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幸せのひととき
ストーリー44
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再びマンション ーー
高瀬さんが帰った後、進藤さんが私の頭を拳でコツンとしてきた。
「ナオトと何話してたんだ?」
「えっいえ、何も……」
歯切れの悪い私の答えに、進藤さんはじぃっと見てくる。私は思わず視線を逸らし明後日の方を向いた。
「聞いてたぞ。ナオトに変な事聞きやがって」
「うっ、だって」
「だって、じゃない」
そう言ってまた私の頭を拳でコツンとしてくる。そして進藤さんはソファーに座った。
「じゃあ、私って少しでも魅力ありますか?」
私はソファーに座る進藤さんの後ろから手を回し、ギュッと抱きついて聞いてみた。
「バカな事聞くな。明日香には魅力しかない。俺が毎日必死にクールダウンしてるの知らないだろ?」
進藤さんは座ったまま私の方を向き、私の後頭部に手を当てぐいっと自分の方に引き寄せ、強引に唇を奪う。
「クールダウンって、何してるんですか?」
唇が離れると、少し言いにくそうに私の質問に答えた。
「仕事に打ち込んだり、理性が飛びそうな時は頭の中で数字を思い浮かべたりだな、3.14159265…とか」
「あはは、まさかの円周率」
思いがけない答えに、私は笑ってしまった。いつもクールな進藤さんが何か可愛くみえる。
「笑うな」
「でも……我慢しなくてもいいのに」
また進藤さんにギュッと抱きついて、耳元でコソッと囁いた。そのセリフを言うのが恥ずかしくて私の手は少し震えていた。
「そうだな、もう我慢しない」
「うん」
「でも、今日は何もしない。何かナオトの思い通りにいくのは嫌だからな」
「ふふ、何それ」
「宣言しとく。明日、最後まで明日香を抱くから。心の準備しとけよ」
真っ直ぐな目で私を見つめ、フッと笑みを浮かべる。
えっ、明日……
そんな事言われたら私、どんな顔したらいいんですか?
取り敢えず今の私は心臓が爆発するんじゃないかっていうほどドキドキして、明日を楽しみにしていた。
眠れない夜……
気がついたらもう朝になっていた。カーテンを開け日差しを浴びる。今日もいい天気だ。
「あぁ、もうどんな顔して進藤さんに会えばいいの?」
考えてもしょうがないか。私は部屋を出てコソコソ気味にリビングへ向かう。
リビングには……誰もいない。少し緊張が解け朝のコーヒーを入れる。
「……明日香」
「きゃあ」
突然呼ばれてビックリした私は思わず悲鳴をあげてしまった。ゆっくり振り向くと、私の悲鳴の大きさに耳を塞いだ進藤さんが立っていた。
「ご、ごめんなさい」
「俺にもコーヒーを入れてくれ」
進藤さんはそのままソファーに座り、テレビをつけてニュースを見始めた。私はそっとコーヒーをテーブルに置く。
「緊張してるのか?」
「それは……しますよ」
「今日は早く帰るから、外食しようか」
「外食ですか?」
「あぁ。たっぷり昼寝しとけよ」
進藤さんは笑みを浮かべて立ち上がり、仕事の支度を始めた。余裕たっぷりだな進藤さん。私だけ緊張しちゃって恥ずかしい。
「じゃあ仕事行ってくる」
支度を終えた進藤さんが私の元へ来た。そして耳元で囁く。
「夜が楽しみだ」
ふわっと香る進藤さんの香水……
その香りと囁きだけで、私はゾクッと感じた。
高瀬さんが帰った後、進藤さんが私の頭を拳でコツンとしてきた。
「ナオトと何話してたんだ?」
「えっいえ、何も……」
歯切れの悪い私の答えに、進藤さんはじぃっと見てくる。私は思わず視線を逸らし明後日の方を向いた。
「聞いてたぞ。ナオトに変な事聞きやがって」
「うっ、だって」
「だって、じゃない」
そう言ってまた私の頭を拳でコツンとしてくる。そして進藤さんはソファーに座った。
「じゃあ、私って少しでも魅力ありますか?」
私はソファーに座る進藤さんの後ろから手を回し、ギュッと抱きついて聞いてみた。
「バカな事聞くな。明日香には魅力しかない。俺が毎日必死にクールダウンしてるの知らないだろ?」
進藤さんは座ったまま私の方を向き、私の後頭部に手を当てぐいっと自分の方に引き寄せ、強引に唇を奪う。
「クールダウンって、何してるんですか?」
唇が離れると、少し言いにくそうに私の質問に答えた。
「仕事に打ち込んだり、理性が飛びそうな時は頭の中で数字を思い浮かべたりだな、3.14159265…とか」
「あはは、まさかの円周率」
思いがけない答えに、私は笑ってしまった。いつもクールな進藤さんが何か可愛くみえる。
「笑うな」
「でも……我慢しなくてもいいのに」
また進藤さんにギュッと抱きついて、耳元でコソッと囁いた。そのセリフを言うのが恥ずかしくて私の手は少し震えていた。
「そうだな、もう我慢しない」
「うん」
「でも、今日は何もしない。何かナオトの思い通りにいくのは嫌だからな」
「ふふ、何それ」
「宣言しとく。明日、最後まで明日香を抱くから。心の準備しとけよ」
真っ直ぐな目で私を見つめ、フッと笑みを浮かべる。
えっ、明日……
そんな事言われたら私、どんな顔したらいいんですか?
取り敢えず今の私は心臓が爆発するんじゃないかっていうほどドキドキして、明日を楽しみにしていた。
眠れない夜……
気がついたらもう朝になっていた。カーテンを開け日差しを浴びる。今日もいい天気だ。
「あぁ、もうどんな顔して進藤さんに会えばいいの?」
考えてもしょうがないか。私は部屋を出てコソコソ気味にリビングへ向かう。
リビングには……誰もいない。少し緊張が解け朝のコーヒーを入れる。
「……明日香」
「きゃあ」
突然呼ばれてビックリした私は思わず悲鳴をあげてしまった。ゆっくり振り向くと、私の悲鳴の大きさに耳を塞いだ進藤さんが立っていた。
「ご、ごめんなさい」
「俺にもコーヒーを入れてくれ」
進藤さんはそのままソファーに座り、テレビをつけてニュースを見始めた。私はそっとコーヒーをテーブルに置く。
「緊張してるのか?」
「それは……しますよ」
「今日は早く帰るから、外食しようか」
「外食ですか?」
「あぁ。たっぷり昼寝しとけよ」
進藤さんは笑みを浮かべて立ち上がり、仕事の支度を始めた。余裕たっぷりだな進藤さん。私だけ緊張しちゃって恥ずかしい。
「じゃあ仕事行ってくる」
支度を終えた進藤さんが私の元へ来た。そして耳元で囁く。
「夜が楽しみだ」
ふわっと香る進藤さんの香水……
その香りと囁きだけで、私はゾクッと感じた。
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