パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 1 ④

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「もしかしてなんだけど、ここ最近のよっちゃんの元気のなさ、ハルちゃんが関係したりしてないかな」

 確証もなにもないうちから、疑ったりなんてしたくないんだけどね、と困り顔のまま付け足して、でも、と荻原は言った。

「本当にこんなことは言いたくないんだけど、ハルちゃんだからね」

 ――わかってもらえないのは寂しいから。僕、わかってもらうために、一生懸命がんばるね。

 にこりとほほえむ、奇妙なくらい無邪気な笑顔。億劫だという感情を押し隠して、うん、と三度皓太は頷いた。



 高藤は面倒くさい子だって思ってるところがまだあるかもしれないし、まぁ、実際、なかなか面倒なところもあるなぁと思うこともあるけど。よっちゃんは、あれで、自分の筋の通らないことはあんまりしないんだよ。
 プライドが高いっていうのと紙一重な感じはあるんだけど。でも、そういうプライドのある子だからこそ、榛名ちゃんに当たり散らしたらしいことが、やっぱりちょっと意外だったんだよね、と。荻原は四谷のことを語った。

 ――四谷本人に聞いても素直に言ってくれない気がするから、もうちょっと水城のほうから探りを入れてみるつもりだって言ってくれたことも、まぁ、正直、めちゃくちゃありがたいんだけど。

 榛名と違って引きどころもわかっているだろうし、不必要に過剰なことをするタイプでもないし。そもそもとして、自分よりも交友関係の広い人間なので、「探りを入れてみる」という行動も得意分野なのだろうし。
 でもなぁ、と生徒会室の鍵を閉めながら、皓太は小さく息を吐いた。放課後に何時間か残っても夏のころは明るかったけれど、今は同じ時間でもすっかりと暗くなっている。
 薄暗い廊下を歩きつつ、もう一度首をひねる。

 ――それはそうとして、荻原がそう感じてることを、学年が違って接する時間も少ないとは言え、あの人たちが気づいてないとは思えないんだよなぁ。

 そうだとすると、それを自分に伝えないのは、向こうで勝手に処理するつもりだったか、あるいは、もうそういったことの一線からは手を引いたという意思表示化のどちらかに違いない。
 後者であるのだとすれば、ある意味では信頼の上で放置されたということなのかもしれないが。

 ――でも、最近の茅野さんとか成瀬さんとか見てると、後者な気がするな。

 自分たちがなにも気づかなければ、さすがに一声くらいはかけてくれたと信じたいけれど、生徒会選挙が終わってからというもの、とくに成瀬は、自分はもう第一線は引いたのだという雰囲気をにじませることが多かったかもしれないな、とも思う。 
 まぁ、いいんだけど。そう思うことで、皓太は自分を納得させた。生徒会を引退したということは事実で、受験が控えていることも事実だ。そちらに専念するというのなら、それはそれでいいことなのだろうし。

 ――茅野さんは、年内いっぱいは寮長なわけだし、さすがにそこまであからさまに退かないとは思うんだけど。

 そう。そうは思うのだが、同時に、ちょっとよくわからないな、とも思う。いや、もちろん、信用はしているのだが、幼馴染みに比べると解像度が低いというか、たまに、実はとんでもなく過激なのではないだろうかと疑う瞬間があるというか。
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