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縁とは異なもの味なもの

10:時東はるか 12月17日21時55分 ①

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 インディーズの時代を含めると、ステージに立つようになって十年近い歳月が経っている。
 それでも、毎度こうして緊張するのだ。華やかな場に向いていないのかもしれないと後ろ向きな感想を抱くことがある。
 ギターを弾き始めたころの時東は、コンサート会場を満員にするようなミュージシャンは、舞台に立っても緊張しないのだと思っていた。生まれながらのスターなのだと信じていたからだ。
 そんな自分を笑い飛ばして発破をかけたのは、はじめてバンドを組んだ親友だった。

 そんなもん、誰でも緊張するに決まってる。というか、俺もおまえも生まれながらのスターなわけがないんだから、緊張呑み込んで、押し隠して。それで、どうにか格好良く歌って、騙せばいいんだよ。
 見てくれているお客さんがスターだって思ったら、俺たちはスターだ。

 親友の励ましに安心して、時東は笑ってマイクの前に立った。後ろには、誰よりも信頼できる仲間がいた。
 自分にもキラキラとした青春はあったのだ。覚えていることが苦しくて、なかったことにして生きてきたけれど。
 そうして、この年になって、思う。あの人なら、あのときの俺になんと言っただろう。今の俺に、なにを言うだろう。



[10:時東はるか 12月17日21時55分]



 ネットの記事を読んだとき、まったくもって馬鹿な話だと時東は呆れた。同時に、あの人の厚意に甘えていた事実を痛感した。
 熟慮しなくとも、あたりまえの話だったのだ。
 いくら営業時間外だろうと、隔週での訪問が数ヶ月だ。人目につかないほうがおかしい。
 持ちつ持たれつって案外難しいよねぇ、などと春風は笑っていたけれど、いっそのこともっとはっきりと教えてほしかった。
 どうせ、あの人は知っていたのだろうから。教えてくれていたら、あの家にいるうちに謝ることもできたのに。
 まぁ、それも、八つ当たりでしかないと理解しているけれど。
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