パーフェクトワールド

木原あざみ

文字の大きさ
上 下
444 / 484
第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 3 ①

しおりを挟む
[3]


 昼休みと放課後は生徒会室に籠もる代わりに、朝は教室で過ごすと決めている。
 クラスメイトと過ごしたいというよりは、教室内の様子も把握しておかないとならないという、至極現実的な理由からではあるのだけど。

 ――まぁ、でも、生徒会室に入り浸ってこれ以上クラスから浮くのも悪手だしなぁ。

 中等部にいたころはそんなことは考えもしなかったが、今は状況が違うのだ。その元凶を皓太はちらりと眺めた。
 あの日。選挙が終わったあと、宣戦布告のようなことを言ったわりに、気味が悪いほど水城の様子は変わらなかった。
 以前ほどアルファとは密に行動をともにせず、けれど、そうかと言って孤立しているわけでもない。
 今も水城は自分の席に座ったまま、喋りかけにきたクラスメイトとにこにこと会話を交わしている。

「最近、高良くんと仲良しだよねー、ハルちゃん」
「……荻原」

 気配なく近づいてくるところ、茅野さんに似てきたなと思ったものの、皓太はその指摘を呑み込んだ。寮生委員である以上しかたがないような気がしたし、自分も似たようなことを思われている気がしたからだ。
 遅れて「おはよう」と言いながら、隣の椅子を引いた荻原が「でも、まぁ、よかったね」と人の良い調子で笑う。

「高良くん、高等部からの特進組だからさ、仲良い子ができるのはいいことだよね」
「……まぁ」

 相手が相手だけどな、とも内心でのみ突っ込む。べつに、一から十まで目立って対立したいわけでもないつもりだ。

「普通科にいたころはよっちゃんたちとよく一緒だったけど」

 最近は寮でも一緒にいるところ見ないなぁ、とぽつりと荻原が言う。

「そうだっけ?」
「そうだよ。中等部のころは時雨くんと岡と四人だったじゃん」
「ああ」

 そう言われるとそうだったかもしれない。頷いた皓太に、荻原がなんとも言えない笑みを浮かべた。

「高藤も、本当に榛名ちゃんのこと大きな口で言えないくらいには人間関係興味ないよね」
「そんなこと……」
「榛名ちゃんと違って名前覚えてるし、ある程度把握してるからセーフとか言わないでね。関わる気があるかどうかの問題」
「……」

 それは、まぁ、積極的に関わる気はなかったかもしれないが、最低限、自分と周囲が困らない程度には関わっているつもりである。
 口にしたところで、「だから、その考え方が」と言われる気がしたからだ。返す言葉はない。

「喧嘩したとかじゃなくて、純粋に特進に上がったことで勉強が大変で、遊ぶどころじゃないって感じらしいけど」
「ああ」

 そういうことか、と頷く。普通科とは使用している副教材も異なっているし、授業の進行度合いも違う。途中でクラスが変わったことによる苦労はあるのだろう。
 いつだったか榛名も、自分の参考書を見た際に「絶対無理」とやたら嫌そうな顔をしていた。やってできないことはないと思うのだが。それこそ自分が口を出すことでもない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

いとしの生徒会長さま 2

もりひろ
BL
生徒会長は代わっても、強引で無茶ブリざんまいなやり口は変わってねえ。 今度は女のカッコして劇しろなんて、ふざけんなっつーの!

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

たまにはゆっくり、歩きませんか?

隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。 よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。 世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……

a pair of fate

みか
BL
『運命の番』そんなのおとぎ話の中にしか存在しないと思っていた。 ・オメガバース ・893若頭×高校生 ・特殊設定有

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

処理中です...