パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 3 ②

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 ちら、ともう一度ふたりのほうに目を向ける。勉強を教えてもらい始めている様子に、まぁ、水城は成績も良いから、と皓太は得心をし直した。

「まぁ、たしかにそうだよな」
「そう、そう」

 適当な世間話という調子で相槌を打ちつつ、一眼目の準備をしていた荻原が「ところで」と切り出した。

「榛名ちゃん、今日も生徒会来ないの? 高藤がいじめるからだよ、かわいそうに」
「いや、いじめてないし」

 すぐに意地張っちゃうタイプだってわかってるんだから、加減してあげなよ、ではない。うんざりと皓太は否定を返した。
 むしろ、つい一昨日もよくわからない話を延々と聞かされたばかりである。よくわからない話と言い切ると、なんだかそれはそれで上から目線な気もするけれど、だが、しかし。

 ――四谷があんな態度なのは、なにか理由があるかもしれないもなにも、理由がなかったらしないだろ。

 その理由が、知らないうちに自分がやらかしたなにかに端を発するのか、あるいは、本人の問題か。またあるいは第三者が影響しているかの三択くらいのものだろう。
 それを、ずっと「自分がなにかしたに違いない」と視野狭窄にぐちぐちと落ち込んでいたくせに、あの変わりよう。

 ――たぶんだけど、成瀬さんあたりになんか言われたんだろうな。

 べつにいいんだけど。いいんだけど、なんで、あいつは、成瀬さんに言われたことをああも鵜呑みにするんだろうな。いや、もう、本当にいまさらなのでべつにいいんだけど。

「それならいいけど。ちゃんと落としどころ提供してあげたほうがいいと思うよ。榛名ちゃんが懐いてる三年生、そういうタイプばっかりじゃん」
「まぁ……」

 それもそうかもしれないが、先輩後輩と同級生とではまた違うことにしておきたいところだ。主に自分の逃げどころとして。
 不承不承で応じた皓太に、「まぁ、でも」と荻原はさらりと笑った。

「生徒会には代わりに俺が顔出してあげるよ」
「いや、べつに」
「ちょっと話したいこともあるし。――あ、予鈴鳴るね」

 その言葉とほぼ同時に予鈴が鳴り、荻原が前を向く。中途半端に会話を打ち切られたかたちとなり、釈然としないまま、皓太も教科書を開いた。

 ――ちょっと話したいこと、か。

 教室でも、あるいは、寮でもしにくい話に違いなく、あの人たちが生徒会室で悪巧みをしていた理由をいまさらながらに痛感する。この学園で完全に人の目のつかないところなんて、なかなか存在しないのだ。
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