溺愛なんてされるものではありません

彩里 咲華

文字の大きさ
上 下
44 / 46
主任×私×番外編

ストーリー45

しおりを挟む
「おーい赤崎さん、ちょっといいかな」

 女子社員で会話が盛り上がっている中、私は課長から呼び出された。

「はい、何でしょうか?」

 席を立ち課長の机の前に移動する。すると課長は立ち上がり、ちょっと話があると言って庶務課の外に出た。よく分からないけど、私も課長の後をついて行く。

「赤崎さん、単刀直入に聞くけど営業企画部の平国主任とその……付き合っているって噂は本当かな?」

「はい……本当です」

 何となく気不味い空気の中黙々と歩き、着いた先は第二会議室だった。課長の顔を見ると中に入ってとディスチャーされ、言われるがままに中に入った。

 ゆっくりとドアを開けて中に入ると、すでに人がいる。

「あっ」

 思わず声が出てしまい、慌てて両手で口を押さえた。そこに居たのは、営業企画部の課長と蓮さんだった。

「赤崎さん、そこに掛けてください」

 営業企画部の課長が手で蓮さんの隣に座るよう誘導する。私は小声で『失礼します』と言って椅子に腰掛けた。

 チラッと蓮さんを見てみると、蓮さんもこっちを見て微笑んでいる。バッチリ目が合いドキッとした私は、勢いよく目を逸らした。

 今日も朝からカッコいいな……って見惚れてしまったのは内緒にしておこう。

「二人とも仕事前にすまないね」

 庶務課の課長も私の前に座る。それにしても私と蓮さんが呼び出されるなんて、付き合っているのがバレたからだよね。今から説教かな。

「今日呼んだのは、二人が交際しているという噂が社内中に広まっているからその事実確認をと思ってな。さっき平国主任にも聞いたけど、事実ということでいいかな?」

 営業企画部の課長にガン見されながら聞かれて、私は緊張しながら『はい』と答える。

「赤崎さん、そんなに緊張しなくてもいいよ。悪い事してる訳じゃないんだから。まぁ相手が平国主任だから騒ぎになって大変だね」

 二人の課長は笑いながら私の方を見た。あれ? 何を言われるか構えてたけど、説教じゃない感じ?

「さっき庶務課で見た感じでは女子間でトラブルも無さそうだし、何かあったらいつでも相談するんだぞ」

 なるほど、呼び出されたのは噂の事実確認と蓮さんファンからの嫌がらせがないかの確認かな。

「はい、ありがとうございます。困った事がありましたら相談させて下さい」

 私は椅子から立ち上がり課長達に頭を下げる。

「君達二人なら大丈夫だとは思うが、くれぐれも仕事とプライベートは一緒にしないでくれよ」

 蓮さんも立ち上がり『分かってます』と頭を下げた。

 そして確認を終えた課長達は会議室から出て行った。

「ふぅ」

 緊張が解けてそのまま目の前の机に手をつく。

「美織おはよう」

 そう言って蓮さんはふわっと後ろから私を抱きしめてきた。

「ちょ……ちょっと、今課長達に仕事とプライベートは一緒にするなって釘刺されたばかりじゃん」

「人前では……だろ?」

 私は顔だけ後ろを向き蓮さんを見ると、ニヤッとした表情で私を見返してきた。

 私は『もう』と呆れたように言いながら、抱きしめている蓮さんの腕にそっと手を添える。本人には言わないけど、本当は嬉しかった。

「他の人に嫌な事言われてないか?」

「覚悟して会社に来たけど大丈夫だったよ」

「良かった。でも何かあったら課長より先に俺に言ってくれよ? ちゃんと守るから」

「うん」

「じゃあ仕事に戻るか」

 蓮さんは抱きしめていた手を離し、私達は会議室を出ようとドアまで歩く。

「美織」

何? と言いながら振り向くと、蓮さんはいきなり私にキスしてきた。

「夜、家で待ってるから」

 唇が離れると蓮さんは私の頭にポンと手を乗せて、いつもの笑顔を見せる。私は突然のキスに目を見開いたままだった。

 そして私達はそれぞれの部署に戻った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?

キミノ
恋愛
 職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、 帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。  二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。  彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。  無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。 このまま、私は彼と生きていくんだ。 そう思っていた。 彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。 「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」  報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?  代わりでもいい。  それでも一緒にいられるなら。  そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。  Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。 ――――――――――――――― ページを捲ってみてください。 貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。 【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。

幼馴染以上恋人未満 〜お試し交際始めてみました〜

鳴宮鶉子
恋愛
婚約破棄され傷心してる理愛の前に現れたハイスペックな幼馴染。『俺とお試し交際してみないか?』

クリスマスに咲くバラ

篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~

けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。 ただ… トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。 誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。 いや…もう女子と言える年齢ではない。 キラキラドキドキした恋愛はしたい… 結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。 最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。 彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して… そんな人が、 『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』 だなんて、私を指名してくれて… そして… スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、 『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』 って、誘われた… いったい私に何が起こっているの? パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子… たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。 誰かを思いっきり好きになって… 甘えてみても…いいですか? ※after story別作品で公開中(同じタイトル)

Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

鳴宮鶉子
恋愛
Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

処理中です...