15 / 20
第二章 お魚マウント舞踏会
8
しおりを挟む
「エルフの王子がこちらに来ている、だと……?」
「そんなっ! まさか私のことを見ているんじゃ……どうしましょう、ヴァルター様……っ!」
「君の美しさを侮っていた僕を許してくれ……! だがしかし、君をむざむざ奪われたりはしないよ、リリー」
「嬉しいです、ヴァルター様! 私が愛しているのはヴァルター様だけです!」
ひしっと抱き合う二人の横を通り過ぎて、アルトがわたしの前にやってきたかと思うと、わたしの目の前で膝を折りましたわ。
どうしましたの? 膝に矢を受けてしまいましたの??
「イリス。今夜のおまえは他の誰より美しい。世界樹の花のように可憐で枝のようにしなやかだ」
突然の美辞麗句にびっくりですわ。
どうしてしまいましたの? アルト、拾い食いでもしましたの??
「どうか俺とファーストダンスを踊ってはくれないだろうか」
跪いてダンスを請うアルトは輝かんばかりに様になっていますわ。
流石は王子様の貫禄です。
しかしなぜ急にこんなパフォーマンスを? と首を傾げた直後に気づきましたわ。
横で唖然とした顔をして固まっている、ヴァルター様のお姿に!!
なるほど! アルトはわたしのためによりよいマウントを取らせてくれようとしているんですわ!!
リリーまで一緒に驚かせてしまっているようでしたけれど、悪い驚きではないし、構いませんわね。
今ちょっとお醤油とお味噌を見つけてしまいましたので、本当ならダンスなんか踊っている場合ではないのですわ。
だけど、アルトはわたしのためにここまでしてくれましたわ。
友達がいのないことはできませんわ!
わたしもここは、全力で応えるべきでしょう!!
「喜んでお受けいたしますわ、アルト様!」
「かわいい」
うちのちょっと変わったお兄様以外には言われたことのない賛辞がアルトから飛び出しましたわ。
ヴァルター様の顎がカクーンと落ちましたわ。完全に理解しましたわ!
悪役に仕立て上げて婚約破棄して国から追放した元婚約者が、宗主国の王子のパートナーになっているだけでなく。
実はラブラブ!? だったりしたらもっともっと驚きますわよね!
四方八方から飛んでくる驚愕や羨望、嫉妬の眼差しが最高に気持ちいいですわ!
もっと、もっとちょうだいなのですわ!!
「ふふふん!」
「これがドヤ顔……かわいすぎて胸が苦しい」
アルトもノリノリで演技してくれていますわ。
全力で乗っかっていきますわよ!
エスコートされて、わたしとアルトだけが大広間の中央に進み出ますわ。
ちなみにダンスならバッチリ踊れますわ。
何しろ公爵令嬢でしたし生まれながらに王太子ヴァルターの婚約者だったので。叩き込まれておりますの。
運動した後のご飯は鳥の餌でも美味しく感じられますしね!
「すべて俺に任せてくれ、イリス」
不思議と、アルトの微笑みがいつもより煌めいて見えますわ。
本当にわたしに渾身のドヤ顔をさせてくださいましたわ。正直、冗談みたいなものだと思っていましたのに。
音楽が始まると、驚きましたわ。
すべて任せろと言うだけあって、本当にダンスがお上手でしたわ。
わたしも下手というわけではありませんが、もっとダンスが上手くなれたように錯覚するくらい踊るのが楽しいですわ。
この時間がずっと続けばいいのにと思うくらい……。
「ありがとうございます、アルト様」
ダンスを終えて、思わずお礼を言ってしまいましたわ。
なんだか嬉しくて顔が笑ってしまいます。
得意の絶頂ではありますけれど、それだけが原因ではありませんわ。
アルトと一緒に舞踏会に出られたことが、何故だかとっても幸せですわ!
「ふぐぅ……ッ!」
アルトが胸を押さえて呻きましたわ。
顔が赤いですけれど大丈夫でしょうか?
保護者の方のジャッジ、どうですの??
「アーロ殿、あれは完全に手遅れのやつですよ。ハハハ」
「あ、あんな女を世界樹に喩えるなんて…… ! ううっ……うっ……うううっ……!」
シャンパンを片手に笑っているヴェリと泣いているアーロが見えますわ。
いつも楽しげなお二方ですわ。
「そんなっ! まさか私のことを見ているんじゃ……どうしましょう、ヴァルター様……っ!」
「君の美しさを侮っていた僕を許してくれ……! だがしかし、君をむざむざ奪われたりはしないよ、リリー」
「嬉しいです、ヴァルター様! 私が愛しているのはヴァルター様だけです!」
ひしっと抱き合う二人の横を通り過ぎて、アルトがわたしの前にやってきたかと思うと、わたしの目の前で膝を折りましたわ。
どうしましたの? 膝に矢を受けてしまいましたの??
「イリス。今夜のおまえは他の誰より美しい。世界樹の花のように可憐で枝のようにしなやかだ」
突然の美辞麗句にびっくりですわ。
どうしてしまいましたの? アルト、拾い食いでもしましたの??
「どうか俺とファーストダンスを踊ってはくれないだろうか」
跪いてダンスを請うアルトは輝かんばかりに様になっていますわ。
流石は王子様の貫禄です。
しかしなぜ急にこんなパフォーマンスを? と首を傾げた直後に気づきましたわ。
横で唖然とした顔をして固まっている、ヴァルター様のお姿に!!
なるほど! アルトはわたしのためによりよいマウントを取らせてくれようとしているんですわ!!
リリーまで一緒に驚かせてしまっているようでしたけれど、悪い驚きではないし、構いませんわね。
今ちょっとお醤油とお味噌を見つけてしまいましたので、本当ならダンスなんか踊っている場合ではないのですわ。
だけど、アルトはわたしのためにここまでしてくれましたわ。
友達がいのないことはできませんわ!
わたしもここは、全力で応えるべきでしょう!!
「喜んでお受けいたしますわ、アルト様!」
「かわいい」
うちのちょっと変わったお兄様以外には言われたことのない賛辞がアルトから飛び出しましたわ。
ヴァルター様の顎がカクーンと落ちましたわ。完全に理解しましたわ!
悪役に仕立て上げて婚約破棄して国から追放した元婚約者が、宗主国の王子のパートナーになっているだけでなく。
実はラブラブ!? だったりしたらもっともっと驚きますわよね!
四方八方から飛んでくる驚愕や羨望、嫉妬の眼差しが最高に気持ちいいですわ!
もっと、もっとちょうだいなのですわ!!
「ふふふん!」
「これがドヤ顔……かわいすぎて胸が苦しい」
アルトもノリノリで演技してくれていますわ。
全力で乗っかっていきますわよ!
エスコートされて、わたしとアルトだけが大広間の中央に進み出ますわ。
ちなみにダンスならバッチリ踊れますわ。
何しろ公爵令嬢でしたし生まれながらに王太子ヴァルターの婚約者だったので。叩き込まれておりますの。
運動した後のご飯は鳥の餌でも美味しく感じられますしね!
「すべて俺に任せてくれ、イリス」
不思議と、アルトの微笑みがいつもより煌めいて見えますわ。
本当にわたしに渾身のドヤ顔をさせてくださいましたわ。正直、冗談みたいなものだと思っていましたのに。
音楽が始まると、驚きましたわ。
すべて任せろと言うだけあって、本当にダンスがお上手でしたわ。
わたしも下手というわけではありませんが、もっとダンスが上手くなれたように錯覚するくらい踊るのが楽しいですわ。
この時間がずっと続けばいいのにと思うくらい……。
「ありがとうございます、アルト様」
ダンスを終えて、思わずお礼を言ってしまいましたわ。
なんだか嬉しくて顔が笑ってしまいます。
得意の絶頂ではありますけれど、それだけが原因ではありませんわ。
アルトと一緒に舞踏会に出られたことが、何故だかとっても幸せですわ!
「ふぐぅ……ッ!」
アルトが胸を押さえて呻きましたわ。
顔が赤いですけれど大丈夫でしょうか?
保護者の方のジャッジ、どうですの??
「アーロ殿、あれは完全に手遅れのやつですよ。ハハハ」
「あ、あんな女を世界樹に喩えるなんて…… ! ううっ……うっ……うううっ……!」
シャンパンを片手に笑っているヴェリと泣いているアーロが見えますわ。
いつも楽しげなお二方ですわ。
69
お気に入りに追加
1,583
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです
珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。
そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた
。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!
アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。
「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」
王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。
背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。
受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ!
そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた!
すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!?
※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。
※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。
※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢の矜持〜世界が望む悪役令嬢を演じればよろしいのですわね〜
白雲八鈴
ファンタジー
「貴様との婚約は破棄だ!」
はい、なんだか予想通りの婚約破棄をいただきました。ありきたりですわ。もう少し頭を使えばよろしいのに。
ですが、なんと世界の強制力とは恐ろしいものなのでしょう。
いいでしょう!世界が望むならば、悪役令嬢という者を演じて見せましょう。
さて、悪役令嬢とはどういう者なのでしょうか?
*作者の目が節穴のため誤字脱字は存在します。
*n番煎じの悪役令嬢物です。軽い感じで読んでいただければと思います。
*小説家になろう様でも投稿しております。
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでのこと。
……やっぱり、ダメだったんだ。
周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中
※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる