18 / 40
京都でのお茶会
ストーリー18
しおりを挟む
そして朝……
当然ながら私は殆ど寝れなかった。ハァっと息を吐きながら用意して頂いた布団を畳んで、髪を一つにまとめる。
結局昨日は奏多さんもすぐ自分の部屋に戻り、私は用意されたこの部屋で一人、奏多さんとのキスを思い出しながら胸をときめかせていた。
時計を見てもまだ午前6時にもなっていない。けれど今更寝れないし、早々に身支度を整えて部屋を出る。
「おはよう。起きてくるの早いな」
「おはようございます。奏多さんこそもう起きてこられたんですか?」
キッチンの方から物音がしたのでコソッと覗きに行くと既に奏多さんが起きていた。私に気づくと爽やかスマイルで挨拶をしてくる。
「起きたというか……なんか寝られへんかったんや。喉渇いたし、もう起きようかと思て。桜さんは寝れた?」
「いえ……あの、私も寝れなくて気がついたら朝になってました」
「はは、お揃いやな。お茶入れたから向こう行こか」
急須と湯飲みをお盆に乗せ、私達はリビングへと移動する。
「桜さんは何で寝られんかったん?」
奏多さんは私の前にお茶の入った湯飲みを置いて、じぃっと私を見てくる。
奏多さんの事が気になって……とは言えず返事に困っていると、玄関の開く音がした気がして二人して玄関の方を見た。
「あら、二人とももう起きてたん?」
温泉宿に行っていた奏多さんの母親が帰ってきた。私達を見てニッコリとしながら声をかけてくる。
奏多さんは『お帰り』と言いながら、母親が右手に持っていた袋をじぃっと見た。
「これ? 朝食にと思ておにぎりこうてきたから今準備するわ」
「あっ私も手伝います」
「ふふ、桜さんは奏多の話し相手になってあげて」
私はお手伝いをしようと立ち上がったけど断られてしまい、またそのままストンと座る。
しばらくすると、簡単なもので申し訳ないけどと言いながら朝食が準備された。買ってきたというおにぎりに合わせてお出汁の効いた豆腐とワカメのお味噌汁に鮭の塩焼き。
凄く美味しい。外出先から帰ってきたばかりなのに朝食まで準備してくれて、大丈夫とは言われたもののやっぱりお手伝いするべきだったと食べながら後悔する。
「奏多、桜さんに着物は見せたん?」
「いや、まだやけど」
「大広間に用意してるから朝食済んだら案内してあげてな。ほなうちも色々準備してくるわ」
そう言い残して奏多さんの母親はご機嫌そうに部屋から出て行った。
「着物ってお茶会のですか?」
「ご贔屓にしている呉服屋から着物を借りてきたんや。桜さんが気に入ってくれるといいんやけど」
「わざわざすみません」
自分の着物を持っていこうと思ったけど、荷物になるから京都で準備すると言われていた。
朝食が済み、私は奏多さんに案内され大広間に向かう。中に入るとそこには桜色の着物が用意されていた。
「綺麗、ありがとうございます」
「蒼志君に先越されたのが悔しいけど」
「えっ?」
奏多さんの悔しそうな呟きに、思わずパッと奏多さんの顔を見る。目が合うと奏多さんは私から目を背け、少し顔を赤くさせた。
奏多さんの表情につられて私も何故だか顔が赤くなる。
何だか部屋中に不思議な空気が流れるなか、奏多さんの母親が大広間に入ってきた。
「奏多が選んだ桜色の着物、気に入ってくれた?」
ニッコリしながら私の方を見る。そして部屋の中を流れていた不思議な空気感も消えた。
「この着物、奏多さんが選んでくれたんですか?」
私はまた奏多さんを見る。もしかしてさっき蒼志に先越されたって言ったのは、私が蒼志に似合うと言われた桜色の袷着物を着て仕事しているから?
当然ながら私は殆ど寝れなかった。ハァっと息を吐きながら用意して頂いた布団を畳んで、髪を一つにまとめる。
結局昨日は奏多さんもすぐ自分の部屋に戻り、私は用意されたこの部屋で一人、奏多さんとのキスを思い出しながら胸をときめかせていた。
時計を見てもまだ午前6時にもなっていない。けれど今更寝れないし、早々に身支度を整えて部屋を出る。
「おはよう。起きてくるの早いな」
「おはようございます。奏多さんこそもう起きてこられたんですか?」
キッチンの方から物音がしたのでコソッと覗きに行くと既に奏多さんが起きていた。私に気づくと爽やかスマイルで挨拶をしてくる。
「起きたというか……なんか寝られへんかったんや。喉渇いたし、もう起きようかと思て。桜さんは寝れた?」
「いえ……あの、私も寝れなくて気がついたら朝になってました」
「はは、お揃いやな。お茶入れたから向こう行こか」
急須と湯飲みをお盆に乗せ、私達はリビングへと移動する。
「桜さんは何で寝られんかったん?」
奏多さんは私の前にお茶の入った湯飲みを置いて、じぃっと私を見てくる。
奏多さんの事が気になって……とは言えず返事に困っていると、玄関の開く音がした気がして二人して玄関の方を見た。
「あら、二人とももう起きてたん?」
温泉宿に行っていた奏多さんの母親が帰ってきた。私達を見てニッコリとしながら声をかけてくる。
奏多さんは『お帰り』と言いながら、母親が右手に持っていた袋をじぃっと見た。
「これ? 朝食にと思ておにぎりこうてきたから今準備するわ」
「あっ私も手伝います」
「ふふ、桜さんは奏多の話し相手になってあげて」
私はお手伝いをしようと立ち上がったけど断られてしまい、またそのままストンと座る。
しばらくすると、簡単なもので申し訳ないけどと言いながら朝食が準備された。買ってきたというおにぎりに合わせてお出汁の効いた豆腐とワカメのお味噌汁に鮭の塩焼き。
凄く美味しい。外出先から帰ってきたばかりなのに朝食まで準備してくれて、大丈夫とは言われたもののやっぱりお手伝いするべきだったと食べながら後悔する。
「奏多、桜さんに着物は見せたん?」
「いや、まだやけど」
「大広間に用意してるから朝食済んだら案内してあげてな。ほなうちも色々準備してくるわ」
そう言い残して奏多さんの母親はご機嫌そうに部屋から出て行った。
「着物ってお茶会のですか?」
「ご贔屓にしている呉服屋から着物を借りてきたんや。桜さんが気に入ってくれるといいんやけど」
「わざわざすみません」
自分の着物を持っていこうと思ったけど、荷物になるから京都で準備すると言われていた。
朝食が済み、私は奏多さんに案内され大広間に向かう。中に入るとそこには桜色の着物が用意されていた。
「綺麗、ありがとうございます」
「蒼志君に先越されたのが悔しいけど」
「えっ?」
奏多さんの悔しそうな呟きに、思わずパッと奏多さんの顔を見る。目が合うと奏多さんは私から目を背け、少し顔を赤くさせた。
奏多さんの表情につられて私も何故だか顔が赤くなる。
何だか部屋中に不思議な空気が流れるなか、奏多さんの母親が大広間に入ってきた。
「奏多が選んだ桜色の着物、気に入ってくれた?」
ニッコリしながら私の方を見る。そして部屋の中を流れていた不思議な空気感も消えた。
「この着物、奏多さんが選んでくれたんですか?」
私はまた奏多さんを見る。もしかしてさっき蒼志に先越されたって言ったのは、私が蒼志に似合うと言われた桜色の袷着物を着て仕事しているから?
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる