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京都でのお茶会

ストーリー18

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 そして朝……

 当然ながら私は殆ど寝れなかった。ハァっと息を吐きながら用意して頂いた布団を畳んで、髪を一つにまとめる。

 結局昨日は奏多さんもすぐ自分の部屋に戻り、私は用意されたこの部屋で一人、奏多さんとのキスを思い出しながら胸をときめかせていた。

 時計を見てもまだ午前6時にもなっていない。けれど今更寝れないし、早々に身支度を整えて部屋を出る。

「おはよう。起きてくるの早いな」

「おはようございます。奏多さんこそもう起きてこられたんですか?」

 キッチンの方から物音がしたのでコソッと覗きに行くと既に奏多さんが起きていた。私に気づくと爽やかスマイルで挨拶をしてくる。

「起きたというか……なんか寝られへんかったんや。喉渇いたし、もう起きようかと思て。桜さんは寝れた?」

「いえ……あの、私も寝れなくて気がついたら朝になってました」

「はは、お揃いやな。お茶入れたから向こう行こか」

 急須と湯飲みをお盆に乗せ、私達はリビングへと移動する。

「桜さんは何で寝られんかったん?」

 奏多さんは私の前にお茶の入った湯飲みを置いて、じぃっと私を見てくる。

 奏多さんの事が気になって……とは言えず返事に困っていると、玄関の開く音がした気がして二人して玄関の方を見た。

「あら、二人とももう起きてたん?」

 温泉宿に行っていた奏多さんの母親が帰ってきた。私達を見てニッコリとしながら声をかけてくる。

 奏多さんは『お帰り』と言いながら、母親が右手に持っていた袋をじぃっと見た。

「これ? 朝食にと思ておにぎりこうてきたから今準備するわ」

「あっ私も手伝います」

「ふふ、桜さんは奏多の話し相手になってあげて」

 私はお手伝いをしようと立ち上がったけど断られてしまい、またそのままストンと座る。

 しばらくすると、簡単なもので申し訳ないけどと言いながら朝食が準備された。買ってきたというおにぎりに合わせてお出汁の効いた豆腐とワカメのお味噌汁に鮭の塩焼き。

 凄く美味しい。外出先から帰ってきたばかりなのに朝食まで準備してくれて、大丈夫とは言われたもののやっぱりお手伝いするべきだったと食べながら後悔する。

「奏多、桜さんに着物は見せたん?」

「いや、まだやけど」

「大広間に用意してるから朝食済んだら案内してあげてな。ほなうちも色々準備してくるわ」

 そう言い残して奏多さんの母親はご機嫌そうに部屋から出て行った。

「着物ってお茶会のですか?」

「ご贔屓にしている呉服屋から着物を借りてきたんや。桜さんが気に入ってくれるといいんやけど」

「わざわざすみません」

 自分の着物を持っていこうと思ったけど、荷物になるから京都で準備すると言われていた。

 朝食が済み、私は奏多さんに案内され大広間に向かう。中に入るとそこには桜色の着物が用意されていた。

「綺麗、ありがとうございます」

「蒼志君に先越されたのが悔しいけど」

「えっ?」

 奏多さんの悔しそうな呟きに、思わずパッと奏多さんの顔を見る。目が合うと奏多さんは私から目を背け、少し顔を赤くさせた。

 奏多さんの表情につられて私も何故だか顔が赤くなる。

 何だか部屋中に不思議な空気が流れるなか、奏多さんの母親が大広間に入ってきた。

「奏多が選んだ桜色の着物、気に入ってくれた?」

 ニッコリしながら私の方を見る。そして部屋の中を流れていた不思議な空気感も消えた。

「この着物、奏多さんが選んでくれたんですか?」

 私はまた奏多さんを見る。もしかしてさっき蒼志に先越されたって言ったのは、私が蒼志に似合うと言われた桜色の袷着物を着て仕事しているから?

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