6 / 46
主任×私×熱
ストーリー6
しおりを挟む
「……なんていきなり言われても困るよね。でも本気だから俺との事考えてくれると嬉しいな」
「……は、はい」
それから私は一人で家に帰る。高成さんは家まで送ると言ってくれたけど一人になりたかったし、タクシーで帰るから大丈夫ですと断った。
家の近くでタクシーを降りて、少し公園に立ち寄る。薄暗い外灯に照らされたベンチに座ろうかと思ったけど、何となくブランコのところへ行った。
高成さんに告白されて私は混乱していた。ブランコに乗って揺れながら、自分の気持ちを整理してみる。
高成さんから告白された。私にとって待望の彼氏……何も考えることないじゃない。告白を受けて付き合っちゃえばいいじゃない。今日だって楽しかったし。
なのに、私は何に悩んでいるの?
分からない…分からないけど……なんか今、凄く主任に会いたい。
気がつくと私はスマートフォンを手に持って主任に電話をかけていた。
「もしもし赤崎? どうした?」
主任は私からの電話に不思議そうにしている。
「主任……ただいま」
「ただいまって、家の中か?」
「残念。まだ家の前の公園でした」
私、何言ってるんだろう。こんな事しても主任は困るだけなのに。
何故かしばらく沈黙が続く。呆れちゃったかな。下を向いたままため息をつく。
「赤崎」
名前を呼ばれて顔を上げると、私の前にスマートフォンを片手に持った主任がいた。走ってきたのか、切らした呼吸を整えている。
「高成と何かあったのか?」
主任は心配そうな表情で私に話しかける。
「何も……ないですよ? 今日は楽しかったし」
「とにかく風邪引くから部屋で話そう」
そう言ってブランコに座る私に手を差し出してきた。その手に私は自分の手を乗せる。
「手、冷たくなってるじゃないか。早く行くぞ」
私達は手をぎゅっと繋いでマンションに戻る。恥ずかしかったけど、繋いだ手に心地良さを感じていた。
そしてそのまま主任の部屋に入ると、主任は温かいお茶を入れてくれた。
「ありがとうございます」
私は床にペタンと座りお茶を飲む。温かいお茶が体の中をすうっと通っているのが分かった。
「私……高成さんに告白されました」
お茶を飲んで少し酔いも落ち着いた私は、俯き加減でゆっくり話を始めた。
「告白? 良かったじゃないか。高成は性格もいい男だぞ」
「いい人ですよね、高成さん。私には勿体ないくらい。告白されて嬉しいはずなのに……私、返事が出来なかったんです」
「何で?」
「そんなの分かりません。でも高成さんから見た私のイメージって、本当の私と全然違うんですよ」
「確かに会社での赤崎しか知らなかったら、俺も外見から可愛らしい癒し系なイメージを持ったかもしれない。でも高成はどんな赤崎でもちゃんと受け止めてくれると思うぞ」
そう言いながら主任は微笑んでくれた。干物系女子の私を受け止めてくれるのかな……いや、ドン引きされる姿しか想像できない。
「でも、ちゃんと相手の事を考える赤崎は偉いよな」
主任はテーブル越しに私の頭をポンっとした。その拍子に何故だか分からないけど、私の目からは涙が流れ始める。
「えっやだ、何で涙が……」
自分でも訳が分からず驚きながら手の甲で涙を拭う。
すると主任は立ち上がり、私の隣に来た。そして私をふわっと抱きしめる。
「よく分からないけど、泣きたい時は泣いた方がいいと思う。泣き顔は見ないようにするから……とりあえず泣いとけ」
抱きしめながら私の耳元で囁くように言った。私は言葉に甘え、しばらく主任の胸を借りた。
抱きしめられてどの位の時間が経っただろう。私の涙は止まったけど、主任から離れるタイミングが分からない。
どうしよう。冷静になると、なんかめっちゃ恥ずかしい。主任、今どんな顔しているのかな。私は顔を赤くさせながら主任の胸に顔を埋める。
「あ、赤崎……そろそろ落ち着いたか?」
主任が声をかけてきて、私は慌てて主任からパッと離れた。
「ご、ごめんなさい。私……」
「い、いや全然いいんだ。むしろ勝手に抱きしめてしまって悪かった」
そう言いながら二人ともお互いから視線を逸らし少し沈黙する。恥ずかしくてあまり顔は見れなかったけど、主任も顔が赤くなっていた気がした。
「今日は本当にごめんなさい。私帰りますね。おやすみなさい」
私はパッと立ち上がりペコっと頭を下げて、逃げるように自分の部屋に戻った。
自分の部屋に戻った私は、靴も脱がずに玄関のドアにもたれかかる。
私、何を思った?
涙の理由……
高成さんは会社での私に好意を持ってくれた。本当の私は知らない。こんな私を高成さんに知られるのが怖い?
……なんか違う。
もしかして、主任が私と高成さんが上手くいけばいいと思っているから?
いやいや違う……違うと思いたい。
もう何で私の頭の中にこんなに主任が出てくるんだろう。私は自分自身に若干キレ気味になった。
「……は、はい」
それから私は一人で家に帰る。高成さんは家まで送ると言ってくれたけど一人になりたかったし、タクシーで帰るから大丈夫ですと断った。
家の近くでタクシーを降りて、少し公園に立ち寄る。薄暗い外灯に照らされたベンチに座ろうかと思ったけど、何となくブランコのところへ行った。
高成さんに告白されて私は混乱していた。ブランコに乗って揺れながら、自分の気持ちを整理してみる。
高成さんから告白された。私にとって待望の彼氏……何も考えることないじゃない。告白を受けて付き合っちゃえばいいじゃない。今日だって楽しかったし。
なのに、私は何に悩んでいるの?
分からない…分からないけど……なんか今、凄く主任に会いたい。
気がつくと私はスマートフォンを手に持って主任に電話をかけていた。
「もしもし赤崎? どうした?」
主任は私からの電話に不思議そうにしている。
「主任……ただいま」
「ただいまって、家の中か?」
「残念。まだ家の前の公園でした」
私、何言ってるんだろう。こんな事しても主任は困るだけなのに。
何故かしばらく沈黙が続く。呆れちゃったかな。下を向いたままため息をつく。
「赤崎」
名前を呼ばれて顔を上げると、私の前にスマートフォンを片手に持った主任がいた。走ってきたのか、切らした呼吸を整えている。
「高成と何かあったのか?」
主任は心配そうな表情で私に話しかける。
「何も……ないですよ? 今日は楽しかったし」
「とにかく風邪引くから部屋で話そう」
そう言ってブランコに座る私に手を差し出してきた。その手に私は自分の手を乗せる。
「手、冷たくなってるじゃないか。早く行くぞ」
私達は手をぎゅっと繋いでマンションに戻る。恥ずかしかったけど、繋いだ手に心地良さを感じていた。
そしてそのまま主任の部屋に入ると、主任は温かいお茶を入れてくれた。
「ありがとうございます」
私は床にペタンと座りお茶を飲む。温かいお茶が体の中をすうっと通っているのが分かった。
「私……高成さんに告白されました」
お茶を飲んで少し酔いも落ち着いた私は、俯き加減でゆっくり話を始めた。
「告白? 良かったじゃないか。高成は性格もいい男だぞ」
「いい人ですよね、高成さん。私には勿体ないくらい。告白されて嬉しいはずなのに……私、返事が出来なかったんです」
「何で?」
「そんなの分かりません。でも高成さんから見た私のイメージって、本当の私と全然違うんですよ」
「確かに会社での赤崎しか知らなかったら、俺も外見から可愛らしい癒し系なイメージを持ったかもしれない。でも高成はどんな赤崎でもちゃんと受け止めてくれると思うぞ」
そう言いながら主任は微笑んでくれた。干物系女子の私を受け止めてくれるのかな……いや、ドン引きされる姿しか想像できない。
「でも、ちゃんと相手の事を考える赤崎は偉いよな」
主任はテーブル越しに私の頭をポンっとした。その拍子に何故だか分からないけど、私の目からは涙が流れ始める。
「えっやだ、何で涙が……」
自分でも訳が分からず驚きながら手の甲で涙を拭う。
すると主任は立ち上がり、私の隣に来た。そして私をふわっと抱きしめる。
「よく分からないけど、泣きたい時は泣いた方がいいと思う。泣き顔は見ないようにするから……とりあえず泣いとけ」
抱きしめながら私の耳元で囁くように言った。私は言葉に甘え、しばらく主任の胸を借りた。
抱きしめられてどの位の時間が経っただろう。私の涙は止まったけど、主任から離れるタイミングが分からない。
どうしよう。冷静になると、なんかめっちゃ恥ずかしい。主任、今どんな顔しているのかな。私は顔を赤くさせながら主任の胸に顔を埋める。
「あ、赤崎……そろそろ落ち着いたか?」
主任が声をかけてきて、私は慌てて主任からパッと離れた。
「ご、ごめんなさい。私……」
「い、いや全然いいんだ。むしろ勝手に抱きしめてしまって悪かった」
そう言いながら二人ともお互いから視線を逸らし少し沈黙する。恥ずかしくてあまり顔は見れなかったけど、主任も顔が赤くなっていた気がした。
「今日は本当にごめんなさい。私帰りますね。おやすみなさい」
私はパッと立ち上がりペコっと頭を下げて、逃げるように自分の部屋に戻った。
自分の部屋に戻った私は、靴も脱がずに玄関のドアにもたれかかる。
私、何を思った?
涙の理由……
高成さんは会社での私に好意を持ってくれた。本当の私は知らない。こんな私を高成さんに知られるのが怖い?
……なんか違う。
もしかして、主任が私と高成さんが上手くいけばいいと思っているから?
いやいや違う……違うと思いたい。
もう何で私の頭の中にこんなに主任が出てくるんだろう。私は自分自身に若干キレ気味になった。
0
お気に入りに追加
159
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
クリスマスに咲くバラ
篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。
ただ…
トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。
誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。
いや…もう女子と言える年齢ではない。
キラキラドキドキした恋愛はしたい…
結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。
最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。
彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して…
そんな人が、
『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』
だなんて、私を指名してくれて…
そして…
スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、
『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』
って、誘われた…
いったい私に何が起こっているの?
パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子…
たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。
誰かを思いっきり好きになって…
甘えてみても…いいですか?
※after story別作品で公開中(同じタイトル)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる