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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 3 ③
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授業を軽く聞き流しながら、それにしても、と皓太はもうひとつのほうへ思考を馳せた。榛名が言っていた話のほうだ。
なにをいまさらと呆れる気持ちを抱いたことも事実で、とは言え、過剰に否定をしてもろくなことにならないとわかったので、「俺も気にしてみる」という曖昧な返事でお茶を濁したのだが。
――そもそも原因がひとつだとは限らないと思うんだけど。
人間関係というものは、さまざまな要因が絡むからこそ面倒なのだろうと皓太は思っている。だから、榛名側の原因もまったくないわけではないのだろうし、榛名が言うように四谷のほうにもなにか理由はあるのかもしれない。
実際にどうだったのかはわからないから、すべて憶測の域を出ない話だ。
だが、もし、仮に、四谷になにか理由があったとして、それを榛名や荻原に打ち明けることのできない理由があるとしたら。なにかしらの負い目と考えることが妥当なのだろうと思う。
――負い目なぁ。
これもそもそもの話だが、四谷と榛名は春ごろまでは確実に仲が悪かった。中等部時代にも小さな衝突はあった覚えがある。
――でも、これは、榛名が気にしてなさそうだから、ないな。
なにが決定的な要因だったのかは知らないが、みささぎ祭を経て少しずつ距離が詰まったことを、思いのほか喜んでいたのは――まぁ、本人はあかさらまに喜んでいるつもりはなかったのだろうけれど――榛名だ。昔のことは完全に水に流しているのだろう。
案外と榛名はそういうところが単純というか、さっぱりとしている。それ以降のことでと考えると、ついつい嫌な方向に進んでしまう。あまり考えたくはなかったのだが、いつまでも逃げを打っていることはできそうにない。それに、すべきでもないのだ。
――説明にも言動にも矛盾はなかったけど、ちょっとタイミング良すぎたんだよな。
もう数ヶ月前のことになるが、校内で榛名が倒れたときのことだ。たしかに、あの時期は見回りと称して風紀委員がよく校内を巡回していたが、それにしても倒れてすぐの現場に居合わせるのはタイミングが良すぎるだろう。
自分を呼びに来た四谷の焦って蒼白だった表情に嘘はなかったと思いたいものの、あの状況で自分を呼ぶという選択が最適だったかというと、皓太にはそうは思えない。
なにせ、呼びに来た四谷自身が「誰か三年生を呼んだほうがいい」と言ったくらいだ。
――いや、まぁ、そのとおりではあるんだけど。
そのほうがよかったとわかっているし、自分ひとりで言っても難しかっただろうことはわかる。ただ。その忠告を無視して自分がひとりで行ったとしても、忠告に従って自分が「誰か」を選択したとしても、風紀のとある人にとって、なんだかものすごく都合が良かったのではないかと思うというだけだ。
なにをいまさらと呆れる気持ちを抱いたことも事実で、とは言え、過剰に否定をしてもろくなことにならないとわかったので、「俺も気にしてみる」という曖昧な返事でお茶を濁したのだが。
――そもそも原因がひとつだとは限らないと思うんだけど。
人間関係というものは、さまざまな要因が絡むからこそ面倒なのだろうと皓太は思っている。だから、榛名側の原因もまったくないわけではないのだろうし、榛名が言うように四谷のほうにもなにか理由はあるのかもしれない。
実際にどうだったのかはわからないから、すべて憶測の域を出ない話だ。
だが、もし、仮に、四谷になにか理由があったとして、それを榛名や荻原に打ち明けることのできない理由があるとしたら。なにかしらの負い目と考えることが妥当なのだろうと思う。
――負い目なぁ。
これもそもそもの話だが、四谷と榛名は春ごろまでは確実に仲が悪かった。中等部時代にも小さな衝突はあった覚えがある。
――でも、これは、榛名が気にしてなさそうだから、ないな。
なにが決定的な要因だったのかは知らないが、みささぎ祭を経て少しずつ距離が詰まったことを、思いのほか喜んでいたのは――まぁ、本人はあかさらまに喜んでいるつもりはなかったのだろうけれど――榛名だ。昔のことは完全に水に流しているのだろう。
案外と榛名はそういうところが単純というか、さっぱりとしている。それ以降のことでと考えると、ついつい嫌な方向に進んでしまう。あまり考えたくはなかったのだが、いつまでも逃げを打っていることはできそうにない。それに、すべきでもないのだ。
――説明にも言動にも矛盾はなかったけど、ちょっとタイミング良すぎたんだよな。
もう数ヶ月前のことになるが、校内で榛名が倒れたときのことだ。たしかに、あの時期は見回りと称して風紀委員がよく校内を巡回していたが、それにしても倒れてすぐの現場に居合わせるのはタイミングが良すぎるだろう。
自分を呼びに来た四谷の焦って蒼白だった表情に嘘はなかったと思いたいものの、あの状況で自分を呼ぶという選択が最適だったかというと、皓太にはそうは思えない。
なにせ、呼びに来た四谷自身が「誰か三年生を呼んだほうがいい」と言ったくらいだ。
――いや、まぁ、そのとおりではあるんだけど。
そのほうがよかったとわかっているし、自分ひとりで言っても難しかっただろうことはわかる。ただ。その忠告を無視して自分がひとりで行ったとしても、忠告に従って自分が「誰か」を選択したとしても、風紀のとある人にとって、なんだかものすごく都合が良かったのではないかと思うというだけだ。
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