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第三章:真夏の恐怖怪談

エピローグ③

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 あたしは、夢守市の市名が好きだ。夢を守る。誰の夢をも奪わず、支える。そういう意味だと思っているからで、おばあちゃんが教えてくれたことだ。

 両親が離婚して、友達もいないところに引っ越しをすることになって、心細くて泣いていたころ。この町は魔法の町だとおばあちゃんは教えてくれた。
 毎晩、枕もとで不思議な話を教えてくれた。その優しさで、あたしはゆっくり元気になっていった。

 この町には、不思議な生き物が住んでいる。けれど、決して差別してはいけないよ。ここはね、昔からあやかしと共存している場所なんだ。最近は見える人が少なくなって、それはとても寂しいことだけどねぇ。

 おばあちゃんはその昔、あやかしと恋心を交わしたことがあったそうだ。いつか寿命が尽きたら迎えに行くと言われている。だから、寂しくないのよ、と。入院してしまってからは、見舞うたびにそう口にしていた。たまに顔を出すお父さんはとうとうぼけたかと寂しそうにしていたけれど、あたしにはそうは思えなかった。
 あたしを心配させないための優しい嘘かもしれないとは思っていたけれど。

 その「優しい嘘」がもしかしたら本当だったのかもしれない。そう考えるようになったのは、あやかしよろず相談課に異動になってからだ。
 嘘なのか本当なのか、優しい作り話なのか。もう答えを知りようもないけれど、あたしのなかにはあたたかい記憶として残っている。だから、それでいいのだ。

 大好きなこの町で大好きな人たちと、今日もあたしは生きていく。



[完結]
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