結婚してみませんか?

彩里 咲華

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私の気持ち

ストーリー20

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「うわぁ、ひどい顔」

 一晩泣き明かし、気づけば朝になっていた。洗面台の鏡で自分の顔を見ながら呟く。

 赤く腫れ上がった目に、目の下のクマ。取り敢えず目を冷やし、後は化粧と眼鏡で目立たないように誤魔化すと、仕事に向かった。

 本当は仕事なんてする気分じゃないけど、流石に失恋したってだけで仕事を休む訳にはいけない。

「恋ちゃん、おはよう」

 会社に着くと、先に出社していた詩織が声をかけてきた。

「おはよう」

「……なんか恋ちゃん、顔色悪いよ? 具合悪い?」

 詩織は心配そうに私の顔を覗き込んでくる。

「そう? 少し寝不足だからかな。全然大丈夫よ」

「大丈夫ならいいんだけど……相沢さんと仲直りできた?」

「……うん、心配しないで。私コーヒー飲んでくる」

 智章さんとの結婚が解消された事、私の口からはまだ言えない。

 私は席から立ち上がり、気分転換に給湯室へコーヒーを入れに行こうとした。

「……あれ?」

 立ち上がった瞬間、何だか頭がクラっとして、そのまま私の目の前が真っ暗になった。

「……ん……ここは?」

 何だかまぶたが重い。ボーっとしながら目を開けると、見覚えのない場所にいた。

「目が覚めたかな。気分はどう?」

 声のする方に顔を向けると、そこには笹倉さんと……その後ろには智章さんがいる。

「智章さん!?」

 一瞬、自分の目を疑ったが確かに智章さんがいる。私は思わずガバッと起き上がり智章さんを見た。

「恋さん、そんなに勢いよく起きたらダメだよ。ほら横になって」

 笹倉さんに注意され私はまたベッドに転がる。よく見ると、腕には点滴の針が刺さっている。

「ここ……病院?」

「うん。恋さん会社で倒れたんだよ。それで病院に運ばれて今点滴中」

 笹倉さんが現状を教えてくれた。

「でも、何で二人がここに?」

「恋さんの友人が相沢君に連絡してくれてね。編集長は今いないし、代わりに様子を見に来たんだ」

 友人、詩織かな。私は智章さんをチラッと見る。

「……詩織さんが連絡してくれたんだ。凄く心配してたよ」

 智章さんは私と視線を合わせずに言う。

「じゃあ俺は編集長に連絡してくるから」

 椅子に座っていた笹倉さんはスマートフォンを手に持ち立ち上がった。そのまま病室を出ようと智章さんの横を通った時、何故か笹倉さんは足を止めた。

「……その前に独り言を言わせてもらおうかな。俺には想い人がいる。長年の片想いだけどね。そしてその相手は、恋さんではない」

 そう言うと笹倉さんは病室を出て行った。独り言と言っていたけど、明らかに智章さんに向けて言っているように聞こえた。

 でも何でわざわざ笹倉さんは今その話をしたのだろう?

まさか……。
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