弾丸。
MAXの半分も力を出せなくなったとはいえ、やはりオメガヴィーナスは超人だった。郁美の瞳には、ただ銀と青の突風が吹いたが如し。
「フンッ・・・面白い!」
大地が割れたような、轟音が響いた。
「きゃああッ!!」
たまらず郁美が叫びをあげる。それは、悲鳴ではなく、驚愕。
踏み潰さんと巨馬が振り下ろした前脚を、白銀の光女神が片手で受け止めていた。
驚くべきは、明確な意志をもって人を殺そうとした駿馬か。
700kgはありそうな巨体を、涼しげに支える美乙女か。
「ブフォオオッ!! ブフッ・・・フブッ――ッ!!」
「主人に似て、気が荒いのね。でも、私の相手はあなたではないわ」
グイ、とオメガヴィーナスが右手をあげる。
馬の怪物を、スーパーヒロインがパワー勝負で上回る。前脚を浮き上がらせ、巨馬が思わず立ち上がった。
「赤龍を正面から受け止めるか。伊達ではないな、オメガヴィーナス!」
弾んだ声が宙を舞う。馬の鞍上を飛び降りた虎狼は、美女神の背後に着地した。
弁髪の大男が、プラチナブロンドの後頭部へと戟を振り下ろす。
「はあッ!!」
ドガガガガアッッ!!
閃光となったオメガヴィーナスのバックブロー。
戟の柄で、紙一重で受け止める修羅妖・虎狼。
「フハッ! いいッ!! いいぞッ!! ボロボロの肉体で、オレを戦慄させる拳を放つかッ! いや、ボロボロだからこそ、この程度で済んでいるのだなッ!?」
両手に伝わる痺れが、虎狼に確信させていた。先程のオメガヴィーナスは、逆上していたが故に動きが硬すぎたのだと。本来の実力は、あんなものではないと。
破妖師との闘いで、これほどの緊張感と喜悦に包まれるのは、いつ以来のことだろう。
「だが、それでも勝つのはこのオレだッ!!」
いかに潜在能力が凄くても、四乃宮天音の根底は、闘いにはほど遠いお嬢様であった。
追撃がでない。片手の攻撃を虎狼が両腕で防いでいるというのに、空いている腕をどうするのか、咄嗟に思いつかずに固まっている。
ピシャアッ!!
「あッ!?」
筋肉を纏った武人が首を振る。後頭部で束ねた弁髪が、鞭となって美女の顔面を叩いた。
両目を閉ざしてしまう、オメガヴィーナス。
スーツの破れ目から覗く白い腹筋に、虎狼の右拳が突き刺さる。
ドオオオンンンッッ!!
「はア”ッ!? あ”ッ・・・アア”ッ・・・!!」
海老のように丸まる白銀の女神。
突き出した顎を、戟の刃が跳ね上げる。下から上へ。
金属と金属が、衝突するような音がした。
本来顔を両断する一撃は、鋼鉄の美戦士にも効いた。アッパーをモロにくらったようなもの。輝く金髪が衝撃に舞う。
「ぐぶッ!! う、うぅ”ッ・・・!! うあァ”ッ・・・!!」
「フハハハッ!! 普通なら貴様ッ、とっくに死んでいるぞッ! すでに10度はな。フハハハハアッ!!」
天を仰ぎ、フラフラと脚をもつれさせる超乙女。コスチュームに包まれた肢体が、やけに艶めかしく映る。
愛刀の戟を握った修羅妖は、一気に襲い掛かった。怒涛のような突き。槍よりも広範囲に刃が取り付けられた戟は、近くを過ぎるだけで肉を切り、薙ぎ、裂く。
「くッ、うううゥッ――ッ!!」
脳に火花を散らしながらも、オメガヴィーナスは懸命に防御した。
だが、焦りと恐怖が単純化させる。素人丸出しの動きにさせる。美しき女子大生は、必死に顏を守った。突きの連撃に、両腕のガードをあげて硬直する。
嘲笑うように、戟の先端がフレアミニから生えた太ももに埋まった。
「うあア”ッ!?」
「斬れぬでも、筋繊維を潰されるのはキツいだろう!? 撃ち込む隙が無数に見えるぞ、オメガヴィーナスッ!!」
ベキイイィッ!!
渾身で振るった戟が、白銀の光女神の左脇腹に打ち込まれる。
アバラの間に、鋼鉄の刃が食い込む感覚。
バズーカの砲弾ですら通用しない肉体も、妖化屍たちの総攻撃は着実に消耗させていった。骨の軋む悲鳴に、オメガヴィーナスは身を捩じらせる。最強のオメガスレイヤーを狙い撃つ妖化屍の策略は、今、着々と実を結ぼうとしていた。
左の肩口。すでに穴の開いていたスーツの裂け目に、戟の刃が突き入れられた。
痛みに蹂躙され、立ったまま悶えるスーパーヒロイン。迫る危機に対し、反撃も回避もできなかった。
ビビビイィィッ――ッ!! ビリビリビリィッ・・・!!
左肩から、左の乳房、右脇腹へとかけて。
虎狼の戟が、白銀のスーツごと一息に切り裂く。
四乃宮天音の左乳房が、破れたスーツからポロリとまろびでた。
「きゃあああ”あ”ッ――ッ!!!! アアア”ッ・・・!! アアッ――ッ!!!」
「ッッ!! お、おねえッ・・・!!」
「袈裟に灼熱が疾っただろうッ! 精神と肉体、双方からのダメージは小娘には堪えるかッ!? そしてこれがッ・・・!!」
全身を突っ張らせ、ビクビクと震えるオメガヴィーナス。
一方的な攻撃の前に、立ち尽くすだけとなった光女神の右乳房を、虎狼は巨大な掌で鷲掴んだ。
黄金の「Ω」マークの上から。
「あ”ッ!!?」
「トドメだッ、オメガヴィーナスッ!!」
胸の「Ω」の紋章は、オメガスレイヤーの弱点であるらしい。
理由はわからずとも、事実がわかっていれば虎狼は狙う。〝無双”と呼ばれる武辺の者なら、敵を屠るのに最適の手段を選ぶのは当然だった。
だからこそ、闘いの素人である天音にも、予測はできた。最後には、きっと虎狼は紋章を狙うと。
ボギイイィッ!!
「ッ・・・なん、だと?」
胸を握り掴んだままの、虎狼の右腕。その肘に、オメガヴィーナスの小さな拳が、フックとなって叩き込まれていた。
丸太のような豪腕が、肘部分で有り得ない方向に折れ曲がっている。
「この距離なら・・・きっと、効くでしょう?」
モデルもアイドルも顔負けの美乙女が、うっすらとピンクの唇を綻ばせる。
苦痛に冷や汗を浮かべていても、オメガヴィーナスの微笑みは満足げであった。
「貴様ッ・・・最初から、狙っていたのかッ・・・」
「〝クロス・ファイヤー”ァァッ!!!」
美戦士が、両腕を真っ直ぐ左右に伸ばす。踵を揃えて直立する。
クロス。その名の通り、オメガヴィーナスの全身は十字を描いた。
紋章を掴んだ巨漢の妖化屍に、至近距離から必殺の白光が浴びせられる。
カアッッ!!!
夜を昼へと変える、十字の閃光再び。
光と炎の弩流は、虎狼の巨体を一瞬で飲み込んだ。筋肉の鎧が、眩い光に覆われる。
「グオオッ・・・!! オオオッ、オオオッ――ッ!!!」
極限の武を誇る妖魔が、吹っ飛んでいく。暴風に吹かれる、紙クズのように。
元いた場所、天音の両親を殺害した山道ほどまで、宙を飛んで落下する。
「や・・・った・・・? ・・・・・・おねえちゃんが・・・勝ったァッ――ッ!!!」
嗚咽混じりの絶叫が、妹・郁美の口から迸った。
糸が切れた人形のように、膝からオメガヴィーナスは崩れ落ちる。全ての力を、出し切っていた。神々しくすら映っていた白銀と紺青のコスチュームが、今や薄汚れたただの衣装に見える。
雨上がりの泥土に尻餅をつきながら、美しき超戦士は歓喜と安堵のシャワーを浴びた。
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