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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 7 ③
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――そういう話を聞きたかったわけじゃないんだけどなぁ。
なんてことは、荻原の顔を見ていれば、言うべきでないのだろうなぁとわかったので、それも口にはしなかったけれど。
対人関係の云々について榛名に偉そうなことを言っておきながら、自分もべつにそこまで他人に興味を持っていない。最低限の自覚はしていることで、いつだったか「視野広いくせに、変なところ狭いよな。おまえの交友関係、チビのころから変わってないだろ。おまえの中心、結局ずっと成瀬の背中」とまで篠原に言われた覚えもある。言われた当時はさすがにショックは受けたものの、それはさておいて。
……まぁ、たしかに、以前と違って、四谷のことをただ苦手だと思ってるわけではないし。
思うところがないわけではないものの、それはお互い様だろうし、世話にもなっているし。十把一絡げみたいな対応をするのは不義理なのだろうな、とも思う。でも、それを他人にわざわざ言われたくないというか。悶々としたまま、生徒会室の戸締りをして、廊下を進む。
肌に伝わる寒さに、靴を履き替えて外に出たところで、皓太は日が落ちることが早くなった空を仰いだ。たしかな冬の気配がすぐそこまで近づいている。
「もうそろそろ一年、か」
自分たちが高等部に上がって、そうして。次の春には新しい新入生が入ってきて、あの人たちはいなくなる。その日は確実に迫っていた。
――あたりまえのことだけどな。
時間は流れる。人が変われば、状況は変わる。変わらないものはないし、終わらないものはない。それだけのことで、その流れの一部に与することを選んだのは自分だ。
「今日も遅くまで残ってたんだな」
おつかれさま、という声に、はっとして振り返る。見慣れた柔らかい笑顔に、こういった間の良さも才能の一種なのだろうなぁと思いながら、皓太は呼びかけた。ちょうど頭に浮かんでいたり、あるいは単純に、ものすごく的確な場面で姿を現すことが、それは、もう、昔からよくあるのだ。今出てきてくれなくてもいいのになぁと思うタイミングで現れることもあるのだけれど。
「成瀬さんこそ。勉強するにしても、寮の部屋でしたらいいのに」
自分たちと違いひとり部屋なのだから、煩わされることはないだろうに、との疑問を正確に感じ取ったらしい。なんでもない調子で成瀬が笑う。
「寮ですることも多いけどね、気分転換」
「気分転換かぁ」
「そう。たまには。皓太もちゃんとできてる? 気分転換」
「……そういう相談からは、完全に一線引いたんだと思ってた」
生徒会に近づかないことが彼なりの気遣いと信用とわかっていたので、なにも文句はないつもりだったのに。この数日の――主に同室者のことに対する悶々のせいか、妙に拗ねた声になってしまった。
なんてことは、荻原の顔を見ていれば、言うべきでないのだろうなぁとわかったので、それも口にはしなかったけれど。
対人関係の云々について榛名に偉そうなことを言っておきながら、自分もべつにそこまで他人に興味を持っていない。最低限の自覚はしていることで、いつだったか「視野広いくせに、変なところ狭いよな。おまえの交友関係、チビのころから変わってないだろ。おまえの中心、結局ずっと成瀬の背中」とまで篠原に言われた覚えもある。言われた当時はさすがにショックは受けたものの、それはさておいて。
……まぁ、たしかに、以前と違って、四谷のことをただ苦手だと思ってるわけではないし。
思うところがないわけではないものの、それはお互い様だろうし、世話にもなっているし。十把一絡げみたいな対応をするのは不義理なのだろうな、とも思う。でも、それを他人にわざわざ言われたくないというか。悶々としたまま、生徒会室の戸締りをして、廊下を進む。
肌に伝わる寒さに、靴を履き替えて外に出たところで、皓太は日が落ちることが早くなった空を仰いだ。たしかな冬の気配がすぐそこまで近づいている。
「もうそろそろ一年、か」
自分たちが高等部に上がって、そうして。次の春には新しい新入生が入ってきて、あの人たちはいなくなる。その日は確実に迫っていた。
――あたりまえのことだけどな。
時間は流れる。人が変われば、状況は変わる。変わらないものはないし、終わらないものはない。それだけのことで、その流れの一部に与することを選んだのは自分だ。
「今日も遅くまで残ってたんだな」
おつかれさま、という声に、はっとして振り返る。見慣れた柔らかい笑顔に、こういった間の良さも才能の一種なのだろうなぁと思いながら、皓太は呼びかけた。ちょうど頭に浮かんでいたり、あるいは単純に、ものすごく的確な場面で姿を現すことが、それは、もう、昔からよくあるのだ。今出てきてくれなくてもいいのになぁと思うタイミングで現れることもあるのだけれど。
「成瀬さんこそ。勉強するにしても、寮の部屋でしたらいいのに」
自分たちと違いひとり部屋なのだから、煩わされることはないだろうに、との疑問を正確に感じ取ったらしい。なんでもない調子で成瀬が笑う。
「寮ですることも多いけどね、気分転換」
「気分転換かぁ」
「そう。たまには。皓太もちゃんとできてる? 気分転換」
「……そういう相談からは、完全に一線引いたんだと思ってた」
生徒会に近づかないことが彼なりの気遣いと信用とわかっていたので、なにも文句はないつもりだったのに。この数日の――主に同室者のことに対する悶々のせいか、妙に拗ねた声になってしまった。
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