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クリスマスの夜に……
ストーリー82
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この日は昼過ぎから会社の用事で外出していた。
用事も終わり会社に戻ろうと歩いていると、私の横を見覚えのある黒のリムジンが通りかかった。そして私の前でハザードをつけて止まる。
「明日香さん、お久しぶりですわね」
リムジンの窓が開き、中から美玲さんがニッコリと微笑みながら声をかけてきた。
「……お久しぶりです、美玲さん」
私は精一杯笑顔を作る。
「ねぇ明日香さん。せっかくお会いした事ですし、少しお話ししませんか?」
「えっと、私今仕事中でして……」
断ろうとしたが美玲さんの笑顔を見ていると何も言えなくなり、結局私は美玲さんの乗るリムジンに乗り込んだ。
高級なリムジンの中で美玲さんと二人で話なんてかなり緊張する。どうしよう。
「そういえば明日香さん、高瀬さんとお別れされたとか」
「えっ? あ、はい。実はそうなんです」
突然の話にドキッとする。そういえば高瀬さんと付き合っている設定だったっけ。高瀬さんが別れた事にしたのかな。
「私ったら辛いお話をしてしまってごめんなさい」
「気にしないで下さい。高瀬さんとは今でも良好な関係ですから」
頭を下げて謝る美玲さんに、私は慌てて声をかける。
「明日香さんが羨ましいですわ。私も強くならないと……」
「えっ?」
何故か切なそうに微笑む美玲さんに、私はなんて声をかけて良いか分からない。
「高瀬さんからお聞きになってないですか? 私と進藤さんの事……」
「い、いえ……何も」
「……秋の始まりくらいだったかしら。実は私達、婚約解消しましたの」
婚約解消って……?
その言葉を聞いた時、私の頭の中は真っ白になった。
「何で……」
「私から婚約解消を申し出ましたの……なんて本当は進藤さんにお願いして私から断った事にしてもらいました。振られたのは私の方です」
美玲さんは一回目を閉じて微笑み、ゆっくりと目を開き話し始めた。
「私、知ってました。進藤さんは会社の為に私との婚約を断れなかったことを。頑張ったんですけど、進藤さんの気持ちが私に向くことはありませんでした」
私はただただ美玲さんの話を黙って聞く。
「この先、進藤さんと結婚の話を進めて良いものか悩んでいた時……初めて進藤さんが私に本音を教えてくれました。『想っている人がいる』ということを。立場のある人ですから結婚の事、相当悩んだと思います。でも進藤さんは婚約解消を選んだ。相当大切に想う方なんでしょうね」
私は話を聞きながら胸が苦しくなり泣きそうになっていた。
「婚約解消の代償……有栖川財閥との縁が切れた事で、進藤コーポレーションから撤退する取引先も数多くおります。会社経営も危なくなるかもしれません。ただ、進藤さんのような優秀な方がこのままフェードアウトするのは勿体ないと思いました。だからこの婚約は私の身勝手で解消したという事にして、進藤さんへの影響を最小限に留める事にしたのです」
美玲さん、なんていい人なんだろう。本当に進藤さんの事好きだったんだろうな。
「まぁ私にとっても私からお断りしたっていう方が都合が良かったのもありますけどね。振られたとなると私の格が落ちてしまうので」
美玲さんは可愛らしい笑顔を見せる。そして私の胸の苦しみはMAXを迎え、美玲さんに自分の気持ちを伝えた。
「美玲さん……私、本当は高瀬さんとお付き合いしてないんです。ずっと進藤さんの事が好きでした。ずっと……。騙してしまってごめんなさい」
美玲さんの顔を見るのが怖くて、私は下を向いたまま謝った。
「好きだった……進藤さんへの想いは過去形ですか?」
そう聞かれ、私はパッと顔を上げる。美玲さんは力強い真っ直ぐな目で私を見ていた。
「今でも……好きです。何度も忘れようとしたけどまだ……」
「明日香さん、私は権力だけで進藤さんを引き止めてましたからあなたを責めることはできません。ただ、悔しさはあります。そして安心感も……」
「えっ」
「ふふ。進藤さんの想う人が気になってましたの。その方が明日香さんで良かったと思いました。私も明日香さんの事好きですから」
私の目から我慢していた涙がスッと流れる。
「私、しばらく海外へ行くことにしました。今はまだ気持ちの整理がついてませんが……時が過ぎ、またいつか再会した時には友人として接しても良いですか? 私、ずっと明日香さんと仲良くしたいと思ってましたの」
「美玲さん……」
色んな感情が混じり、私は涙が止まらなかった。そんな私を見て美玲さんはクスクス笑いながらハンカチを私の前に差し出す。
「今日は明日香さんにお会い出来て本当に良かった。そのハンカチ、私のお気に入りですの。次に会う時に返して下さいね」
「はい。美玲さん……ありがとうございます」
私はリムジンから降りて深々と頭を下げた。
よし、気持ちを切り替えなくちゃ。
私は涙を拭いてしっかりと前を向き、また仕事へと戻った。
用事も終わり会社に戻ろうと歩いていると、私の横を見覚えのある黒のリムジンが通りかかった。そして私の前でハザードをつけて止まる。
「明日香さん、お久しぶりですわね」
リムジンの窓が開き、中から美玲さんがニッコリと微笑みながら声をかけてきた。
「……お久しぶりです、美玲さん」
私は精一杯笑顔を作る。
「ねぇ明日香さん。せっかくお会いした事ですし、少しお話ししませんか?」
「えっと、私今仕事中でして……」
断ろうとしたが美玲さんの笑顔を見ていると何も言えなくなり、結局私は美玲さんの乗るリムジンに乗り込んだ。
高級なリムジンの中で美玲さんと二人で話なんてかなり緊張する。どうしよう。
「そういえば明日香さん、高瀬さんとお別れされたとか」
「えっ? あ、はい。実はそうなんです」
突然の話にドキッとする。そういえば高瀬さんと付き合っている設定だったっけ。高瀬さんが別れた事にしたのかな。
「私ったら辛いお話をしてしまってごめんなさい」
「気にしないで下さい。高瀬さんとは今でも良好な関係ですから」
頭を下げて謝る美玲さんに、私は慌てて声をかける。
「明日香さんが羨ましいですわ。私も強くならないと……」
「えっ?」
何故か切なそうに微笑む美玲さんに、私はなんて声をかけて良いか分からない。
「高瀬さんからお聞きになってないですか? 私と進藤さんの事……」
「い、いえ……何も」
「……秋の始まりくらいだったかしら。実は私達、婚約解消しましたの」
婚約解消って……?
その言葉を聞いた時、私の頭の中は真っ白になった。
「何で……」
「私から婚約解消を申し出ましたの……なんて本当は進藤さんにお願いして私から断った事にしてもらいました。振られたのは私の方です」
美玲さんは一回目を閉じて微笑み、ゆっくりと目を開き話し始めた。
「私、知ってました。進藤さんは会社の為に私との婚約を断れなかったことを。頑張ったんですけど、進藤さんの気持ちが私に向くことはありませんでした」
私はただただ美玲さんの話を黙って聞く。
「この先、進藤さんと結婚の話を進めて良いものか悩んでいた時……初めて進藤さんが私に本音を教えてくれました。『想っている人がいる』ということを。立場のある人ですから結婚の事、相当悩んだと思います。でも進藤さんは婚約解消を選んだ。相当大切に想う方なんでしょうね」
私は話を聞きながら胸が苦しくなり泣きそうになっていた。
「婚約解消の代償……有栖川財閥との縁が切れた事で、進藤コーポレーションから撤退する取引先も数多くおります。会社経営も危なくなるかもしれません。ただ、進藤さんのような優秀な方がこのままフェードアウトするのは勿体ないと思いました。だからこの婚約は私の身勝手で解消したという事にして、進藤さんへの影響を最小限に留める事にしたのです」
美玲さん、なんていい人なんだろう。本当に進藤さんの事好きだったんだろうな。
「まぁ私にとっても私からお断りしたっていう方が都合が良かったのもありますけどね。振られたとなると私の格が落ちてしまうので」
美玲さんは可愛らしい笑顔を見せる。そして私の胸の苦しみはMAXを迎え、美玲さんに自分の気持ちを伝えた。
「美玲さん……私、本当は高瀬さんとお付き合いしてないんです。ずっと進藤さんの事が好きでした。ずっと……。騙してしまってごめんなさい」
美玲さんの顔を見るのが怖くて、私は下を向いたまま謝った。
「好きだった……進藤さんへの想いは過去形ですか?」
そう聞かれ、私はパッと顔を上げる。美玲さんは力強い真っ直ぐな目で私を見ていた。
「今でも……好きです。何度も忘れようとしたけどまだ……」
「明日香さん、私は権力だけで進藤さんを引き止めてましたからあなたを責めることはできません。ただ、悔しさはあります。そして安心感も……」
「えっ」
「ふふ。進藤さんの想う人が気になってましたの。その方が明日香さんで良かったと思いました。私も明日香さんの事好きですから」
私の目から我慢していた涙がスッと流れる。
「私、しばらく海外へ行くことにしました。今はまだ気持ちの整理がついてませんが……時が過ぎ、またいつか再会した時には友人として接しても良いですか? 私、ずっと明日香さんと仲良くしたいと思ってましたの」
「美玲さん……」
色んな感情が混じり、私は涙が止まらなかった。そんな私を見て美玲さんはクスクス笑いながらハンカチを私の前に差し出す。
「今日は明日香さんにお会い出来て本当に良かった。そのハンカチ、私のお気に入りですの。次に会う時に返して下さいね」
「はい。美玲さん……ありがとうございます」
私はリムジンから降りて深々と頭を下げた。
よし、気持ちを切り替えなくちゃ。
私は涙を拭いてしっかりと前を向き、また仕事へと戻った。
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