溺愛なんてされるものではありません

彩里 咲華

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主任×私×急展開

ストーリー13

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「あれ、赤崎さんだ。うちの課で何してるの?」

 コピーをとっていると、後ろから高成さんが声をかけてきた。ちょうど営業先から戻ってきたところらしい。

「営業事務代行中です」

「へぇそうなんだ」

 高成さんは自分のデスクへ行き鞄を置いた。コピーが終わり、私は会議資料をまとめてホッチキスで止めていく。するとまた高成さんが私の元へやってきた。

「赤崎さん、夜飲みに行かない?」

「いえ、やめときます。あっそうだ。私、高成さんとお付き合いできません。ごめんなさい」

「えぇ!?」

 私は大きめな高成さんの声に驚き、手に持っていた会議資料を床に落としてしまった。

「突然大きな声出されたらびっくりするじゃないですか」

「ごめん」

 私と高成さんは小声で言葉のやり取りをしながら床に散らばった会議資料をしゃがみ込んで拾う。

「でもさ、このタイミングで告白の返事するなんて……しかも俺振られたよね、今」

「だって高成さんが誘ってきたから、きちんとお断りしておこうと思って」

「えー、この後の仕事のモチベーションが下がるわ~」

「それは……自分で何とかして下さい」

 しゃがみ込んでコソコソ話をしている私達の後ろから、主任が声をかけてきた。

「仲が良いところ邪魔して申し訳ないが高成、課長が呼んでるぞ」

「はい。じゃあね、赤崎さん」

 高成さんは笑顔で私に言うと、そのまま課長の元へ行った。そして高成さんが居なくなった後、主任はしゃがみ込んで散らばった会議資料を拾い始めた。

「高成と仲が良いんだな」

 主任は静かな声でボソッと呟き、拾った会議資料を私に渡す。

「あ……ありがとうございます」

 そんな事ないです……そう言いたかったけど言えず、拾ってくれたお礼を言いながら会議資料を受け取った。

 この後、主任は外回りで殆ど部署にいなかったので顔を合わせることはなかった。

 そして次の日も営業企画課で事務の仕事をする事になった。

「赤崎さん、この資料もお願いしていいかな」

「はい」

 気まずい中、私は主任から資料を受け取りパソコンの前に座る。入力しようと思って資料を見ると、青の付箋ふせんに書かれたメモが添え付けられていた。

『この前の夜の事、まだ怒っているか?』

 綺麗な字で書かれたメモを見た私は思わず主任の方を見た。

 主任は勘違いをしている。私は最初から怒ってないし、ただキスされてドキドキして恥ずかしさでいっぱいで……主任と顔を合わせ辛いと言うだけなのに、主任から見たら私は怒っているように見えたのかな。

 私は素早く資料を見ながら入力をして、ピンクの付箋ふせんで返事をした。

『最初から怒ってませんけど』

 資料に付箋ふせんをつけて、主任に確認お願いしますと言って渡す。

「こっちの資料もお願いします」

 また資料を渡された。座って確認するとまた青の付箋ふせんがついている。

『じゃあまた夜ご飯に誘ってもいいかな?』

 そのメッセージを見た時、私は何だかんだくすぐったい気持ちになりクスッと笑った。そして返事の付箋ふせんをつけて主任の元へ行く。

『お肉とビールがあるなら行きます』

 私の返事を見た主任は笑みを浮かべて私を見る。

「ありがとう赤崎さん。了解です」

 極上の笑顔を見せられた私は、キュンキュンしながら頬を赤らめて、でもそれを気付かれないように必死に冷静を装った。

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