婚約破棄された悪役令嬢は追放されたので好きなものを食べますわ!

山梨ネコ

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第二章 お魚マウント舞踏会

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「うーん、かなり国際色豊かというか、好みが分かれる味が多いですわね」

 わたしは基本何でも美味しく食べるたちですが、創意工夫をこらしすぎたキワモノはちょっとどうかと思いますわ。
 いやでも、この料理を作った国の方にとっては故郷の伝統料理かもしれないのですわね。
 悪い感想は思うだけで口に出すのはやめておきますわ。

 帝国舞踏会の開催時間。
 とりあえずお米に合うおかずを探すため、わたしは先に会場に入場することになりました。
 アルトが一緒に入場すると言ってくれましたが、アルトと一緒にいたらご飯を食べるどころじゃなさそうですわよね?

 それに、王子は最後の方に入場するものでしょう?
 わたしのためにアルトが軽々しく扱われるようでは困ります。
 アルトはわたしのことをわかってくれる、初めての友達ですものっ!

 なので帝都でほぼ無名の私はこれ幸いと立食形式で供されるお料理の数々に舌鼓を打っているというわけですわ!

「あ、あそこは人が集まっていますわね。きっと美味しいに違いありませんわ!」

 美味しい料理のテーブルには人が集まっていますわ。
 その側でソワソワハラハラしているのは、そのテーブルの料理を担当している属国の方なのかもしれません。
 国の威信がかかっていそうな面構えですわ。
 探せばリーンバルト王国のテーブルもあるのかもしれないですわね。
 あの国の料理も悪くはないんですのよ。
 男性しか食べることを許されないような料理なら、ちゃんと普通に美味しいんですのよ。

 でもあの国、女性を痩せさせておくために女性に与えられる料理はクソみたいにまずいんですの。鳥の餌ですの。

「うんうん、中々イケますわね」

 たくさん食べたい気持ちをぐっと堪えつつ。
 一口ずつ食べてインスピレーションをかき立てられながら、人の多いテーブルを渡り歩くわたし、渡り鳥のよう。

「次はあちらですわーッ!」

 意気揚々と次に人の多いテーブルに近づいていったのですが。
 ――そのテーブルは、どうも料理が人気で人が集まっていたわけではないようでした。

「まったく、野蛮人のくせに我々と同列という顔をされては困る」
「あのテーブルはなんですの? 生臭いですわ。嫌ですわねえ」
「見てください。何の調理もされていない食材が並んでいるだけのあの皿を」
「帝国は各国の文化を料理で示すようにとおっしゃったのに、これが料理とは」
「そんなこと言っては気の毒ですよ。これが彼ら野蛮な国の人々にとっては精一杯の料理、なのでしょうから」

 これは、いじめの現場ですわ……ッ!
 人が集まっているのは見物のためですわ! 性悪見本市ですわ!!

 しかし、そんなにボロクソに言われる料理がどんなものかは気になりますわ。
 だけど野次馬に加わってはあの方々と同類になってしまいますわ。
 でもでも、どんな料理なのかはとっても気になって仕方ありませんわ!!

 料理はすべてに優先されますわッッ!! いざ!!
 ――人混みに飛び込んだその直後、わたしは白目を剥きましたわ。

「クキャーッ!?」
「うわっ、なんだね君は」
「あのドレスはエルフ絹? いやまさか」

 ざわざわしている周囲の声など何一つ聞こえて来ませんでしたわ。
 わたしはこのテーブルの担当者を探すのに忙しかったので。
 しかしすぐに見つけましたわ。

 みんなに遠巻きにされて肩身が狭そうにぽつんとしている男性がいましたので!!

「これはまさかこれはまさかこれはまさかッ!! お刺身ですのッッ!?」
「え? ええ、そうですが……」
「キャーッ!! 近くに海はないですわよ!? どうやってこの新鮮な状態を保ちましたの!?」
「生きたまま運んで来て、こちらで捌いたのです。鮮度に問題はなく、これがもっとも美味しく食べられる方法なのですが、帝国の方には馴染みがないようですね……」
「内陸ですから海のものの食べ方に慣れていないのは仕方のないことですわ。それはともかくッ!」

 ぷんぷん薫ってくる馨しいこの香り。
 心当たりしかなくて懐かしさで胸が張り裂けそうですわ!

「イヤーッ!! 嘘! 信じられませんわ!! こちらの黒い液体はお醤油ではなくてッッ!?」
「オショーユ? いえ、豆油です」
「お醤油ではありませんのッ! お醤油があるということはつまりッ! お味噌もあるのではありませんか!?」
「オミソ? もしや発酵味豆のことをおっしゃっている? あれは見た目が帝国の方々には好まれませんので――」
「ないんですの?? どうなんですの??」
「――こちらの肉料理で使用しています。もしお気に召しましたら在庫もございますので、交易も可能でございます」

 言い値で買わせてくださいませ! と叫ぼうとしたその瞬間、邪魔が入ってしまいましたわ。
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