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3:不老の魔法使い

47.大魔法使いの帰還 ②

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 まともすぎるくらいまともな大魔法使いの姿だった。あれはいったい誰なのか、と馬鹿なことを思ってしまうくらいに。


「テオバルド、ご挨拶はいいのか? おまえの担当分もなんなら俺が見てやるが」
「ジェイデン」

 遠慮も会釈もなく背中を叩かれて、苦笑いでテオバルドは振り返った。

「アリソンさんにも言われたばっかりだよ」
「なるほど」

 なるほどの意味はまったくわからなかったが、ジェイデンは納得した様子である。そうして、したり顔で、うん、と大きく頷いた。

「まぁ、言いたくなる気持ちはわかる」
「言いたくなる気持ちって……」
「なんなら見てやるとは言ったが、実はもう交代の時間なんだ。ミリーが気を揉んでいたぞ。テオバルド先輩が無心で働いていらっしゃるので、交代の時間が過ぎていることを申し上げづらい、と」
「……本当だ」

 懐中時計で時間を確認して、半ば呆然と呟く。たしかに十五分ほど過ぎていた。言ってくれたらいいのに。
 深々と溜息を吐けば、再び背中をぱしんと叩かれる。

「だから、俺が代わりに申し上げに来たわけだ。残りはもう交代させておいたから、そこは気にしなくていい」
「…………ありがとう、ジェイデン」
「どういたしまして」

 にっと笑ったジェイデンが、会場となっている建物のほうに視線を向けた。先ほどまでテオバルドも見ていたところだ。

「それにしても、噂とも、おまえから聞いた話とも、随分と雰囲気の違うお方だったな。森の大魔法使いさまという人は」

 それも、さっきアリソンさんに言われたよ、と返す代わりに、テオバルドは首を横に振った。

「いっそのことはっきりと言ってくれ、ジェイデン」
「いや、随分とまともそうな御仁だったな、と」

 テオバルドに視線を戻すことなく、だが、まぁ、とジェイデンが続ける。どこまで踏み込んでいいのか測りかねる調子だった。

「どう見ても、十五、六の年にしか見えなかったが」

 そういうふうにできてるんだよ、と心のうちでテオバルドは答えた。
 ジェイデンにしても、どうして「そうなった」かの見当はついてるだろうと思う。なぜ「そうした」かまでは、わからないだろうけれど。

「昔からだよ」

 どう言うべきか悩んだ末に、曖昧な言葉を選ぶ。だが、事実だった。
 はじめて出逢った七つのときも、十五であの人のもとを離れたときも。アシュレイはずっと同じだ。なにも変わらない。それなのに、自分ばかりが変わってしまっている。

 そうして、とうとう姿かたちだけは、あの人を追い抜いた。

 その現実を目の当たりにしたから、息を呑んでしまったのだ。わかっていたはずだったのに。
 夜になって、少し涼しくなった風が、渡り廊下を吹き抜けていく。
 
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