溺愛なんてされるものではありません

彩里 咲華

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主任×私×デート

ストーリー17

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「……もう限界。赤崎、そろそろ返事を聞いてもいいか?」

 私を抱きしめながらそう言ってきた。返事…か。

 ん? 返事って何の?

 私の頭にはクエスチョンマークがポンポンポンと浮かび上がる。

「あの……返事って何のことでしょうか?」

 私の言葉を聞いて主任はゆっくりと私を離し、静かな声で私に聞く。

「……俺、赤崎に告白したと思ったんだが?」

「こ、告白っていつ?……あっさっきのイルカショーの後?」

 私はイルカショーの後に言われた『俺、やっぱり赤崎の事好きだわ』という主任の言葉を思い出した。

「いや、一緒にワインを飲んだ時だけど……」

 私はワインを飲んだ日の記憶を思い出してみる。キスされた事で頭がいっぱいになっていたけど、そういえばそれっぽいの言われたような……。

『高成じゃなくて……俺じゃダメか?』

 突然ポワンと頭に現れた主任のセリフ……あれ告白だったんだ。私はパッと主任の顔を見る。

「もしかして……告白と認識されてなかったのか?」

「ごめんなさい。あの時は頭が真っ白になってて……その……」

 怒ったかな。車内は沈黙して雨音だけが聞こえる。

「じゃあもう一度……俺は赤崎の事が好きだ。付き合ってくれないか?」

 真剣な眼差しで私を見つめてくる。どうしよう。胸がやばいくらいドキドキしている。返事……今度はちゃんと返事しなきゃ。でも上手く言葉が出てこない。

 私は主任の胸に顔をぽふっと埋める。そして勇気を振り絞って『はい』と返事した。

「本当か!? 今更冗談でしたって言ってももう遅いからな」

 主任は私を力強く抱きしめる。そして小さな声で『ありがとう』と言った。

「主任、そろそろ髪を拭いた方が……風邪引いちゃいますよ」

 主任の胸から顔を上げ今度は私が主任の髪をタオルで拭いた。

「なんか照れるな、色々と」

 タオルで拭きながら主任の顔を見ると顔が少し赤くなっていて照れた表情になっていた。

「あっ主任、顔が赤くなってる」

「うるさい、見るな」

 主任は笑う私の頭をガシッと掴み、視線を外された。そしてタオルを奪われ主任は濡れた部分をタオルで軽く拭く。

「よし、出発するか」

 水族館を出てしばらく車を走らせると、すっかり雨もやんでしまった。

「この後どうする?」

 運転しながら主任が聞いてきたので私は少し考えて答える。

「……帰りましょうか」

「帰るって……やっぱり俺とのデートが良くないからか? それとも俺からいやらしいオーラが出ているのか?」

 なんだかどんよりした顔で私に聞いてくる。全然そんなんじゃないんだけど……。

「違いますよ。だって雨に濡れちゃったし、主任も運転に疲れているだろうし、何より……家で主任とゆっくりしたいなぁと思って」

 私はニッコリして主任を見る。

「そういう事なら……じゃあ酒と食料を仕入れて帰るか。何食べたい?」

「焼き鳥食べたい」

「本当に肉が好きだな」

 帰り道、お酒と焼き鳥を買って主任の部屋に戻った。

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