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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 6 ⑤
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「あ、でも、茅野さんは寮の中で起こったことだからってけっこう気にしてくれたから、教えたほうがいいのかもしれないけど」
「ちょっと」
「まぁ、でも、俺はそこまでなにも思ってないし、きつめのお説教くらいで終わるんじゃないかな」
「いや、違うから」
「え?」
「なにが『え?』なの? 違うでしょ。そうじゃなくて」
「……そうじゃなくて?」
また、見当違いのことを言ってしまっただろうか。きゅっと眉根を寄せた四谷の顔を見つめ、行人は問い返した。しばらくの沈黙のあと、四谷はぽつりと呟いた。まるで懺悔をするみたいに。
「俺、知ってたのに、黙ってたんだよ。なにを盗ったのかも」
「えっと」
真剣な四谷の声音と反比例した自分のそれは、間の抜けたほどの困惑に満ちていた。
「でも、なに盗ったのかなんて、そのときは知らなかっただろ?」
仮に、四谷が誰かが自分たちの部屋に入るのを見ていたとして。あるいは、入った誰かから打ち明けられたのだとして。後者だった場合、時期がいつかはわからないけれど、少なくとも前者だった場合、四谷はなにかなんて知らなかったはずだ。自分の秘密を知らなかった以上、そうであったはずだ。
後者だったとしても、四谷が悪意をもって黙っていたとは思えなかった。すべてが終わった後に思い当たってしまったか、すべてが終わる前で深刻に捉えなかったか。その程度のことだろうと思う。
しどろもどろになりながらも、行人はどうにか説明をした。もし、仮に、罪悪感を抱いているのだとしたら、自分にとっては不要なものなのだと。
「だから、その、……なんというか、べつにそんなに気に病まなくても」
「なんで、そんな他人事なわけ」
ほんの少し硬さの取れた、代わりに呆れの濃くなった声。その事実に幾分かほっとして、だって、と答える。
「いまさらだし。いや、いまさらっていうのはちょっと言葉が悪かったと思うけど、つまり、そのくらい、べつにどうでもいいというか」
「……」
「いや、でも、逆に、ほら、他人事じゃなくて、俺のことなんだから。俺が気にしてないんだったら、それでいいと思うんだけど……」
「俺、すごい緊張したし、こんなこと言うの、みっともなくて嫌だったんだけど」
今度のそれは、なんだかちょっとやけくそのようだった。うん、と相槌を打つ。
「絶対言いたくないと思って、知られたくなくて、黙ってて」
「その、気づかなくてごめん」
黙ってるの、きつかったんだろうな、ということは、今の四谷を見ていたらわかった。秘密を抱えることに行人は慣れている。それでも、だからこそ、その気持ちは、たぶん、わかる。
――でも、なんで、急に爆発したみたいにあんな態度になったんだろ。
四谷の言うところの罪悪感が募りに募って、自分といることが嫌になってしまったのだろうか。それとも、もっと早くに気づいてほしかったのだろうか。
「ちょっと」
「まぁ、でも、俺はそこまでなにも思ってないし、きつめのお説教くらいで終わるんじゃないかな」
「いや、違うから」
「え?」
「なにが『え?』なの? 違うでしょ。そうじゃなくて」
「……そうじゃなくて?」
また、見当違いのことを言ってしまっただろうか。きゅっと眉根を寄せた四谷の顔を見つめ、行人は問い返した。しばらくの沈黙のあと、四谷はぽつりと呟いた。まるで懺悔をするみたいに。
「俺、知ってたのに、黙ってたんだよ。なにを盗ったのかも」
「えっと」
真剣な四谷の声音と反比例した自分のそれは、間の抜けたほどの困惑に満ちていた。
「でも、なに盗ったのかなんて、そのときは知らなかっただろ?」
仮に、四谷が誰かが自分たちの部屋に入るのを見ていたとして。あるいは、入った誰かから打ち明けられたのだとして。後者だった場合、時期がいつかはわからないけれど、少なくとも前者だった場合、四谷はなにかなんて知らなかったはずだ。自分の秘密を知らなかった以上、そうであったはずだ。
後者だったとしても、四谷が悪意をもって黙っていたとは思えなかった。すべてが終わった後に思い当たってしまったか、すべてが終わる前で深刻に捉えなかったか。その程度のことだろうと思う。
しどろもどろになりながらも、行人はどうにか説明をした。もし、仮に、罪悪感を抱いているのだとしたら、自分にとっては不要なものなのだと。
「だから、その、……なんというか、べつにそんなに気に病まなくても」
「なんで、そんな他人事なわけ」
ほんの少し硬さの取れた、代わりに呆れの濃くなった声。その事実に幾分かほっとして、だって、と答える。
「いまさらだし。いや、いまさらっていうのはちょっと言葉が悪かったと思うけど、つまり、そのくらい、べつにどうでもいいというか」
「……」
「いや、でも、逆に、ほら、他人事じゃなくて、俺のことなんだから。俺が気にしてないんだったら、それでいいと思うんだけど……」
「俺、すごい緊張したし、こんなこと言うの、みっともなくて嫌だったんだけど」
今度のそれは、なんだかちょっとやけくそのようだった。うん、と相槌を打つ。
「絶対言いたくないと思って、知られたくなくて、黙ってて」
「その、気づかなくてごめん」
黙ってるの、きつかったんだろうな、ということは、今の四谷を見ていたらわかった。秘密を抱えることに行人は慣れている。それでも、だからこそ、その気持ちは、たぶん、わかる。
――でも、なんで、急に爆発したみたいにあんな態度になったんだろ。
四谷の言うところの罪悪感が募りに募って、自分といることが嫌になってしまったのだろうか。それとも、もっと早くに気づいてほしかったのだろうか。
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