溺愛なんてされるものではありません

彩里 咲華

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彼女の結論ー 蓮side ー

ストーリー33

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「さて帰るか」

 手際よく仕事を終わらせて会社を出た。電車に乗り、夜ご飯に美織を誘おうかどうか悩んでいる。

 一応別れようという言葉は撤回してもらったが、やっぱり家に誘うのは元彼の件が解決してからがいいのだろうか。

 ……でも美織に会いたい。

 気がつくともう家に着いていた。美織は帰ってきてるのか……自分の部屋に入る前に美織の部屋の方を見る。

「こんなに近くにいるのにな」

 小さく呟いて自分の部屋に入った。何度も美織に連絡をしようとスマートフォンを取り出したが、やっぱり我慢する事に決めた。

 簡単に食事を済ませて風呂に入る。そして何気にスマートフォンを見ると着信があった。

「美織!?」

 美織からの着信と分かると急いで掛け直す。

「もしもし蓮さん?」

 美織の声だ。この声を聞くだけで表情が緩んでしまう。

「悪いな、風呂に入ってた。どうした?」

「あっうん、蓮さんに話があって……」

「今、家か?」

「うん」

「じゃあ美織の部屋に行こうか?」

 美織の声が聞けたのは嬉しいけど、声だけじゃなくやっぱり会いたくなった。

「私がそっちに行っていいかな?」

「分かった。鍵開けとくよ」

 そう言って電話を切ってテーブルにスマートフォンを置く。そして玄関のドアを開けて美織が来るのを待った。

 少ししてから美織の部屋の玄関のドアが開く。中からダボっとした大きめのパーカーにレギンスを履いた美織が出てきた。いつもの地味目なスエットじゃないせいか雰囲気が違う気がする。

 はっきり言って凄く可愛い。思わず見惚れてしまった。

「あっ、蓮さん」

 美織は俺の元へトコトコやってきた。

「なんかいつもと服装が違うな」

「少しは女子力アップした?」

「……あぁ」

 上目遣いで俺を見ながらニッコリする美織を、思わず胸に引き寄せて抱きしめた。

 美織は会うたびに綺麗になっていく。ただでさえ高成の美織好き好きアピールに嫉妬してるのに、元彼まで現れて俺は少し焦っているのかもしれない。

「蓮さん?」

 抱きしめている俺の腕の中から、美織は顔を上げ俺を見た。

「悪い。中に入ろう」

 美織と一緒に部屋に入る。外の冷たい空気に触れ冷えた体を暖めようと紅茶を入れた。

「ご飯は食べたか?」

「うん。買い物ついでに裕香と外で食べてきた。今着ているこのパーカーも今日買ったんだ」

 そう言って温かい紅茶をフゥフゥしながら飲み始めた。

「それで話っていうのは?」

「うん……あのね、明日仕事が終わったら杉村さんと話してくる。年末年始の休暇前に解決したいし」

「……そうか」

 それ以上言葉が出てこなかった。自分で話をしてこいと美織に言ったが、本当は元彼なんかと会って欲しくはない。

 美織に対する半端ない独占欲……。

 こんな俺の気持ちを知ったら美織はどう思うだろうか? 取り敢えず今はまだ知られないようにクールに装う事しかできない。

「何時になるか分からないけど、明日も蓮さんの部屋に来ていい?」

「もちろん。美織が来るまで待つよ」

「ありがとう」

 この後、紅茶を飲みながら話題を変えて少し話をして美織は自分の部屋に帰って行った。

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