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臨時のお仕事
ストーリー47
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「私が秘書って大丈夫かな?」
高瀬さんが帰った後、私は不安げな表情で進藤さんに聞いてみる。
「心配するな。基本的に俺の指示に従ってくれればいいだけだから」
そうは言っても、社長秘書って重要なポジションじゃないですか。そもそも今、秘書課にいる方々を差し置いて私が秘書をやっていいのだろうか。
「あまり考え込むな。取り敢えず、風呂行こうか」
「行こうかって、一緒に!?」
「嫌か?」
「嫌じゃないけど、ちょっとまだハードルが高い……かな」
私の中では一緒にお風呂はまだ恥ずかしかった。引きつった笑顔でお断りする。
「今更か? よし、行くぞ」
「えぇ? 話聞いてた?」
私は強引ににお風呂に連れて行かれた。服を脱がされ、あれよあれよと言う間に進藤さんと湯船の中に入ってた。
「もうっ強引なんだから」
「たまにはいいだろ。一週間離れるから充電しとかないとな」
私を後ろから抱きしめるような体勢でゆっくりと湯船に浸かる。私は顔だけ進藤さんの方を向けた。
「寂しい?」
「聞くな」
進藤さんは片腕で私を胸元へと引き寄せる。
そしてお風呂から上がると、今日は二人一緒にベッドで休んだ。
日曜日の夜 ーー
「明日香ちゃん、迎えに来たよ」
高瀬さんが迎えに来てくれた。私の荷物をヒョイっと持ち、進藤さんの元へ行く。
「頼んだぞ、ナオト」
「まぁ、仕上がりに期待してな」
私と高瀬さんはマンションを出て、外に停めてある車へ乗り込り、高瀬さんのマンションに到着すると、部屋の中に入った。
「ベッド一つしかないから、明日香ちゃんは俺の部屋使ってね。俺は隣の部屋で寝るから」
高瀬さんの部屋に案内された。荷物を置くと飲み物持ってくると言って部屋を出る。私は落ち着かずにキョロキョロしていると、ふと本棚が目に入った。
秘書になる為の本や仕事に役立ちそうな本がたくさんある。勉強家なんだ、高瀬さん。棚の下の方を見ると、何故か営業に関する本がいくつもある。
「元々俺は今の会社の営業一課に居たんだ」
不思議そうに営業に関する本を見ていると、後ろから高瀬さんの声がした。そして持ってきたコーヒーをテーブルに置く。
「営業一課に? 最初から進藤さんの秘書って訳じゃなかったんですね」
「まぁね。新入社員として営業一課に配属されて、ガンガン契約取って一年後には営業一課のエースと呼ばれるようになったんだ」
「へぇ、凄い」
「でしょ? 営業は天職だと思ったよ。そして同じく新入社員のケイスケも社長になる為の勉強として最初は色んな課に配属して経験値を積み上げてた。本当はこんなに早く社長に就任する予定はなかったけど、有栖川のお嬢様に気に入られちゃったからね、社長としての資質を求められて早々の社長就任。で、それまで社長だったケイスケの父親が会長になったんだけど……」
「だけど?」
「ケイスケの父親……会長は息子に甘いからさ、早々の社長就任を心配して、俺が社長秘書をするようお願いされたんだ。無茶しないように見張っててくれって」
「それで営業一課から秘書課に……」
「営業でも秘書でも仕事を完璧にマスターしたい俺としては、必死に勉強したなぁ。おかげで本棚にみっちり本が埋まったよ」
高瀬さんは本棚を懐かしそうに見て少し微笑む。必死に勉強した当時の事を思い出してるのかな。
「話はこれくらいにして早速始めようか、水沢さん」
高瀬さんの仕事スイッチが入り、顔つきが変わる。時間はない。私も本気で取り組もう。
「はい、よろしくお願いします」
「まず一週間のスケジュールだけど、月・火の二日間は家でみっちり勉強、そして残り三日間は実際に会社に出向して社長秘書を実践しながら色々指導する。土日は休みだからまた家で最終仕上げを行う……OK?」
「はい」
こうして私の秘書になる為の勉強が始まった。いつもと違う高瀬さんの雰囲気に最初は戸惑ってしまったが、高瀬さんの教え方は丁寧でとても分かりやすい。
「今日はここまでにしよう。明日から本格的にやるから頑張ろうね、明日香ちゃん」
高瀬さんの仕事スイッチが切れ、いつもの感じに戻る。少し話をして高瀬さんは部屋を出ていった。
「高瀬さんのベッドで寝るのか」
部屋に一人になった私はベッドを見ながら呟く。高瀬さんのベッドで寝るのが嫌とかではないんだけど、異性の……男性のベッドで寝てもいいのかなと思っていた。
「……ん。あれ、朝?」
目を覚ますといつもと違う景色……そうか、ここは高瀬さんの部屋だ。私は若干寝ぼけながらボーっと辺りを見回す。
外はもう日が昇り、カーテンの隙間から木漏れ日が入り込んでいる。私はカーテンを開けて朝になったのを確認すると、部屋を出てリビングへ向かった。
「おはよう、明日香ちゃん。昨日はちゃんと寝れた?」
「おはようございます。おかげさまでぐっすりと寝ちゃいました」
リビングへ行くと既に高瀬さんが起きていた。スーツも着ていて仕事の支度も終わっている様子だ。
「あはは、爆睡? 明日香ちゃん、警戒心ゼロだね。俺ってそんなに信用されてるんだ」
「あはは……」
私は苦笑いをする。爆睡する予定はなかったし、異性と一つ屋根の下ということで警戒もしていたつもりだったけど……進藤さんの家でもそうだったが、何で私は男性の家で呑気に爆睡しちゃうのだろう。
高瀬さんが帰った後、私は不安げな表情で進藤さんに聞いてみる。
「心配するな。基本的に俺の指示に従ってくれればいいだけだから」
そうは言っても、社長秘書って重要なポジションじゃないですか。そもそも今、秘書課にいる方々を差し置いて私が秘書をやっていいのだろうか。
「あまり考え込むな。取り敢えず、風呂行こうか」
「行こうかって、一緒に!?」
「嫌か?」
「嫌じゃないけど、ちょっとまだハードルが高い……かな」
私の中では一緒にお風呂はまだ恥ずかしかった。引きつった笑顔でお断りする。
「今更か? よし、行くぞ」
「えぇ? 話聞いてた?」
私は強引ににお風呂に連れて行かれた。服を脱がされ、あれよあれよと言う間に進藤さんと湯船の中に入ってた。
「もうっ強引なんだから」
「たまにはいいだろ。一週間離れるから充電しとかないとな」
私を後ろから抱きしめるような体勢でゆっくりと湯船に浸かる。私は顔だけ進藤さんの方を向けた。
「寂しい?」
「聞くな」
進藤さんは片腕で私を胸元へと引き寄せる。
そしてお風呂から上がると、今日は二人一緒にベッドで休んだ。
日曜日の夜 ーー
「明日香ちゃん、迎えに来たよ」
高瀬さんが迎えに来てくれた。私の荷物をヒョイっと持ち、進藤さんの元へ行く。
「頼んだぞ、ナオト」
「まぁ、仕上がりに期待してな」
私と高瀬さんはマンションを出て、外に停めてある車へ乗り込り、高瀬さんのマンションに到着すると、部屋の中に入った。
「ベッド一つしかないから、明日香ちゃんは俺の部屋使ってね。俺は隣の部屋で寝るから」
高瀬さんの部屋に案内された。荷物を置くと飲み物持ってくると言って部屋を出る。私は落ち着かずにキョロキョロしていると、ふと本棚が目に入った。
秘書になる為の本や仕事に役立ちそうな本がたくさんある。勉強家なんだ、高瀬さん。棚の下の方を見ると、何故か営業に関する本がいくつもある。
「元々俺は今の会社の営業一課に居たんだ」
不思議そうに営業に関する本を見ていると、後ろから高瀬さんの声がした。そして持ってきたコーヒーをテーブルに置く。
「営業一課に? 最初から進藤さんの秘書って訳じゃなかったんですね」
「まぁね。新入社員として営業一課に配属されて、ガンガン契約取って一年後には営業一課のエースと呼ばれるようになったんだ」
「へぇ、凄い」
「でしょ? 営業は天職だと思ったよ。そして同じく新入社員のケイスケも社長になる為の勉強として最初は色んな課に配属して経験値を積み上げてた。本当はこんなに早く社長に就任する予定はなかったけど、有栖川のお嬢様に気に入られちゃったからね、社長としての資質を求められて早々の社長就任。で、それまで社長だったケイスケの父親が会長になったんだけど……」
「だけど?」
「ケイスケの父親……会長は息子に甘いからさ、早々の社長就任を心配して、俺が社長秘書をするようお願いされたんだ。無茶しないように見張っててくれって」
「それで営業一課から秘書課に……」
「営業でも秘書でも仕事を完璧にマスターしたい俺としては、必死に勉強したなぁ。おかげで本棚にみっちり本が埋まったよ」
高瀬さんは本棚を懐かしそうに見て少し微笑む。必死に勉強した当時の事を思い出してるのかな。
「話はこれくらいにして早速始めようか、水沢さん」
高瀬さんの仕事スイッチが入り、顔つきが変わる。時間はない。私も本気で取り組もう。
「はい、よろしくお願いします」
「まず一週間のスケジュールだけど、月・火の二日間は家でみっちり勉強、そして残り三日間は実際に会社に出向して社長秘書を実践しながら色々指導する。土日は休みだからまた家で最終仕上げを行う……OK?」
「はい」
こうして私の秘書になる為の勉強が始まった。いつもと違う高瀬さんの雰囲気に最初は戸惑ってしまったが、高瀬さんの教え方は丁寧でとても分かりやすい。
「今日はここまでにしよう。明日から本格的にやるから頑張ろうね、明日香ちゃん」
高瀬さんの仕事スイッチが切れ、いつもの感じに戻る。少し話をして高瀬さんは部屋を出ていった。
「高瀬さんのベッドで寝るのか」
部屋に一人になった私はベッドを見ながら呟く。高瀬さんのベッドで寝るのが嫌とかではないんだけど、異性の……男性のベッドで寝てもいいのかなと思っていた。
「……ん。あれ、朝?」
目を覚ますといつもと違う景色……そうか、ここは高瀬さんの部屋だ。私は若干寝ぼけながらボーっと辺りを見回す。
外はもう日が昇り、カーテンの隙間から木漏れ日が入り込んでいる。私はカーテンを開けて朝になったのを確認すると、部屋を出てリビングへ向かった。
「おはよう、明日香ちゃん。昨日はちゃんと寝れた?」
「おはようございます。おかげさまでぐっすりと寝ちゃいました」
リビングへ行くと既に高瀬さんが起きていた。スーツも着ていて仕事の支度も終わっている様子だ。
「あはは、爆睡? 明日香ちゃん、警戒心ゼロだね。俺ってそんなに信用されてるんだ」
「あはは……」
私は苦笑いをする。爆睡する予定はなかったし、異性と一つ屋根の下ということで警戒もしていたつもりだったけど……進藤さんの家でもそうだったが、何で私は男性の家で呑気に爆睡しちゃうのだろう。
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