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結婚してみますか?
ストーリー6
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『俺と…結婚してみませんか?』
この言葉を聞いてから一週間が過ぎた。私は自分の生活リズムを崩す事なく、いつもと同じ日々を過ごしている。
本気で言ったのか、冗談だったのかは分からないし、何故あの流れで結婚しませんか? になったのかも分からない。
彼はただ一言、『考えてみて』と爽やかな笑顔で私に言って、この日は解散した。
普通なら冗談の一言で片付けてしまうところだけど、私の勘が冗談ではないかもと言っている。
彼の表情を思い出しながらフゥっとため息をつく。正直、私の心はモヤモヤしていた。
今まで遠い存在だった『結婚』が今私の目の前に迫っているなんて。
私の中の急展開……。
興味がないと即刻断る事も出来たが、私は断る事に躊躇してしまった。
何故だろう。私らしくない。
まず、結婚が本気か冗談かを確認しないといけない。冗談ならこんなにモヤモヤする必要ないし。
でも私は相沢さんの連絡先を知らない。一緒に飲んだ夜に連絡先の交換をするのを忘れていたのだ。
「仕方ない」
次の日、私は仕事が終わると家に帰らずにそのまま相沢さんの勤めている会社=母の勤務先へと向かった。
面倒だと思ったけど、このよく分からないモヤモヤした状況が何か嫌だ。
会えるか分からないけど会社で待つしか会う方法がないので、会社ビルの入り口付近で相沢さんを待ってみることにした。
「恋さん?」
「あっ、笹倉さん」
仕事終わりの笹倉さんが会社ビルからでて来た。入り口付近にいた不審者のような私に声をかける。
「こんな所でどうしたんですか? 編集長ならもう帰られましたけど」
「いえ、今日は母に用事ではなく……別の人に用事があって」
「別の人?」
私は戸惑ってしまい、言葉が上手く出てこない。ここで相沢さんの名前を出してよいものか。
「えっと……フォトグラファーの相沢さんってご存知ですか?」
私は笹倉さんから視線を逸らし気味に尋ねる。何か気恥ずかしい。
「相沢さん? あぁ、もしかして相沢 智章君の事かな」
「そうです」
「彼ならまだ中で仕事してるのを見かけたけど」
「それではもう少し……ここで待ちます」
「いえ、いつになるか分かりませんし相沢君呼んできますよ。待ってて下さい」
笹倉さんはスタスタと会社ビルへと戻っていく。
「あっ、ちょっと」と呼び止めたけど私の声は届かなかった。
それから少しして中から笹倉さんと相沢さんが話をしながら出てきた。
「あれ? 来客って……恋ちゃん?」
私は勝手に会いに来てしまった恥ずかしさからか、下を向いて相沢さんと目を合わせなかった。
誰も声を出さずシーンとした雰囲気が何だか気不味い。
「じゃあこれで失礼します」
笹倉さんは何かを感じ取ったのか、そのまま帰ろうとする。
「笹倉さん、ありがとうございました。あの、私がここに来た事、母には……」
「はい、内緒にしときます」
私がお願いすると、笹倉さんは少し微笑んで帰って行った。
「恋ちゃん会いに来てくれたの?」
相沢さんは嬉しそうに私の元へ近寄ってきた。
「邪魔してごめんなさい。仕事が終わるまで待つつもりだったんですけど」
「今、今日撮った写真をチェックしてるんだ。もう少しで終わるから待ってて」
相沢さんは笑顔になり大きな手で私の頭をポンっとすると、そのまま走ってまた中に戻っていった。
この言葉を聞いてから一週間が過ぎた。私は自分の生活リズムを崩す事なく、いつもと同じ日々を過ごしている。
本気で言ったのか、冗談だったのかは分からないし、何故あの流れで結婚しませんか? になったのかも分からない。
彼はただ一言、『考えてみて』と爽やかな笑顔で私に言って、この日は解散した。
普通なら冗談の一言で片付けてしまうところだけど、私の勘が冗談ではないかもと言っている。
彼の表情を思い出しながらフゥっとため息をつく。正直、私の心はモヤモヤしていた。
今まで遠い存在だった『結婚』が今私の目の前に迫っているなんて。
私の中の急展開……。
興味がないと即刻断る事も出来たが、私は断る事に躊躇してしまった。
何故だろう。私らしくない。
まず、結婚が本気か冗談かを確認しないといけない。冗談ならこんなにモヤモヤする必要ないし。
でも私は相沢さんの連絡先を知らない。一緒に飲んだ夜に連絡先の交換をするのを忘れていたのだ。
「仕方ない」
次の日、私は仕事が終わると家に帰らずにそのまま相沢さんの勤めている会社=母の勤務先へと向かった。
面倒だと思ったけど、このよく分からないモヤモヤした状況が何か嫌だ。
会えるか分からないけど会社で待つしか会う方法がないので、会社ビルの入り口付近で相沢さんを待ってみることにした。
「恋さん?」
「あっ、笹倉さん」
仕事終わりの笹倉さんが会社ビルからでて来た。入り口付近にいた不審者のような私に声をかける。
「こんな所でどうしたんですか? 編集長ならもう帰られましたけど」
「いえ、今日は母に用事ではなく……別の人に用事があって」
「別の人?」
私は戸惑ってしまい、言葉が上手く出てこない。ここで相沢さんの名前を出してよいものか。
「えっと……フォトグラファーの相沢さんってご存知ですか?」
私は笹倉さんから視線を逸らし気味に尋ねる。何か気恥ずかしい。
「相沢さん? あぁ、もしかして相沢 智章君の事かな」
「そうです」
「彼ならまだ中で仕事してるのを見かけたけど」
「それではもう少し……ここで待ちます」
「いえ、いつになるか分かりませんし相沢君呼んできますよ。待ってて下さい」
笹倉さんはスタスタと会社ビルへと戻っていく。
「あっ、ちょっと」と呼び止めたけど私の声は届かなかった。
それから少しして中から笹倉さんと相沢さんが話をしながら出てきた。
「あれ? 来客って……恋ちゃん?」
私は勝手に会いに来てしまった恥ずかしさからか、下を向いて相沢さんと目を合わせなかった。
誰も声を出さずシーンとした雰囲気が何だか気不味い。
「じゃあこれで失礼します」
笹倉さんは何かを感じ取ったのか、そのまま帰ろうとする。
「笹倉さん、ありがとうございました。あの、私がここに来た事、母には……」
「はい、内緒にしときます」
私がお願いすると、笹倉さんは少し微笑んで帰って行った。
「恋ちゃん会いに来てくれたの?」
相沢さんは嬉しそうに私の元へ近寄ってきた。
「邪魔してごめんなさい。仕事が終わるまで待つつもりだったんですけど」
「今、今日撮った写真をチェックしてるんだ。もう少しで終わるから待ってて」
相沢さんは笑顔になり大きな手で私の頭をポンっとすると、そのまま走ってまた中に戻っていった。
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