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高瀬さんの葛藤ー高瀬sideー
ストーリー68
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どうしたら計画を実行できるか、ケイスケと密かに話を進めていく。
だが計画を実行する前に、俺が問題を起こしてしまう事になるなんて……。
数日後、俺はやり残した仕事をする為にいつもより早めに出社した。まだ誰も来てないだろうと思っていたが、秘書課に行くと机に座っている女性がいた。
「あれ? 鈴里さん早いね。俺、絶対一番乗りだと思ったのに」
「あ……おはようございます」
俺が声をかけると、いつも冷静な鈴里さんが慌てたように椅子から立ち上がり、俺を避けるように秘書課から出て行こうとした。その時、ハンカチを頬に当てているのが目に入った。
「ちょっと待って」
様子がおかしい。異変に気付いた俺は、鈴里さんの腕を掴み立ち去るのを阻止する。
「……その頬、どうした?」
「べ、別に……何でもないです」
俺から視線を合わせないようにしているのが分かる。鈴里さんは嘘をついている。
「何でもない訳ないだろう……マイ」
頬に当てたハンカチをそっと下げた。少しだけど頬が赤くなっていた。
「本当に何でもないんです。ただちょっと沢田課長と喧嘩しちゃって」
下を向きながらか細い声で言う。
「もしかして沢田課長に頬……叩かれたのか? 喧嘩の原因は?」
俺は沸々と怒りが込み上げてきたがその気持ちを抑え、鈴里さんに話を聞く。
「……明日香みたいに前向きになりたくて、関係を終わらせようと……沢田課長と別れようと思って朝早くに会社で話をしました。でも別れないって。バカな事言うなって、頬を一回叩かれました」
そう話す鈴里さんの目からは涙が溢れていた。その涙を見た時、俺の中で何かが切れた。
「俺は席を外すから、もう少し頬を冷やしな」
鈴里さんに微笑みかけ、俺は秘書課を出る。足早に歩いていたが次第に走り出した。そしてそのまま営業一課の部署へ向かい、勢いよく乗り込んだ。
「沢田課長!」
営業一課で沢田課長を見つけると、怒りに満ちた大きな声で叫ぶように呼んだ。
「高瀬? ……どうした、血相変えて」
状況を飲み込めない沢田課長は呆気にとられたような顔でこっちを見る。
頭に血が上っている俺は沢田課長に無言で壁際まで詰め寄る。そして両手で胸ぐら掴んで思いっきり睨みつけた。
「……何で、何で鈴里さんと別れてあげないんだ。アンタじゃ鈴里さんを幸せに出来ないだろ!?」
鈴里さんの名前を出され、沢田課長の顔つきが変わる。
「俺と鈴里……マイの事知っているのか。マイが話したのか?」
「そんな事はどうでもいい。質問に答えろよ。彼女に手まであげやがって」
「高瀬には関係ない事だろ? 手を離せ」
その言葉が俺の癇に障《さわ》り、手に力を入れ気がつけば沢田課長を殴ろうとしていた。
「高瀬課長、やめて!」
ドアの方から鈴里さんの声がする。俺の後を追いかけてきたのか。
「マイ、早くなんとかしてくれ」
沢田課長は鈴里さんの方を見て訴えた。そして鈴里さんは俺と沢田課長の間に入り、俺の方を向いた。
「大丈夫……私は大丈夫ですから。もうやめて下さい」
鈴里さんの表情は全然大丈夫に見えなかった。無理しているのが目に見えて分かる。
「嫌なんだよ。惚れた女が辛そうにしてるのは……」
「……高瀬課長。今、何て?」
ヒートアップし過ぎて全然周りが見えてなかったが、いつのまにか社員が出社してくる時間になっていて、騒ぎが起きている営業一課には沢山の野次馬が集まっていた。
だが計画を実行する前に、俺が問題を起こしてしまう事になるなんて……。
数日後、俺はやり残した仕事をする為にいつもより早めに出社した。まだ誰も来てないだろうと思っていたが、秘書課に行くと机に座っている女性がいた。
「あれ? 鈴里さん早いね。俺、絶対一番乗りだと思ったのに」
「あ……おはようございます」
俺が声をかけると、いつも冷静な鈴里さんが慌てたように椅子から立ち上がり、俺を避けるように秘書課から出て行こうとした。その時、ハンカチを頬に当てているのが目に入った。
「ちょっと待って」
様子がおかしい。異変に気付いた俺は、鈴里さんの腕を掴み立ち去るのを阻止する。
「……その頬、どうした?」
「べ、別に……何でもないです」
俺から視線を合わせないようにしているのが分かる。鈴里さんは嘘をついている。
「何でもない訳ないだろう……マイ」
頬に当てたハンカチをそっと下げた。少しだけど頬が赤くなっていた。
「本当に何でもないんです。ただちょっと沢田課長と喧嘩しちゃって」
下を向きながらか細い声で言う。
「もしかして沢田課長に頬……叩かれたのか? 喧嘩の原因は?」
俺は沸々と怒りが込み上げてきたがその気持ちを抑え、鈴里さんに話を聞く。
「……明日香みたいに前向きになりたくて、関係を終わらせようと……沢田課長と別れようと思って朝早くに会社で話をしました。でも別れないって。バカな事言うなって、頬を一回叩かれました」
そう話す鈴里さんの目からは涙が溢れていた。その涙を見た時、俺の中で何かが切れた。
「俺は席を外すから、もう少し頬を冷やしな」
鈴里さんに微笑みかけ、俺は秘書課を出る。足早に歩いていたが次第に走り出した。そしてそのまま営業一課の部署へ向かい、勢いよく乗り込んだ。
「沢田課長!」
営業一課で沢田課長を見つけると、怒りに満ちた大きな声で叫ぶように呼んだ。
「高瀬? ……どうした、血相変えて」
状況を飲み込めない沢田課長は呆気にとられたような顔でこっちを見る。
頭に血が上っている俺は沢田課長に無言で壁際まで詰め寄る。そして両手で胸ぐら掴んで思いっきり睨みつけた。
「……何で、何で鈴里さんと別れてあげないんだ。アンタじゃ鈴里さんを幸せに出来ないだろ!?」
鈴里さんの名前を出され、沢田課長の顔つきが変わる。
「俺と鈴里……マイの事知っているのか。マイが話したのか?」
「そんな事はどうでもいい。質問に答えろよ。彼女に手まであげやがって」
「高瀬には関係ない事だろ? 手を離せ」
その言葉が俺の癇に障《さわ》り、手に力を入れ気がつけば沢田課長を殴ろうとしていた。
「高瀬課長、やめて!」
ドアの方から鈴里さんの声がする。俺の後を追いかけてきたのか。
「マイ、早くなんとかしてくれ」
沢田課長は鈴里さんの方を見て訴えた。そして鈴里さんは俺と沢田課長の間に入り、俺の方を向いた。
「大丈夫……私は大丈夫ですから。もうやめて下さい」
鈴里さんの表情は全然大丈夫に見えなかった。無理しているのが目に見えて分かる。
「嫌なんだよ。惚れた女が辛そうにしてるのは……」
「……高瀬課長。今、何て?」
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