明日は明日の恋をする

彩里 咲華

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私の運命

ストーリー1

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『六月の花嫁は幸せになれる』

 そう誰かが教えてくれた。

「新婦、明日香。あなたはここにいる◯◯を、病める時も健やかなる時も富める時も貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」

「はい、誓います」

 牧師様の問いに、私は力強く返事する。何の迷いもない。背が高くモデル並みに手足がすらっとしていて、白のタキシードが良く似合う私の夫になる彼。私の隣に並ぶ彼をチラッと見て私は笑顔で幸せを噛みしめる。

 六月の雨の多い季節。だが、この結婚を神も祝福してくれるかのように、外は雲ひとつない澄みきった青空が広がっている。花嫁のブーケを投げるには持ってこいの天気だ。

 チャペルの中では、いよいよクライマックスが近づいてきている。

『誓いのキス』

 両親や親族、友人や関係者の方々が見守る中、私と彼は向かい合いお互い見つめ合う。そして私の顔に覆いかかっているベールをそっと上へ持ち上げる。

 真剣な眼差しの彼、彼の瞳に吸い込まれたのか私は目をそらすことが出来ない。彼の顔がゆっくりと私に近づいてくる。それに合わせるかのように私は自然と目を閉じる。

 そして……

 そして……




ピピピピピ……

 隣の部屋からスマートフォンらしき目覚ましアラーム音が聞こえてくる。そのせいで起きなくてもいい時間に私は毎朝起こされていた。

「はぁ、夢か。せっかく良いところだったのに~」

 もう少しで誓いのキスが出来たのに、寸前で起こされてしまったこの怒りを、見ず知らずの隣人が住む部屋の壁に枕を投げぶつけた。

 歩くたびにギシギシ音の出るフローリングに生活音が丸聞こえの薄い壁、まぁ一言で言うと若い女が一人で住むようなところでない古いアパートの一室に私は住んでいる。

 何も快適さゼロのこの空間に好きで住んでいるわけではない。理由はただひとつ、私が貧乏だからだ。

 夢の中の結婚式ではたくさんの人に祝福されていたが、実際の私には頼れる人はいない。十八歳の時、家族とは訳あって決別した。連絡も一切してない。相談できる友人もいない。とにかく私は今、生きていくのに精一杯の状態だ。

 そんな孤独な私だからなのか『結婚』というものに憧れを抱いている。幸せな結婚、温かい家族……どうやら私の妄想は夢にまで現れたようだ。

「夢の中の私、幸せそうだったな」

 夢と現実の違いを突きつけられたような感じでフゥッとため息がでる。それにしても、夢の中の私の隣にいたあの新郎は一体誰だったのだろう。思い出そうとするが、顔をよく思い出せない。

「義雄だったらいいな」

 実はこんな私にも最近運命の出会いがあり、初めて彼氏ができた。それが義雄だ。私にとって最後の恋でありたいと願う。
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