溺愛なんてされるものではありません

彩里 咲華

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主任×私×これから

ストーリー41

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「あれ? 赤崎さんだ。新年早々会えるなんて俺達やっぱり特別な縁がありそうだね」

 この聞き覚えのある爽やかな声……クルッと振り返ると高成さんがいた。

「高成さんも初詣ですか?」

「うん。友達と来たんだけど、赤崎さんが居るのが見えたからこっちに来てみた。清水さんと来たの?」

「えっ……えっと……」

 蓮さんと来たなんて言えないし、返事に困る。どうしようと裕香と目を合わせた。高成さんはニコニコしながら私の返事を待っている。

「やっぱ美織じゃん。あけおめ~」

 困っている私の後ろからまた聞き覚えのある声がする。パッと声のする方を見ると、やっぱり杉村さんがいた。

「杉村さんも初詣来てたんですか」

「まぁなって、何で高成がいるんだよ。あ~あ、新年早々嫌なもの見たわ」

「それはこっちのセリフだっつぅの。お前こそ邪魔だから早くどっか行けよ」

 さっきまでニコニコしていた高成さんも、杉村さんを見ると敵対心を露わにした。本当に仲の悪い二人だな。それよりもまた変な状況になってきたしどうしよう。逃げ出したいよ。

 高成さんと杉村さんの言い合いも段々ヒートアップしてきて、周りの参拝客も注目し始める。

 恥ずかしいのもあるけど、私はただでさえ蓮さんと一緒にいれないストレスもあり、何だか腹が立ってきた。もうガツンと一発言ってやろうかな。

「またお前らか」

 ガツンと言おうとした私の後ろから呆れたように声をかけてきたのは蓮さんだった。

「あっ主任も初詣ですか? あけましておめでとうございます」

 蓮さん、助けに来てくれたんだ。高成さんと杉村さんはピタッと言い争いをやめて蓮さんに挨拶をする。

「新年の挨拶はいいが、お前らまた赤崎さんに迷惑かけてるんじゃないのか?」

「だってコイツが……」

 高成さんと杉村さんは同時にお互いを指差し人のせいにしている。この二人、実は似た者同士かも。

 蓮さんは二人の様子を見てフゥと一息つく。そして私の隣に立ち、事もあろうか人前で私の肩を抱き寄せ、私は蓮さんの方に引き寄せられた。

「言っておくが、美織は俺の彼女だからな。お前ら美織を口説くなら……覚悟しとけよ」

 蓮さんの言葉を聞いて、時が止まったかのように周りが静かになる。もちろん私も何が起きたのか頭が回らず固まってしまった。

 それから数秒後、蓮さんの言葉が頭に入ったのか今度は驚きの声や悲鳴が飛び交う。

「主任が赤崎さんと……!?」

「マジで!?」

「れれれれれれ蓮様、嘘でしょ!?」

 私と蓮さんは痛い程の視線を浴びるが私はまだ頭が真っ白で、今何が起きてるか把握出来てない。

「あースッキリした。じゃあ家に帰ろうか、美織」

 蓮さんはそう言うとみんなの言葉を全部スルーして、私の肩を抱いたまま歩き出し神社を後にした。

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