溺愛なんてされるものではありません

彩里 咲華

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主任×私×急展開

ストーリー9

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 そして月曜日、私は裕香を含めた庶務課女子達と給湯室で話をする。

「それで? 蓮様とのデートはどうだったの?」

 みんな裕香と主任のデートに興味津々だ。ニヤニヤしながら話を聞き出す。

「デートは凄く良かったんだけど、もう隣にいるだけで緊張しちゃって映画も頭に入らないし食事も喉を通らなかったわ。それにエスコートが上手くてシンデレラになった気分よ。でもやっぱり御曹司の彼と私では次元が違うし、良い夢見させてもらっちゃった」

「いつも冷静で落ち着いた裕香をここまで緊張させるとは、さすが蓮様だわ。そのまま夜も一緒に過ごせば良かったのに。夜の蓮様って何か凄そうじゃない? って服を脱いだ蓮様を想像するだけで鼻血出そう」

 みんな言いたい放題だな。私は黙って話を聞きながら持っていくお茶を準備する。

「隣にいるだけで緊張するのに、夜って無理だから。私なんかに平国主任のお相手は務まらないわ。心臓がいくつあっても足りない」

 なるほど、裕香は緊張し過ぎたのが限界で早めにデートを切り上げたのか。でも主任になんて言おう。

「あはは、やっぱり身の丈にあった彼氏見つけなきゃね。そういや蓮様、どこかの社長令嬢と結婚するとか噂なかった?」

「本人は否定してたけど、平国主任に合うのはやっぱり社長令嬢よね」

 裕香達は盛り上がりながら庶務課で配るお茶をお盆に乗せ給湯室を出る。私も一番最後に給湯室を出た。

!!?

「あれ?美織が居ない。おーい美織、庶務課戻るよー」

 私に声をかけて、みんなは先に庶務課に戻っていった。

 その頃私は、突然誰かに手を掴まれて給湯室の横にある会議室の中へグィッと引き寄せられた。

「し、主任!?」

 私を会議室へ引き寄せたのは主任だった。会議室には私と主任以外いない。

「なぁ赤崎、夜の俺はどう凄いんだ?」

 耳元で囁くように話しかけてくる。もしかして給湯室での私達の会話を聞いてた?

「わ、私は何も言ってませんよ」

 私は主任からパッと距離をとり少し動揺しながら話す。

「給湯室の前を通りかかったら、赤崎達がなんか興味深い話をしているのが聞こえたから、悪いが給湯室の外から会話を聞かせてもらった」

 やっぱり聞いたのか。

「あれは俺の話だよな? という事は、俺のデートはダメだったって事か?」

「いや、ダメとかじゃなくて……デートが良すぎたんじゃ…」

「でも二度目のデートはない感じだったよな」

 まぁ二度目のデートはないだろうな。裕香も心臓がいくつあっても足りないって言ってるし。

「……赤崎、もちろん今日家に来るよな?」

「えっ何で?」

「俺の話……聞いてくれるよな?」

 主任は怖いくらい威圧的な笑顔で私を見てくる。

「……はい、お邪魔させていただきます」

「じゃあ夜待ってるから」

 主任は私の肩をポンっとして会議室を出た。あんな顔されたら断れないし、まぁデートの反省会みたいなものかな……この時は単純にそう思っていた。

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