明日は明日の恋をする

彩里 咲華

文字の大きさ
上 下
50 / 85
臨時のお仕事

ストーリー50

しおりを挟む
社長室にてーー

「……という事で、金曜日の夜は明日香ちゃんと飲みに行くから」

 仕事の合間に高瀬さんはさっきの話を進藤さんに報告した。

「誤解なら今解けばいいんじゃないのか?」

「まぁ、たまには可愛い部下とのコミュニケーションをと思ってね。鈴里さんとか普段あんまり話しないし一緒に飲んだら面白そうじゃん。ついでに誤解もちゃんと解くから」

 何だか高瀬さん楽しそうだ。進藤さんも特に何も言わず、金曜日の飲み会が決定した。

 この日はずっと高瀬さんの後ろをついて回り、仕事の流れを教わりながら無事に秘書課実践一日目が終了した。

 そして秘書課実践二日目……

 この日も朝から電車に揺られ会社へ向かった。この時間帯の出勤ラッシュ……とにかく人、人、人で会社務めも大変だとつくづく思う。駅に着くと高瀬さんとは別々に会社に向かって歩いた。

「おはよう」

 私が一人で歩いていると、後ろから声をかけられた。立ち止まって振り向くと鈴里さんがいる。

「おはようございます」

 私は挨拶をすると、鈴里さんと一緒に会社へ向かう。いきなりプライベートな話はし辛いので、仕事の話を色々聞きながら歩いた。

 意外……といったら失礼だが、高瀬さんは会社でも一、ニを争うモテ男らしい。

 特に宮川さんを筆頭に秘書課と前の配属先の営業一課には高瀬さんファンが多く、特別に高瀬さんと親しくしてると睨まれるから気をつけて、とアドバイスされた。鈴里さんは高瀬さんには興味がないみたい。

「鈴里さんおはよう」

「おはようございます」

 スーツを着た見た目四十歳くらいの知らない男性が鈴里さんに笑顔で挨拶をしてきた。

そして隣にいる私の存在に気づくと、軽く会釈をして私達の前を歩く。

「営業一課の沢田課長よ」

 男性がいなくなった後、鈴里さんが教えてくれた。営業一課の課長に挨拶されるなんて鈴里さんって顔が広いんだ。

 秘書課に着くと机に座って、仕事の確認を始める。今日は私がメインで高瀬さんはサポートに回る予定だ。

 大丈夫かなと不安と緊張が走るが、昨日も帰ってからしっかり仕事の復習もしたしイメージトレーニングもバッチリのはず。

 出来る。

 私は自信を持って社長室に向かった。そして社長室の前で一回立ち止まって大きく深呼吸をする。

ーー コンコン

「失礼します」

 社長室に入り一礼をして顔を上げる。仕事をしていた進藤さんの手が止まり、私の方を向いた。

「社長、おはようございます。本日のスケジュールですが……」

 私は緊張しながらもルーティンワークを行う。その後も高瀬さんに助けられながら無事に秘書課実践二日目を終える事が出来た。

秘書課実践三日目……

 高瀬さんのサポートがあるのは今日までだ。頑張らなきゃ。

 進藤さんとのスケジュール確認を終えて、私は秘書課で仕事をしていた。高瀬さんは課長席に座って自分の仕事を黙々とこなしている。

 しばらくすると鈴里さんが秘書課に戻ってきた。

「鈴里さん、ちょっといいですか?」

「はい」

 高瀬さんに呼ばれ何か話をしている。そして私の隣に座り、PCに向かって仕事を始めた。

「今日、本当に飲みに行くのね」

 鈴里さんは仕事をしながら小声で私に話しかける。

 今日は金曜日、三人で飲みに行く日だ。高瀬さんに呼ばれて時間と場所を伝えられたらしい。

 「あまり乗り気じゃないですか?」

「乗り気じゃないっていうか、得意じゃないのよ……飲み会とかプライベートで人と会うのって」

 人付き合いが苦手って事なのかな。でも私は知り合って間もないが、鈴里さんとゆっくり話がしてみたいと思っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜

k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」 そう婚約者のグレイに言われたエミリア。 はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。 「恋より友情よね!」 そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。 本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

忘れられた妻

毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。 セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。 「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」 セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。 「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」 セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。 そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。 三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

処理中です...