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貴方の幸せを願うから
ストーリー60
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「そろそろ帰るか」
「……うん」
私達は最近キス以上の触れ合いをしていない。私が勝手に感じているだけかもしれないけど、進藤さんは私と一歩距離を置いている気がする。
別れに向けた準備なのかもしれないが、それが何だか寂しかった。
そして進藤さんに高瀬さんのマンションまで送ってもらい、また一人の夜を静かに過ごした。
それから一週間が経ち、私は平穏に秘書の仕事をこなしていた。
職場では真彩さんとランチに行ったり、仕事が終わると進藤さんとご飯食べたりして変わらない日々を過ごしている。そして一日一日が刻々と過ぎていった。
秘書勤務も残り三日となり、私はいつものように朝出社して社長室へスケジュール確認に行く。
「失礼します」
社長室へ入り一礼して顔を上げると、進藤さんの他にもう一人来客用のソファーに座っていた。
「ただいま、明日香ちゃん。立派な秘書になったじゃん」
「えっ……た、高瀬さん!?」
私を見て笑顔でひらひらと手を振っているのは間違いなく高瀬さんだ。でもまだ出張中なんじゃ?
「予定より早く帰って来れたんだ」
「そうなんですか。じゃあ私の仕事はここまでですね」
「いや、今日までは仕事お願いするよ。俺は報告と引き続きしたら帰るから」
「分かりました」
今日で秘書勤務も終わりか。何事もなく無事に終わりそうで良かった。慣れない仕事で緊張したけど良い経験ができたし、代わりを引き受けて良かった。
「あっそうだ。もう少ししたら会長がここに来るから」
会長って、進藤さんのお父様が社長室へ来るの!? 私は無駄に緊張し始めソワソワしてした。
「明日香……俺が言うのも何だが、緊張するような人じゃないから安心しろ」
私のソワソワに気づいたのか、進藤さんが声をかけてくれた。
「あはは、明日香ちゃん緊張してるの? 確かに会長って聞くとビビるよね。でも気さくな人だから大丈夫だよ。そろそろ来ると思うから、お茶を持ってきてくれる?」
「は、はい」
私はお茶を準備する為に一旦社長室を出る。進藤さんも高瀬さんも大丈夫とは言うけど……やっぱり緊張するよ。
会長なんて役職の方と会うなんてそうそうないし……私には関係ないけど、進藤さんの父親だし。
お茶の準備が終わるとまた社長室へ戻った。
「失礼します」
緊張しながら社長室へ入った。顔を上げると、来客用のソファーに進藤さんと高瀬さんが座っていて、二人の向かい側にもう一人男性が座っている。
この方が会長か。私は用意したお茶を三人の前に置いた。
「ありがとう」
仕事モード全開の進藤さんが笑顔でお礼を言う。不思議な感じだ。
「おや? もしかして……るなちゃんじゃない?」
「え?」
『るな』……私がホステス時代に呼ばれていた源氏名。会長に名前を呼ばれて条件反射的に振り向いてしまった。
「会長、水沢さんをご存知なんですか?」
高瀬さんが私の方を見ながら会長に尋ねた。 進藤さんも不思議そうな表情をしている。
私は緊張してよく見ていなかったが、失礼ながらも改めて会長の顔をマジマジと見た。
「あれ……シンさん?」
「良かった。覚えててくれたんだ。久しぶりだね」
シンさんが進藤さんの父親で会長なの!?
シンさんは私がホステス時代によく会社の接待でお店を利用してくれて、いつも私を指名してくれた常連だ。
名前を聞いても『シンさんと呼んでくれ』と言われ、名ばかりの社長をしていると言っていたが、まさかこんなところで再会するとは。
シンさんのシンって、もしかして進藤のシンだったのかな。
「この前、店に行ってるなちゃん指名したら辞めたって言われてショックだったよ。るなちゃんは僕の癒しだったからね。」
シンさん……会長は私を見てニッコリとする。その笑顔は進藤さんと似ていて少しドキッとした。
「この会社に居たんだね。るなちゃん、本当の名前は何ていうの?」
「水沢……明日香です」
「明日香ちゃんか、良い名前だね。どう? 今日食事にでも行かない?」
「ゴホン……冗談でも社員を口説くのは辞めてもらってもいいですかね、会長」
進藤さんは咳払いをして話を中断させ、仕事モードのまま会長に説教をする。
ニッコリしているが所々に怒りマークがついているような雰囲気だ。そしてその横で高瀬さんが必死に笑いを堪えているのが分かる。
「久しぶりに明日香ちゃんと話したかったのにな。いつからこの会社に勤めているの?」
「水沢さんには高瀬の代わりに秘書の仕事を臨時で引き受けてもらいました。」
「じゃあナオト君が帰ってきたから今日で勤務終了か。それは寂しいな。せっかくだからこのままここで働いたら?」
進藤さんと会話していた会長は再び私の方を見てニッコリする。
「いえ、次の仕事が……決まってますので。すみません」
「そうか残念。でも何だがまた明日香ちゃんとは会えそうな気がするな。その時はゆっくり話そう。じゃあ帰るよ」
「下まで送ります」
会長と高瀬さんが立ち上がって社長室から出て行った。
「……うん」
私達は最近キス以上の触れ合いをしていない。私が勝手に感じているだけかもしれないけど、進藤さんは私と一歩距離を置いている気がする。
別れに向けた準備なのかもしれないが、それが何だか寂しかった。
そして進藤さんに高瀬さんのマンションまで送ってもらい、また一人の夜を静かに過ごした。
それから一週間が経ち、私は平穏に秘書の仕事をこなしていた。
職場では真彩さんとランチに行ったり、仕事が終わると進藤さんとご飯食べたりして変わらない日々を過ごしている。そして一日一日が刻々と過ぎていった。
秘書勤務も残り三日となり、私はいつものように朝出社して社長室へスケジュール確認に行く。
「失礼します」
社長室へ入り一礼して顔を上げると、進藤さんの他にもう一人来客用のソファーに座っていた。
「ただいま、明日香ちゃん。立派な秘書になったじゃん」
「えっ……た、高瀬さん!?」
私を見て笑顔でひらひらと手を振っているのは間違いなく高瀬さんだ。でもまだ出張中なんじゃ?
「予定より早く帰って来れたんだ」
「そうなんですか。じゃあ私の仕事はここまでですね」
「いや、今日までは仕事お願いするよ。俺は報告と引き続きしたら帰るから」
「分かりました」
今日で秘書勤務も終わりか。何事もなく無事に終わりそうで良かった。慣れない仕事で緊張したけど良い経験ができたし、代わりを引き受けて良かった。
「あっそうだ。もう少ししたら会長がここに来るから」
会長って、進藤さんのお父様が社長室へ来るの!? 私は無駄に緊張し始めソワソワしてした。
「明日香……俺が言うのも何だが、緊張するような人じゃないから安心しろ」
私のソワソワに気づいたのか、進藤さんが声をかけてくれた。
「あはは、明日香ちゃん緊張してるの? 確かに会長って聞くとビビるよね。でも気さくな人だから大丈夫だよ。そろそろ来ると思うから、お茶を持ってきてくれる?」
「は、はい」
私はお茶を準備する為に一旦社長室を出る。進藤さんも高瀬さんも大丈夫とは言うけど……やっぱり緊張するよ。
会長なんて役職の方と会うなんてそうそうないし……私には関係ないけど、進藤さんの父親だし。
お茶の準備が終わるとまた社長室へ戻った。
「失礼します」
緊張しながら社長室へ入った。顔を上げると、来客用のソファーに進藤さんと高瀬さんが座っていて、二人の向かい側にもう一人男性が座っている。
この方が会長か。私は用意したお茶を三人の前に置いた。
「ありがとう」
仕事モード全開の進藤さんが笑顔でお礼を言う。不思議な感じだ。
「おや? もしかして……るなちゃんじゃない?」
「え?」
『るな』……私がホステス時代に呼ばれていた源氏名。会長に名前を呼ばれて条件反射的に振り向いてしまった。
「会長、水沢さんをご存知なんですか?」
高瀬さんが私の方を見ながら会長に尋ねた。 進藤さんも不思議そうな表情をしている。
私は緊張してよく見ていなかったが、失礼ながらも改めて会長の顔をマジマジと見た。
「あれ……シンさん?」
「良かった。覚えててくれたんだ。久しぶりだね」
シンさんが進藤さんの父親で会長なの!?
シンさんは私がホステス時代によく会社の接待でお店を利用してくれて、いつも私を指名してくれた常連だ。
名前を聞いても『シンさんと呼んでくれ』と言われ、名ばかりの社長をしていると言っていたが、まさかこんなところで再会するとは。
シンさんのシンって、もしかして進藤のシンだったのかな。
「この前、店に行ってるなちゃん指名したら辞めたって言われてショックだったよ。るなちゃんは僕の癒しだったからね。」
シンさん……会長は私を見てニッコリとする。その笑顔は進藤さんと似ていて少しドキッとした。
「この会社に居たんだね。るなちゃん、本当の名前は何ていうの?」
「水沢……明日香です」
「明日香ちゃんか、良い名前だね。どう? 今日食事にでも行かない?」
「ゴホン……冗談でも社員を口説くのは辞めてもらってもいいですかね、会長」
進藤さんは咳払いをして話を中断させ、仕事モードのまま会長に説教をする。
ニッコリしているが所々に怒りマークがついているような雰囲気だ。そしてその横で高瀬さんが必死に笑いを堪えているのが分かる。
「久しぶりに明日香ちゃんと話したかったのにな。いつからこの会社に勤めているの?」
「水沢さんには高瀬の代わりに秘書の仕事を臨時で引き受けてもらいました。」
「じゃあナオト君が帰ってきたから今日で勤務終了か。それは寂しいな。せっかくだからこのままここで働いたら?」
進藤さんと会話していた会長は再び私の方を見てニッコリする。
「いえ、次の仕事が……決まってますので。すみません」
「そうか残念。でも何だがまた明日香ちゃんとは会えそうな気がするな。その時はゆっくり話そう。じゃあ帰るよ」
「下まで送ります」
会長と高瀬さんが立ち上がって社長室から出て行った。
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