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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 3 ①
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[3]
昼休みと放課後は生徒会室に籠もる代わりに、朝は教室で過ごすと決めている。
クラスメイトと過ごしたいというよりは、教室内の様子も把握しておかないとならないという、至極現実的な理由からではあるのだけど。
――まぁ、でも、生徒会室に入り浸ってこれ以上クラスから浮くのも悪手だしなぁ。
中等部にいたころはそんなことは考えもしなかったが、今は状況が違うのだ。その元凶を皓太はちらりと眺めた。
あの日。選挙が終わったあと、宣戦布告のようなことを言ったわりに、気味が悪いほど水城の様子は変わらなかった。
以前ほどアルファとは密に行動をともにせず、けれど、そうかと言って孤立しているわけでもない。
今も水城は自分の席に座ったまま、喋りかけにきたクラスメイトとにこにこと会話を交わしている。
「最近、高良くんと仲良しだよねー、ハルちゃん」
「……荻原」
気配なく近づいてくるところ、茅野さんに似てきたなと思ったものの、皓太はその指摘を呑み込んだ。寮生委員である以上しかたがないような気がしたし、自分も似たようなことを思われている気がしたからだ。
遅れて「おはよう」と言いながら、隣の椅子を引いた荻原が「でも、まぁ、よかったね」と人の良い調子で笑う。
「高良くん、高等部からの特進組だからさ、仲良い子ができるのはいいことだよね」
「……まぁ」
相手が相手だけどな、とも内心でのみ突っ込む。べつに、一から十まで目立って対立したいわけでもないつもりだ。
「普通科にいたころはよっちゃんたちとよく一緒だったけど」
最近は寮でも一緒にいるところ見ないなぁ、とぽつりと荻原が言う。
「そうだっけ?」
「そうだよ。中等部のころは時雨くんと岡と四人だったじゃん」
「ああ」
そう言われるとそうだったかもしれない。頷いた皓太に、荻原がなんとも言えない笑みを浮かべた。
「高藤も、本当に榛名ちゃんのこと大きな口で言えないくらいには人間関係興味ないよね」
「そんなこと……」
「榛名ちゃんと違って名前覚えてるし、ある程度把握してるからセーフとか言わないでね。関わる気があるかどうかの問題」
「……」
それは、まぁ、積極的に関わる気はなかったかもしれないが、最低限、自分と周囲が困らない程度には関わっているつもりである。
口にしたところで、「だから、その考え方が」と言われる気がしたからだ。返す言葉はない。
「喧嘩したとかじゃなくて、純粋に特進に上がったことで勉強が大変で、遊ぶどころじゃないって感じらしいけど」
「ああ」
そういうことか、と頷く。普通科とは使用している副教材も異なっているし、授業の進行度合いも違う。途中でクラスが変わったことによる苦労はあるのだろう。
いつだったか榛名も、自分の参考書を見た際に「絶対無理」とやたら嫌そうな顔をしていた。やってできないことはないと思うのだが。それこそ自分が口を出すことでもない。
昼休みと放課後は生徒会室に籠もる代わりに、朝は教室で過ごすと決めている。
クラスメイトと過ごしたいというよりは、教室内の様子も把握しておかないとならないという、至極現実的な理由からではあるのだけど。
――まぁ、でも、生徒会室に入り浸ってこれ以上クラスから浮くのも悪手だしなぁ。
中等部にいたころはそんなことは考えもしなかったが、今は状況が違うのだ。その元凶を皓太はちらりと眺めた。
あの日。選挙が終わったあと、宣戦布告のようなことを言ったわりに、気味が悪いほど水城の様子は変わらなかった。
以前ほどアルファとは密に行動をともにせず、けれど、そうかと言って孤立しているわけでもない。
今も水城は自分の席に座ったまま、喋りかけにきたクラスメイトとにこにこと会話を交わしている。
「最近、高良くんと仲良しだよねー、ハルちゃん」
「……荻原」
気配なく近づいてくるところ、茅野さんに似てきたなと思ったものの、皓太はその指摘を呑み込んだ。寮生委員である以上しかたがないような気がしたし、自分も似たようなことを思われている気がしたからだ。
遅れて「おはよう」と言いながら、隣の椅子を引いた荻原が「でも、まぁ、よかったね」と人の良い調子で笑う。
「高良くん、高等部からの特進組だからさ、仲良い子ができるのはいいことだよね」
「……まぁ」
相手が相手だけどな、とも内心でのみ突っ込む。べつに、一から十まで目立って対立したいわけでもないつもりだ。
「普通科にいたころはよっちゃんたちとよく一緒だったけど」
最近は寮でも一緒にいるところ見ないなぁ、とぽつりと荻原が言う。
「そうだっけ?」
「そうだよ。中等部のころは時雨くんと岡と四人だったじゃん」
「ああ」
そう言われるとそうだったかもしれない。頷いた皓太に、荻原がなんとも言えない笑みを浮かべた。
「高藤も、本当に榛名ちゃんのこと大きな口で言えないくらいには人間関係興味ないよね」
「そんなこと……」
「榛名ちゃんと違って名前覚えてるし、ある程度把握してるからセーフとか言わないでね。関わる気があるかどうかの問題」
「……」
それは、まぁ、積極的に関わる気はなかったかもしれないが、最低限、自分と周囲が困らない程度には関わっているつもりである。
口にしたところで、「だから、その考え方が」と言われる気がしたからだ。返す言葉はない。
「喧嘩したとかじゃなくて、純粋に特進に上がったことで勉強が大変で、遊ぶどころじゃないって感じらしいけど」
「ああ」
そういうことか、と頷く。普通科とは使用している副教材も異なっているし、授業の進行度合いも違う。途中でクラスが変わったことによる苦労はあるのだろう。
いつだったか榛名も、自分の参考書を見た際に「絶対無理」とやたら嫌そうな顔をしていた。やってできないことはないと思うのだが。それこそ自分が口を出すことでもない。
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