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主任×私×悩み
ストーリー1
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ーー 女子社員Aさんの証言
「本人は母方の姓を名乗って隠してますけど、実は社長御曹司らしいですよ。バレバレですよね~。もう全身からオーラ出まくりだし」
ーー 女子社員Bさんの証言
「もうすぐ結婚するらしいですよ。お相手は超大手企業の社長令嬢とか。タワーマンションの最上階に二人で住むんだって」
こんな噂をされる彼の名は『平国 蓮』30歳。
営業企画課の主任を務めている。
サラサラな黒髪と切れ長の目から見た目はクールなイメージだが、時折見せる優しげな表情には気品が溢れ、若干色気すら感じさせる。
そして背も高く、モデル並みにスラっとしたスタイルを持ち合わせている。
容姿端麗だけではない。仕事でも優秀で上司からの評価も高く、部下からの信頼も厚い。
もちろん性格も良く真面目な彼の事を悪く言う人はいないし、女性関係で問題を起こした事もない。というかこんな完璧過ぎる彼には、庶民女子にはとてもじゃないけど恐れ多くて近寄れないでいた。
そんな男性とは縁がないはずなのに、何故か今、私の目の前には噂の平国 蓮がいる。
「……赤崎、話聞いてる?」
「はいはい、ちゃんと聞いてますって」
私は目の前に置かれたすき焼き鍋の中から肉を取り、流すように返事した。
「あー美味しい」
「肉ばかり食べないで野菜もバランスよく食べろよ」
「はいはい」
今、私『赤崎 美織』は平国主任の部屋で一緒にすき焼きを食べている。
普段外に出れば可愛らしい癒し系と(稀に)言われるが、家では長い髪を一つにまとめ、顔はほぼスッピン状態。服もお世辞にもオシャレとは言えないような地味なスエット……完全に色気より食い気のやや干物系女子だ。
11月に入って急に寒くなり、お鍋料理が美味しい季節になった。すき焼き食べたいなぁと冗談交じりで言ったら、平国主任が作ってくれた。彼は料理が好きらしい。ちなみに私は料理は大の苦手だ。
そんな事はさておき、何故私が会社で噂の平国主任と一緒にいるかというと、マンションのお隣さんだからだ。
私は最近このマンションに引っ越してきた。そして隣の部屋に挨拶をしに行ったら、まさかの平国主任が部屋から出てきたのだ。
社長御曹司と噂の平国主任がこんなマンションに住んでいるはずがない、きっとそっくりさんだ……と思ったけど、全身から溢れる気品溢れるオーラは正しく平国主任そのものだった。
とはいえ、私は庶務課で仕事をしているので部署が違う平国主任と会社で会う事はほとんどない。実際に主任は私を見ても会社の人間とは気づかなかった。
まぁ私は平国主任の事を知ってたけど……有名だし。
言わなくても良かったかもしれないが、挨拶ついでに私も同じ会社で働いてますと言ってみたら、久しぶりに同じ会社の女性が話をしてくれると喜ばれ、気がつくと仕事後に主任の部屋で主任の作ったご飯を一緒に食べながら話をするようになっていた。
これだけははっきり言っておくけど、私と主任は付き合っているとかそういう恋愛関係は一切ない。
「それでさっきの話だけど、俺の何がいけないのだろうか」
主任は箸を止め俯くと一回ハァとため息を吐いた。話をして分かった事だけど、クールそうな外見とは違い、割とお喋りだし話しやすい人だ。そしてそんな主任には悩みがある。
その悩みとは『彼女が出来ない』という事らしい。
その話を聞いた時は聞き間違いかと思い、三回くらい聞き返した。でも聞き間違いではなかった。
何の冗談かと思いきやこのイケメン主任は本気で悩んでいる。その気になればすぐに彼女の一人や二人できるでしょ? と言ってみたが、彼女なんてそう簡単には出来ないだろうと一喝された。
「主任には完璧過ぎるイメージがあるから、女性は敬遠するのかもしれませんね。見た目とは違って本当は庶民的ですよって言ってみたらどうですか?」
「社長御曹司とかタワーマンションの最上階に住んでいるとかだろ? そんなのとっくに否定したさ。でも、またまた謙遜しちゃって……とか言われて信用してくれないんだ」
「あー……何か全身から高貴なオーラが出てますもんね」
そう言いながら私はすき焼きに箸を伸ばす。
「その意味不明な高貴なオーラって何だ!? 女性にモテたいとか贅沢は言わない。一人でいい。一人でいいから俺の事を普通に見て欲しい」
いやいやめっちゃモテてますよーと言いかけたけど、話が面倒になってきたので言うのをやめた。
「そういや社長令嬢と結婚するって話もありますけど」
「そんな訳ないだろう? 庶民の俺がどうやって社長令嬢と知り合うんだ。あー、なんでこんなに俺のデマ情報が流れているんだ。嫌がらせか? 嫌われているのか、俺」
主任は頭を抱え始める。イケメンが悶絶する様子を見て私は、主任ってなかなか面白い人だと心の中で思った。
「赤崎、俺に足りないものは何だ?世の中の女性は男に何を求めているんだ?」
そんな事聞かれてもなんて分からないし、そもそも主任は完璧過ぎるし、私ごときがアドバイスなんて恐れ多いわ。
私の思いとは裏腹に、主任はじぃっと私の顔を見て答えを求めている。
「……あーえっと、何ですかね? そう言えば男性に溺愛される恋愛小説とか好きな女性多いみたいですよ」
困った私の苦肉の答えを主任から視線を逸らし気味に言うと、主任はなるほどというような表情をした。
「溺愛か……溺愛ねぇ……溺愛ってどうしたらいいんだ?」
主任は真面目な顔して質問してくる。
「それは……自分で考えて下さい」
私はそう言って立ち上がり、食べ終わった食器をキッチンへ運ぶ。食べるだけ食べて帰るのは失礼かと思い、後片付けはちゃんとして帰るようにしている。
「じゃあ帰りますね。ご馳走さまでした」
後片付けも終わり、私は玄関で靴を履く。
「気をつけて帰れよ」
隣に帰るだけなのに、主任はいつも見送ってくれる。本当に真面目な人だ。
「本人は母方の姓を名乗って隠してますけど、実は社長御曹司らしいですよ。バレバレですよね~。もう全身からオーラ出まくりだし」
ーー 女子社員Bさんの証言
「もうすぐ結婚するらしいですよ。お相手は超大手企業の社長令嬢とか。タワーマンションの最上階に二人で住むんだって」
こんな噂をされる彼の名は『平国 蓮』30歳。
営業企画課の主任を務めている。
サラサラな黒髪と切れ長の目から見た目はクールなイメージだが、時折見せる優しげな表情には気品が溢れ、若干色気すら感じさせる。
そして背も高く、モデル並みにスラっとしたスタイルを持ち合わせている。
容姿端麗だけではない。仕事でも優秀で上司からの評価も高く、部下からの信頼も厚い。
もちろん性格も良く真面目な彼の事を悪く言う人はいないし、女性関係で問題を起こした事もない。というかこんな完璧過ぎる彼には、庶民女子にはとてもじゃないけど恐れ多くて近寄れないでいた。
そんな男性とは縁がないはずなのに、何故か今、私の目の前には噂の平国 蓮がいる。
「……赤崎、話聞いてる?」
「はいはい、ちゃんと聞いてますって」
私は目の前に置かれたすき焼き鍋の中から肉を取り、流すように返事した。
「あー美味しい」
「肉ばかり食べないで野菜もバランスよく食べろよ」
「はいはい」
今、私『赤崎 美織』は平国主任の部屋で一緒にすき焼きを食べている。
普段外に出れば可愛らしい癒し系と(稀に)言われるが、家では長い髪を一つにまとめ、顔はほぼスッピン状態。服もお世辞にもオシャレとは言えないような地味なスエット……完全に色気より食い気のやや干物系女子だ。
11月に入って急に寒くなり、お鍋料理が美味しい季節になった。すき焼き食べたいなぁと冗談交じりで言ったら、平国主任が作ってくれた。彼は料理が好きらしい。ちなみに私は料理は大の苦手だ。
そんな事はさておき、何故私が会社で噂の平国主任と一緒にいるかというと、マンションのお隣さんだからだ。
私は最近このマンションに引っ越してきた。そして隣の部屋に挨拶をしに行ったら、まさかの平国主任が部屋から出てきたのだ。
社長御曹司と噂の平国主任がこんなマンションに住んでいるはずがない、きっとそっくりさんだ……と思ったけど、全身から溢れる気品溢れるオーラは正しく平国主任そのものだった。
とはいえ、私は庶務課で仕事をしているので部署が違う平国主任と会社で会う事はほとんどない。実際に主任は私を見ても会社の人間とは気づかなかった。
まぁ私は平国主任の事を知ってたけど……有名だし。
言わなくても良かったかもしれないが、挨拶ついでに私も同じ会社で働いてますと言ってみたら、久しぶりに同じ会社の女性が話をしてくれると喜ばれ、気がつくと仕事後に主任の部屋で主任の作ったご飯を一緒に食べながら話をするようになっていた。
これだけははっきり言っておくけど、私と主任は付き合っているとかそういう恋愛関係は一切ない。
「それでさっきの話だけど、俺の何がいけないのだろうか」
主任は箸を止め俯くと一回ハァとため息を吐いた。話をして分かった事だけど、クールそうな外見とは違い、割とお喋りだし話しやすい人だ。そしてそんな主任には悩みがある。
その悩みとは『彼女が出来ない』という事らしい。
その話を聞いた時は聞き間違いかと思い、三回くらい聞き返した。でも聞き間違いではなかった。
何の冗談かと思いきやこのイケメン主任は本気で悩んでいる。その気になればすぐに彼女の一人や二人できるでしょ? と言ってみたが、彼女なんてそう簡単には出来ないだろうと一喝された。
「主任には完璧過ぎるイメージがあるから、女性は敬遠するのかもしれませんね。見た目とは違って本当は庶民的ですよって言ってみたらどうですか?」
「社長御曹司とかタワーマンションの最上階に住んでいるとかだろ? そんなのとっくに否定したさ。でも、またまた謙遜しちゃって……とか言われて信用してくれないんだ」
「あー……何か全身から高貴なオーラが出てますもんね」
そう言いながら私はすき焼きに箸を伸ばす。
「その意味不明な高貴なオーラって何だ!? 女性にモテたいとか贅沢は言わない。一人でいい。一人でいいから俺の事を普通に見て欲しい」
いやいやめっちゃモテてますよーと言いかけたけど、話が面倒になってきたので言うのをやめた。
「そういや社長令嬢と結婚するって話もありますけど」
「そんな訳ないだろう? 庶民の俺がどうやって社長令嬢と知り合うんだ。あー、なんでこんなに俺のデマ情報が流れているんだ。嫌がらせか? 嫌われているのか、俺」
主任は頭を抱え始める。イケメンが悶絶する様子を見て私は、主任ってなかなか面白い人だと心の中で思った。
「赤崎、俺に足りないものは何だ?世の中の女性は男に何を求めているんだ?」
そんな事聞かれてもなんて分からないし、そもそも主任は完璧過ぎるし、私ごときがアドバイスなんて恐れ多いわ。
私の思いとは裏腹に、主任はじぃっと私の顔を見て答えを求めている。
「……あーえっと、何ですかね? そう言えば男性に溺愛される恋愛小説とか好きな女性多いみたいですよ」
困った私の苦肉の答えを主任から視線を逸らし気味に言うと、主任はなるほどというような表情をした。
「溺愛か……溺愛ねぇ……溺愛ってどうしたらいいんだ?」
主任は真面目な顔して質問してくる。
「それは……自分で考えて下さい」
私はそう言って立ち上がり、食べ終わった食器をキッチンへ運ぶ。食べるだけ食べて帰るのは失礼かと思い、後片付けはちゃんとして帰るようにしている。
「じゃあ帰りますね。ご馳走さまでした」
後片付けも終わり、私は玄関で靴を履く。
「気をつけて帰れよ」
隣に帰るだけなのに、主任はいつも見送ってくれる。本当に真面目な人だ。
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