パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 5 ⑥

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 そうして、第三者だからこそ気軽に「面白いほう」に流されていく。いつだったか篠原が言っていたことだ。
 そのとおりだと思うし、この学園はそういった空気を加速させる雰囲気に満ちている。この春以来、もう、ずっと。

「うん、そうだよな。……でも、せめて、できるだけ気にしないようにする」

 俺にできることなんて、そのくらいだし、と自分に言い聞かせるように榛名が続ける。

「それでも、一番の当事者は俺と四谷なわけで、だから、俺が本当に気にしてないって顔してたら、ちょっとはマシだと思うし」

 今のおまえがそれをしても、いつかの水城みたいに「健気」って勝手に判断されるだけだと思うよ、とはさすがに言うことはできず、そのほうがいいかもね、と皓太は返した。
 実際のところ、それ以上の最善があるとも思えなかったからだ。榛名が悲壮な顔をするよりは四谷に対する当たりが減ることは事実だろうし、少なくとも榛名が非難されることはない。
 四谷が過度に大多数から責められる状況は回避したいと思っているけれど、皓太にとっては、そちらのほうが重要だった。

 ――まぁ、でも、四谷が孤立しそうっていうのは荻原に任せるとして。その代わりってわけじゃないけど、この部屋の鍵の件については、ちょっと鎌かけてみようかな。

 こちらについては、一応自分も当事者のはずだ。過剰に文句を言われる筋合いはない。
 寮生と揉めたいわけでもないし、疑いたいわけではないが、そんなことばかりを言っていることはもうできない立場なのだ。そう、改めて皓太は自分を言い聞かせた。
 もちろん、できる限り穏便に済ませるつもりではいるけれど。

 ――成瀬さん、そういう塩梅、昔からめちゃくちゃうまいんだけどな。

 他人を煽るのがうまいということは、機微を読んで他人を懐柔することも、自分の求める落としどころに誘導することもうまいということだ。
 あの幼馴染みであれば、どんなふうに対処するのだろうか、と。聞いてみたい甘えもあるけれど、あまり頼るなと茅野に釘を刺されたあとだ。
 推測ではあるけれど、たぶん、茅野の忠告は、どうにもならなくあったあとでも今ならフォローをしてやるから、そこまではなんとか自分たちでやれ、ということなのだと思っている。
 まぁ、もっと、純粋に、これ以上の面倒ごとに成瀬を巻き込んでやるなという配慮であった気はするけれど。
 どちらにせよ、榛名もがんばろうとしているのだ。自分がやらない理由はないと皓太は思い決めた。
 
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