パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 5 ③

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 みささぎ祭の準備を通して、本当に榛名は変わった。中等部にいた三年間、誰とも積極的な――まぁ、一部例外はいたけれど――交流は取りませんというふうに分厚い壁を張り巡らせていたのに、その壁が薄くなって、寮生や同級生と少しずつ交流を図るようになった。
 成瀬や茅野は尊敬する先輩であって友人ではなかっただろうから、四谷や荻原と「ふつう」に会話をするようになって、話しかけられても嫌な顔をすることもなくなって。それは、皓太からすると本当に驚きではあったのだけれど、榛名にとっても、きっと驚きで、それで、はじめてできた友人のようなつもりでいたのだろう。

 ――だから、言い方は悪いけど、仲直りしたい、揉めたら自分に悪いところがあった、って固執してる感じがするんだよな、ちょっと。

 榛名本人に指摘をするつもりはないのだが、なんだかどうにも気にかかる。荻原の話を聞いたからこそ、余計に。
 悶々としたものに蓋をし、ありがとう、ともう一度告げて、皓太は話を終わらせた。四谷のことはどうしようかなと悩みながら廊下を歩いていると、背後で朝比奈の声が聞こえた。岡となにか話している。話している内容までは聞こえなかったものの、ひそひそとした雰囲気が伝わってきて、なんだか少し嫌な感じだった。

 ――任せてばっかりで申し訳ないとは思うけど。荻原に任せたほうがいいんだろうな、たぶん。

 自分が出れば、火に油を結果になることは目に見えている。それに、思うところがあることを否定はしないが、孤立させたいわけではないのだ。
 なんで、こう、共通の悪者を見つけだがるんだろうな。うんざりとそんなことを思う。水城もよく使っている手けれど、高等部に上がってから、顕著に目立つようになっている気がした。
 もともとが娯楽の少ない寮生活だ。いろんな噂話は昔からあったし、軽いいじめのようなものもなかったとは言わない。「全員で仲良し」なんていうことは幻想だと承知しているが、一対集団になる構図は避けるべきだろう。それに、とも思う。

 ――なんの根拠もないから、結局、ただの勘だけど。こうやって内輪もめみたいになってんの、なんかすごい水城の思い通りって感じするんだよな。

 それがただの被害妄想だというのなら、それはそれでいいのだが。いまさらながらに蒸し返された春先の鍵の件も含めて、やはり嫌な感じだった。
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