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恋の予感?
ストーリー77
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「飲み過ぎたなぁ」
宴会も終わりかけた頃、私は部屋を抜け出し、酔い覚ましに旅館の外に出た。
夜風は冷んやりとしていたが、お酒で身体中がポカポカしている私にはちょうど良い。
なんとなく空を見上げて星を探していると、旅館から貴島さんが走って出てきた。
「一人で旅館を抜け出したら危ないよ。それとも……誰かと待ち合わせ、とか?」
「いえ、ただ飲み過ぎちゃって夜風を浴びて酔いを覚まそうかと」
「じゃあ俺も一緒に酔い覚まししようかな」
貴島さんはニッコリ笑顔を見せる。それから旅館の入口横で夜風に当たりながら二人で話をした。
話の途中で貴島さんは突然大きく深呼吸をする。どうしたのだろう?
「水沢さん……ゴメン」
「えっ?」
貴島さんはフワッと私を抱きしめる。私は何が起きたのか頭がついていかず、ただ呆然としていた。
「俺さ、水沢さんの事が気になってしょうがないんだ」
「えっと……それって」
耳元でそう囁かれ、私の思考はパニックになる。すると抱きしめていた手を離し、真っ直ぐに私を見つめ口を開く。
「好きなんだ」
真っ直ぐに見つめてくる貴島さんの視線から目をそらす事が出来ず、私は胸をバクバクさせながら緊張が高鳴っていた。
何と言っていいのか分からず口をまごまごさせていると、その様子を見た貴島さんは優しく微笑む。
「困らせてゴメン。ただ、この先少しでも男として見てもらえたら嬉しいなって。あっ今のは俺の独り言と思って返事は保留にしといて。じゃあ俺先に戻るから、水沢さんも早めに部屋に戻りなよ」
そう言って貴島さんは足早に旅館の中へと入っていった。
「貴島さんが私を?」
一人になってようやく状況を把握でき、告白された事を実感する。頬が赤くなったが、告白のせいかお酒のせいか分からなかった。
この辺りは宿泊施設がいくつもあり、旅館近くにも建物は沢山ある。さっき真彩さんにメールしたら、進藤コーポレーションはこの旅館近くのホテルに宿泊しているらしい。
「こんなに近くにいるのにな…」
私の頭の中に進藤さんが思い浮かぶ。この先、本当に進藤さんの事を忘れる日が来るのかな。
そう思うと、私の心は切なくなった……。
この日、私は珍しく朝まで眠れなかった。私の最強睡魔を持っても眠れないなんて。
環境が変わったせいか、それとも別の理由のせいか分からないけど、取り敢えず気分転換に部屋を抜け出し、一人で早朝散歩に出かけた。
外はまだ完全に日が昇ってなくて薄暗い状態だ。それでも私はゆっくりと歩き出した。
あてもなく歩いていると、早朝にもかかわらず同じように散歩をしている人をチラホラ見かける。すると、前の方から見覚えのある二人が歩いてきた。
「マイさんに高瀬さん?」
少し近づいて確認すると、やっぱり真彩さんと高瀬さんだった。
「えっ明日香? こんなに朝早くから何してるの?」
「昨日寝れなくて、気分転換に散歩をちょっと」
私は苦笑いをしながら答える。
「明日香ちゃんが寝れないなんて……もしかして何かあった?」
苦笑する私に今度は高瀬さんが聞いてきた。
「何にも……ないですよ。それより二人も散歩中かな? 偶然ですね」
「俺たちは密会散歩中なんだ。旅行中になかなか一緒に入れないからさ~」
「そうなんだ。邪魔しちゃ悪いから私は旅館に帰るね。じゃあね、マイさん高瀬さん」
「ちょっと明日香……」
真彩さんは何か言いたそうにしてたけど、私はクルッと振り返りそそくさと退散した。
多分何を聞かれても私は答えられない。私自身、今何に悩んでいるのか分からない状態なのだ。
「何かあったわね、明日香」
「恐らく貴島君かな? 何かしらアクション起こしたのかもね」
二人は私が立ち去った後、様子のおかしい理由を推測していた。
宴会も終わりかけた頃、私は部屋を抜け出し、酔い覚ましに旅館の外に出た。
夜風は冷んやりとしていたが、お酒で身体中がポカポカしている私にはちょうど良い。
なんとなく空を見上げて星を探していると、旅館から貴島さんが走って出てきた。
「一人で旅館を抜け出したら危ないよ。それとも……誰かと待ち合わせ、とか?」
「いえ、ただ飲み過ぎちゃって夜風を浴びて酔いを覚まそうかと」
「じゃあ俺も一緒に酔い覚まししようかな」
貴島さんはニッコリ笑顔を見せる。それから旅館の入口横で夜風に当たりながら二人で話をした。
話の途中で貴島さんは突然大きく深呼吸をする。どうしたのだろう?
「水沢さん……ゴメン」
「えっ?」
貴島さんはフワッと私を抱きしめる。私は何が起きたのか頭がついていかず、ただ呆然としていた。
「俺さ、水沢さんの事が気になってしょうがないんだ」
「えっと……それって」
耳元でそう囁かれ、私の思考はパニックになる。すると抱きしめていた手を離し、真っ直ぐに私を見つめ口を開く。
「好きなんだ」
真っ直ぐに見つめてくる貴島さんの視線から目をそらす事が出来ず、私は胸をバクバクさせながら緊張が高鳴っていた。
何と言っていいのか分からず口をまごまごさせていると、その様子を見た貴島さんは優しく微笑む。
「困らせてゴメン。ただ、この先少しでも男として見てもらえたら嬉しいなって。あっ今のは俺の独り言と思って返事は保留にしといて。じゃあ俺先に戻るから、水沢さんも早めに部屋に戻りなよ」
そう言って貴島さんは足早に旅館の中へと入っていった。
「貴島さんが私を?」
一人になってようやく状況を把握でき、告白された事を実感する。頬が赤くなったが、告白のせいかお酒のせいか分からなかった。
この辺りは宿泊施設がいくつもあり、旅館近くにも建物は沢山ある。さっき真彩さんにメールしたら、進藤コーポレーションはこの旅館近くのホテルに宿泊しているらしい。
「こんなに近くにいるのにな…」
私の頭の中に進藤さんが思い浮かぶ。この先、本当に進藤さんの事を忘れる日が来るのかな。
そう思うと、私の心は切なくなった……。
この日、私は珍しく朝まで眠れなかった。私の最強睡魔を持っても眠れないなんて。
環境が変わったせいか、それとも別の理由のせいか分からないけど、取り敢えず気分転換に部屋を抜け出し、一人で早朝散歩に出かけた。
外はまだ完全に日が昇ってなくて薄暗い状態だ。それでも私はゆっくりと歩き出した。
あてもなく歩いていると、早朝にもかかわらず同じように散歩をしている人をチラホラ見かける。すると、前の方から見覚えのある二人が歩いてきた。
「マイさんに高瀬さん?」
少し近づいて確認すると、やっぱり真彩さんと高瀬さんだった。
「えっ明日香? こんなに朝早くから何してるの?」
「昨日寝れなくて、気分転換に散歩をちょっと」
私は苦笑いをしながら答える。
「明日香ちゃんが寝れないなんて……もしかして何かあった?」
苦笑する私に今度は高瀬さんが聞いてきた。
「何にも……ないですよ。それより二人も散歩中かな? 偶然ですね」
「俺たちは密会散歩中なんだ。旅行中になかなか一緒に入れないからさ~」
「そうなんだ。邪魔しちゃ悪いから私は旅館に帰るね。じゃあね、マイさん高瀬さん」
「ちょっと明日香……」
真彩さんは何か言いたそうにしてたけど、私はクルッと振り返りそそくさと退散した。
多分何を聞かれても私は答えられない。私自身、今何に悩んでいるのか分からない状態なのだ。
「何かあったわね、明日香」
「恐らく貴島君かな? 何かしらアクション起こしたのかもね」
二人は私が立ち去った後、様子のおかしい理由を推測していた。
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